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金麦と知る食文化 
料理道具を楽しむ

金麦と知る食文化 
料理道具を楽しむ

私たちは日常的に多様な食文化に触れています。
同時に料理道具も様々なアイテムが揃います。
食べることをもっと豊かにする
料理道具の楽しみ方を教えてもらいました。

2016年09月02日

荒井 康成

荒井 康成YASUNARI ARAI

料理道具コンサルタント。輸入雑貨店や仏陶器メーカーの日本代理店事業部などでキャリアを積み、2009年、日本初の料理道具コンサルタントとして、料理学校などの講師や執筆活動、料理道具メーカーのコンサルティングやスタイリングなどで活躍中。著書に『ずっと使いたい世界の料理道具』(産業編集センター)。
http://www.araitools.com

世界中の道具が揃う
日本だからこそ

80~90年代の「輸入雑貨」ブームのころに登場した海外の料理道具は
そのスタイリッシュなデザインはもちろん、独特の存在感が
おしゃれなライフスタイルを叶えるためのアイテムでした。

今では外国の食文化も当たり前のように
日本の暮らしの中に入ってきて、それとともに料理道具も多様に。
私たちの台所でも様々な料理道具が活躍し始めました。
海外のもの、便利なアイデアグッズ、そして日本の昔ながらの道具。

そんな多様化する料理道具のプロフェッショナルとして、
雑誌などでの執筆や売場のコンサルティング、
食の学校での講師活動を行っているのが、荒井康成さん。
「日本は世界一料理道具が揃う国といっても過言ではありません。
常に新しい商品が開発され、登場しつづけながら、
近年は長く使い続けられる道具も見直されています」(荒井さん)
今回は、荒井さんに調理道具の楽しみ方を教えてもらいます。

「世界中の道具が揃う日本だからこそ」のイメージ

料理道具から食文化を知る

料理道具にはいろいろな形があります。
それは単純に見映えのためだけのデザインではありません。
道具であるがゆえにそれぞれに理由を持ったデザインなのです。

「たとえば、鍋。鍋は世界中どこの国にも必ずある料理道具ですが、
みんな違って特徴的な形を持っています」(荒井さん)
たとえば、「ストウブ」や「ルクルーゼ」の代表的なカタチは楕円形です。
「フランス食文化を代表する食材のひとつは鶏。
サッカーフランス代表のユニフォームにも鶏がプリントされていますね。
フランスの家庭料理といえば、丸鶏をコトコト鍋で煮込んだもの。
フランスのメーカーの鍋の形が楕円形なのは、
鶏をまるごと鍋に入れて料理するため、なんです。
一方、日本の土鍋は底が丸いですが、これはお米を炊くときに、
米粒が躍るように底が丸くなっているわけです。

また、包丁とまな板が基本ツールの日本や中国は、
小さく切って短時間で火を通す食文化。
一方でまるごと焼いたり煮込んだりするヨーロッパの食文化では、
包丁やまな板が日本や中国ほど発達していません」(荒井さん)

なるほど、料理道具がどんな形をしているか、
どんな料理道具が発達しているかを観察することで、
食文化をたどることができます。
料理道具は食文化そのものなのです。

「料理道具から食文化を知る」のイメージ

自分の食生活から
必要な料理道具を見極める

食文化と料理道具の深い関係が分かって来ると、
どれも理にかなっていて、どれもこれも欲しくなってしまいます。
じゃあ何を買えばいいの?自分に必要なものはどうやって見つけたら良い?
という問いに荒井さんは「普段食べているものを見直すといいですよ」とのこと。

「食生活手帳を付けてみてくださいとよくアドバイスするんですが、
自分が何を食べているのか、好きな食事は何かを見直すことで、
どんな食文化になじみがあるか、興味があるかが見えてきます」(荒井さん)
たとえば「やっぱり炊きたてごはんが一番好き!」ならば炊飯まわりの道具、
あるいは「家でもおいしくステーキやハンバーグを焼きたい」ならば鉄のフライパン、
「強火で炒め物」の方が多ければ使い勝手の良い中華鍋を探してみたり。

「そうすれば、流行にとらわれることなく、また使い捨てにすることなく、
自分が長く愛用できる道具が何かが見えてきます」(荒井さん)
道具ありきではなく、食卓ありきで料理道具を見つけること。
それが「自分にいい道具との出会い方」なのです。

「自分の食生活から必要な料理道具を見極める」のイメージ

和の道具を見直す

そして、荒井さんがおすすめするのが、日本の道具。
「今、日本の昔ながらの和の道具が見直されています。
モノよりコトを大切にする風潮が高まってきた昨今、
食文化に関しても、丁寧に、手間をかけてつくることが大切に見直され、
日本の道具が注目されてきたのです。

たとえば今では冷やごはんをレンジで温めて食べるのが当たり前ですが、
おひつのごはんは時間が経ってもおいしいんですよ。
木が、余分な水分を吸いながらも乾燥させないからです。
すり鉢は、ごまなどを摺って和え衣を作り野菜を和えたりするのに使いますが、
味噌をすり鉢で摺ってから使うのもおすすめ。
空気と合わさって旨味や風味がぐっと増すんです」(荒井さん)
日本は、木・鉄・陶磁器・竹など、材料に恵まれていたこともあり、
道具の種類も豊かです。

「食生活手帳をつけて自分の食の好みを知ると同時に、
自分の食のルーツについて考えてみてください。
実家ではどんな料理を食べていたか、どんな道具が台所にあったか。
すり鉢やカツオ節削り器など、おばあちゃんの家や実家にあって、
使っているのを見たことある道具がきっとあるはずです」(荒井さん)
昔ながらの和の道具を大切にすると言うことは、日本人として、
日本の食文化を大切にするということでもあるのです。

「和の道具を見直す」のイメージ

料理道具は使い続けてこそ

さて、料理道具への興味はふくらんできましたか?
どんな料理を食べたいか、どんな料理でもてなしたいかをじっくり考え、
必要な道具を手に入れましょう。

本物の料理道具は決して安いものではありません。
けれど、正しく使っていれば、一生使い続けることができます。
壊れたら、直してもらうこともできます。

「最近は、ラクできる道具や電子レンジのための道具から、
丁寧に暮らすための道具へと、消費者の関心が変わってきています。
ぜひみなさんにも、そういった食文化を表す料理道具を取り入れて、
食卓の可能性を広げてもらえればと思います。
また、『食』という文字は『人を良くする」と書きますが、
その人を良くするためのかけがえのない料理を
つくり出す道具に是非出会ってほしいと思います」(荒井さん)

※この記事は2016年9月に掲載されたものを編集して再掲しております。プロフィールは初掲載当時のものです。