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赤ワインの第一アロマと代表的なぶどう品種の関係

2026年05月

(写真)赤ワインの第一アロマとして感じとれる様々な色合いの果実たち

前回は白ワインの第一アロマについてお話しましたので、今回は赤ワインの第一アロマについてです。白ワインと赤ワインに共通に現れる第一アロマというのも無くはないですが、基本的には赤ワインには赤ワインならではのアロマがあると思って頂いて良いと思います。赤ワインの原料となっている黒ぶどうの色をつくっているのはアントシアニンと言う色素成分ですが、この成分は環境によって赤色、青色、紫色、黒紫色と色調を変化させる特性があります。語源としてはアント(=花の)シアン(=青)なので、元々青系の色を顕す言葉である事がわかります。アントシアニンはpHによって色を変える特性があり、pHが低い(酸が高い)環境であれば赤の要素が強くなります。ワインは基本的にpHが低い飲み物ですので、青ワインではなく赤ワインの色になっているという事になります。アントシアニンはぶどうの果皮に含まれていますが、醸造時にぶどうの果皮を果汁に漬けて発酵(浸漬=マセレーション)するのが赤ワインのポイントですから、赤ワインでは白ワインではほぼ感じる事のない、赤、青、紫、黒紫といった色合いをした要素の香りが出て来る事になります。

目次
  1. 果実の香り
  2. 花、草木、ハーブ、野菜などの香り
  3. 特徴的な香りを持つ代表的なぶどう品種

果実の香り

上)赤ワインに顕れる第一アロマの例(ピノ・ノワールの場合)
<果実の香り>
まず探しに行くのは白ワイン同様に果実の香りです。赤ワインに顕れる果実の香りを大別すると、大きく「ベリー系」「核果実系」「その他」に分けると良いでしょう。白ワインよりもグループ数は少なくなります。白ワインと同じ様に、複数のグループの香りを併せ持つ事は一般的な事です。ぶどうが育ったエリアの気候が顕れる果実のタイプに影響を及ぼしますが、赤ワインの場合はそれ以外にも、ぶどうが元々持っているアントシアニンの量も出て来る風味に大きな影響を及ぼします。アントシアニンの量が少なければ赤い果実の風味が強くなり、アントシアニンの量が多ければ紫や黒の果実の風味が強くなります。アントシアニンの量はぶどう品種によって大きく差が出ますので(下図参照)、色素の量が多いほど濃い色の果実のアロマが出やすいという事になります。例を挙げると、ピノ・ノワールからはラズベリーやさくらんぼと言った赤い果実の香りを感じる事が多いですし、カベルネ・ソーヴィニヨンには、カシスやブラックベリーなどの黒や黒紫色の果実感を強く持つものが多く見られます。色素の量は、ぶどうが生育するエリアの気候条件も影響する(例えば紫外線の多い標高の高いエリアのぶどうは果皮が分厚くなって色素が多くなる、寒暖差の大きいエリアの方が色素量が多くなるなど)ので、品種だけがアロマを決めるわけではありませんが、品種は大きな要素の一つです。 果実のタイプ以外に、果実の色も意識しておきたいところです。赤ワインの第一アロマに出て来る果実を整理してみると、大きく赤・紫・黒・茶色の4つの色のどれかに属する事が多いです。例えばベリーで言うと赤はいちごやラズベリー、赤すぐり(レッドカラント)など、紫はブルーベリーや桑の実、ハスカップ、黒はカシスやブラックベリーなど、茶はドライフルーツとなります。他に赤ワインで登場しやすい果実は、核果実ではチェリーやプラム、その他ではざくろやイチジク、西瓜などがあります。

花、草木、ハーブ、野菜などの香り

上)品種によって異なる色素の量
<花、草木、ハーブ、野菜などの香り>
果実の次に見て行きたい要素が、花、草木、ハーブ、野菜などの植物系の香りです。赤ワイン用のぶどうでも、ピノ・ノワールの様に大輪の花を連想させるフローラルな香りを部屋中に振りまく、アロマティック系と呼ばれる品種があります。もう一つ、ハーブや木(特に針葉樹)の香りを持った一群もありますので、忘れずにチェックしましょう。このタイプの香りは、同じぶどう品種でも熟度が上がるにつれて感じられにくくなる傾向があります。他に野菜の香りが特徴のワインもあります。芋系の根菜が感じられたり、ピーマンやトマトなどのナス科、きゅうりなどのウリ科の野菜が代表的です。特に一部の品種ではピーマン、パプリカ、唐辛子などの香りを特徴とするものもあります。

<スパイスの香り>
スパイスの香りは、赤ワインではかなり頻繁に感じ取れる特徴的な香りです。色で言うと、淡い色のスパイスと濃い色のスパイス、風味で言うとスイートスパイスと辛みのある(パンジェント)スパイスの4つの象限に分けて考えると理解しやすいと思います。代表例を挙げると、淡い色でスイート=シナモン、濃い色でパンジェント=黒胡椒みたいな感じとなります。一部のぶどう品種からつくられるワインにはスパイスの香りを大きな特徴とするものもあります。

特徴的な香りを持つ代表的なぶどう品種

上)左からカベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワール、シラー、マスカット・ベーリーA
<特徴的な香りを持つ代表的なぶどう品種>
●カベルネの一族
カベルネ・フランとその子供たち(カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、カルメネール)には果実の香りに加えて、共通の青い植物を連想させる風味があります。ピーマンと言われたり、針葉樹の葉っぱと言われる青臭く茎っぽい香りです。その強さは品種によっても異なり(メルロはあまり強くなく、カベルネ・ソーヴィニヨンやカルメネールは強め、白ぶどうのソーヴィニヨン・ブランにも多く含まれる)ますし、ぶどうの産地やヴィンテージによっても異なりますが、これはこの一群のぶどう品種が持つ2-イソブチル-3-メトキシピラジン(IBMP)という成分によるものです。IBMPはぶどうが太陽に良くあたり、熟度が上がる事で減少する事がわかっているので、栽培技術の向上で近年のワインではあまり目立たなくなってきています。
●ピノ・ノワール
とても香り高い品種で、赤ワインでアロマティックと言う時に真っ先に名前が上がるのがピノ・ノワールでしょう。この品種が放つバラやスミレを連想させるフローラルな香りは、ワインによっては部屋いっぱいに広がるように感じられるくらいです。生産する場所によって大きく風味が変わる繊細なぶどうなので、果実もチャーミングないちごからしっかり黒いダークチェリーまで多彩に出ますし、シナモンを連想させる甘いスパイシーさもあります。刻々と表情を変えるとても複雑な香りのワインを生みます。
●シラー(シラーズ)
濃厚な黒い果実の香りと、胡椒に例えられるスパイスを連想させる香り(時々動物や燻製のような香りも)が印象的な、特徴のあるアロマを持つぶどう品種です。この胡椒に例えられる香りはロタンドンと言う芳香物質由来ですが、暑いエリアで育ったぶどうにはこの物質の量が減る傾向があります。暑いエリアでは果実の熟度も増して濃厚になる事が多いため、果実の香りに包まれて、胡椒の香りが殆ど感じられないシラー(シラーズ)も存在します。
●マスカット・ベーリーA
この品種の特徴は、綿菓子を連想させる甘い砂糖が溶けた香りと、熟したいちごの様な赤い果実です。とても特徴的な香りで、一度香りを嗅ぐとすぐに記憶する事が出来ます。他にも和のハーブや、さつまいもを連想させる土のトーンなども持つ品種ですが、やはりマスカット・ベーリーAと言えば、苺キャンディーの様な甘い香りでしょう。この香りのキーとなっているのはフラネオールという成分です。

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