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代表的な第二アロマ

2026年06月

(写真)樽発酵中の白ワイン

今月のテーマは第二アロマ。今年の年初の連載でも少し触れましたが、発酵などの醸造過程で発生する香りの事です。第二アロマは一般的に使用される醸造技術や醸造容器由来で発生する香りと、特定の産地(もしくはそのワインにインスパイアされて他の産地で生産される同じスタイルのワイン)で伝統的に採用されて来た特殊な製法に由来する香りに分けて考えると理解しやすいと思います。

今回は一般的に使用される醸造技術&容器由来で発生する第二アロマについて解説し、特殊な製法とそれに付随するアロマについては次回で詳しく説明します。

目次
  1. 醸造技術や醸造容器由来の第二アロマ
  2. 乳酸菌由来の香り
  3. 代表的な特殊な醸造技術

醸造技術や醸造容器由来の第二アロマ

上)バトナージュの様子
一般的に多くのワインで採用される醸造技術や醸造容器由来の第二アロマとしては、以下のものが挙げられます。
①酵母由来の香り
②樽由来の香り
③乳酸菌(MLF)由来の香り
④発酵温度由来の香り
多くのワインに使われる技術とは言っても、これらの要素が全てのワインにあるわけではありません。例えばMLF(後で解説)の香りは、ほぼ全ての赤ワインで経る醸造工程ですが、白ワインやロゼワインでは行わない事も多いです。
<酵母由来の香り>
ぶどうが果汁からワインになる時、必ず酵母がアルコール発酵を行っています。その点では全てのワインに酵母の影響が出ます。第一アロマのところでも述べましたが、培養酵母の中にはある特定のアロマ(例えば柑橘系の爽やかな香りやフローラル系の華やかな香りなど)を強く引き出すタイプのものもありますが、ここで言う酵母由来の香りとは、発酵の仕事を終えた後に澱となってワインの底に沈殿した酵母がもたらす香りの事を指しています。
ワインのアルコール発酵を行う酵母と、パンを発酵させる酵母は基本的には同じサッカロミセス・セレビシエの系統で、発酵から貯蔵の間に酵母が持つパンを連想させる風味がワインにうつります。具体的には焼く前のパン生地、食パン、トースト、ブリオッシュ、クロワッサンなどの香りで、ものによっては少し日本酒を連想させるような香りが出る場合もあります。一部のロゼワインでも見られる香りですが、一般的には白ワインで注目したい要素です。酵母の風味をワインにうつすために、沈殿した澱を棒でかき混ぜて、ワイン全体に浸透させるバトナージュと言う技法が用いられる事もあります。
<樽由来の香り>
一部のワイン(特にリッチな味わいの白ワインに多いが、ロゼや赤でも採用される事はある)では、発酵容器として樽を使用します。容量が1,000Lを超えるような大樽は、元々ワインの表面積における樽接触比率が低い上に、長い年月の間繰り返し使用する事が前提ですし、500L前後の中樽もやはり樽の影響は少なくなるので、225L前後の小樽(バリックやピエス)で発酵されたワインがこのタイプの第二アロマの主力となります。具体的な香りとしては、バニラ、クローブやナツメグなどの甘香ばしいスパイス類、ココナッツ(アメリカンオーク由来)、バタースカッチ、燻製、チョコレート、コーヒー、樹脂などの香りとなります。樽発酵のワインは多くの場合そのまま樽で熟成される事になるのと、澱と一緒に置かれる事も多いので、先に述べた酵母由来の香りや、次回以降にお話しする熟成由来の香り(第三アロマ)と一体になった風味を持つ事になります。

乳酸菌由来の香り

上)乳酸菌
ワインの醸造過程の一つにマロ・ラクティック・ファーメンテーション(Malo-Lactic Fermentation=通称M.L.F.もしくはマロ)と呼ばれるものがあります。ざっくりと説明すると、ワインが持つ色々な有機酸(酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、酢酸、乳酸、コハク酸、グルコン酸、ガラクチュロン酸などなど)の中で、比較的不安定な存在であるリンゴ酸が乳酸菌の力によって乳酸と炭酸ガスに分解される動きの事を指します。この過程の中でリンゴ酸の一部が炭酸ガスとなってワインから抜ける事で酸の絶対数が下がり(リンゴ酸の時の量の約2/3の乳酸になる)、フレッシュでキレのある酸味であるリンゴ酸がまろやかな乳酸に変化する事で味わいに丸みが与えられ、微生物学的にも安定感が増します。さらに副産物として乳酸菌が産出する「ダイアセチル(ジアセチル)」という成分が持つ特有の香りがワインに与えられます。一般的なダイアセチルの特徴香とされるのは、バターやチーズ、ヨーグルト、生クリームと言った乳製品を連想させる香りです。この成分が酸化熟成される事で生まれる杏仁豆腐やマジパン、生のアーモンドの様な香りもMLF由来の香りの一つとして良いと思います。
<発酵温度由来の香り>
発酵の速度を制御するために、発酵中の液温をコントロールするのは近代的な醸造では基本的な事です。一般的には発酵温度が高ければしっかりとした骨格のワインが出来る代わりにフルーティーな果実やフローラルな花の香りは少なめになり、逆に低温で発酵させればボディは軽やかだけど繊細で華やか、フレッシュな香りを持ったワインになります。理由としては低温で発酵させるとフルーティで甘い香りを持ったエステルが生成&維持されやすくなるからです。代表的なエステルとしてバナナやメロン、洋梨のキャンディに例えられる香りを持つ「酢酸イソアミル」が挙げられます。これは清酒の大吟醸や吟醸クラスにも共通する香りで、吟醸香と呼ばれる事もあります(酢酸イソアミルは吟醸香の一つで全てではありませんが)。

代表的な特殊な醸造技術

次回は、以下に挙げた特殊な醸造技術と第二アロマの関係についてお話ししたいと思います。
<代表的な特殊な醸造技術>
●全房発酵
●カーボニック・マセレーションとセミ・カーボニック・マセレーション
●スキン・コンタクト
●シュール・リー
●フロール(産膜酵母)
●自然酵母

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