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白ワインの第一アロマと代表的なぶどう品種の関係

2026年04月

(写真)白ワインの第一アロマとして感じられる、色々な果物たち

さて、今月と来月の2ヶ月で、第一アロマをもう少し掘り下げていきたいと思います。第一アロマは原料のぶどう由来の香りですから、先月お話した通り植物に関する香りを中心に感じていきます。中でも最優先はまず「果実」そして「花、ハーブ、野菜、スパイスなど」となります。ワインの原料となるぶどう品種には、果皮の色が緑~金色をした白ぶどうと、濃い赤~濃紺色をした黒ぶどう、その中間と言えるピンク~暗い紫色をしたグリぶどうの3つのタイプがあります。違いはアントシアニンと言う色素の有無ですが(ぶどうの色素遺伝子には2つのスイッチがあって、それが2つとも押されないと白ぶどう、1つ押されるとグリぶどう、両方押されると黒ぶどうになるらしいです)、この色素がワインの風味に与える影響が大きいので、白ぶどうから出来るワインと、黒ぶどうから出来るワインの風味は大きく異なる事になります(グリぶどうは通常は白ワインの原料になりますが、やはり白ぶどうから出来る白ワインとは異なる風味を持つようになります)。今回は、白ワインの第一アロマに出やすい香りを、そして次回は赤ワインの第一アロマに出やすい香りを見て行きたいと思います。(オレンジワインは今回、ロゼワインは次回で少し触れます)

目次
  1. 果実の香り
  2. 花、ハーブ、野菜、スパイスなどの香り
  3. 特徴的な香りを持つ代表的なぶどう品種

果実の香り

上)気候によって変化する第一アロマ
<果実の香り>
まず探しに行くのは果実の香りです。白ワインに顕れる果実の香りを大別すると、大きく「柑橘系」「りんご・洋梨系」「核果実系」「トロピカルフルーツ系」に分けると良いでしょう。一部、そこに入りきらない果実もありますが、殆どのワインが持つ果実の香りは上の4つのグループに含まれると思います。殆どのワインが、「柑橘だけ」みたいに一つだけの系統の香りを持つわけではなく、「柑橘とりんご」を併せ持ったり、3つの要素が混じっていたりします。その構成は元々のぶどう品種の特徴として存在している要素と、そのぶどうが育った土地の気候や地勢によって後天的にぶどうに与えられる要素から来ると考えられています。例を挙げると、シャルドネは柑橘、りんご、核果実、トロピカルフルーツの4つの要素を全て持っているぶどう品種です。ただし、上の図を見てもらうとわかる様に、その要素の出方はそのぶどうがどこで生まれたかによって変化します。涼しい場所(熟度が低めのぶどう)だと酸っぱい柑橘や青りんごの様な爽やかな果実の香りが出て、南国をイメージさせるトロピカルフルーツの要素は影を潜め、逆に温かい場所(熟度が高めのぶどう)だと、甘く濃厚なトロピカルフルーツの要素が強めに出て、酸っぱい柑橘が影を潜めます。つまり同じぶどう品種で比較した場合には、感じられる果物の香りを比較する事でそのワインの原料となったぶどうの熟度もイメージ出来るという事です。ただし、ぶどうの熟度は栽培技術や収穫時期によってもコントロールする事が可能ですので、一概にレモンやライムのアロマがある=涼しい場所で生産されたぶどうが原料と言う事は出来ないのですが、一つの参考情報にはなるという事です。また、前月でも述べましたが、香りから果実の種類だけでなく状態も連想する事も大切なポイントです。もぎたてのフレッシュな柑橘の香りはやはり冷涼な産地・ヴィンテージで出やすいですし、マンゴーチャツネの香りはしっかりと太陽を浴びる産地や温かなヴィンテージを想像させます。ドライフルーツを連想させる香りは、すぐに果汁を搾ってワインにする白ワインよりも、ぶどうの果皮をワインに漬け込んで時間を経るオレンジワインに出やすい傾向があります。

花、ハーブ、野菜、スパイスなどの香り

上)色々な花やハーブ
<花、草木、ハーブ、野菜などの香り>
果実の次に見て行きたい要素が、花、草木、ハーブ、野菜などの植物系の香りです。特に白ワイン用のぶどうには、大輪の花を連想させるフローラルな香りを部屋中に振りまく、アロマティック系と呼ばれる一群の品種たちがありますので、ここはしっかりと見ていきたいところです。もう一つ、ハーブや青草の香りを持った一群もありますので、忘れずにチェックしましょう。ハーブや青草などの香りは、同じぶどう品種でも熟度が上がるにつれて感じにくくなる傾向があります。

<スパイスの香り>
スパイスの香りは、白ぶどうよりも黒ぶどうの方が多く持つ傾向がありますが、グリューナー・ヴェルトリーナーの様に一部の白ぶどう品種には胡椒の香りを持つものがあります。また、黒ぶどうと白ぶどうの間に位置するグリぶどうは、白ワインと比較した時にスパイシーさを強く感じる事が多いです。スパイスの風味はぶどう品種由来だけでなく、樽熟成など醸造から与えられる部分もあるので、第一アロマとしては意識しすぎない様にした方が良いかも知れません。

特徴的な香りを持つ代表的なぶどう品種

上)左からソーヴィニヨン・ブラン、リースリング、ゲヴュルツトラミール、ピノ・グリ
<特徴的な香りを持つ代表的なぶどう品種>
●ソーヴィニヨン・ブラン
ハーブや青草の香りが特徴です。ただ、ハーブを連想させる香りの元となるアロマの成分はぶどうの熟度によって香りのタイプが変化する(熟度が高くなるとハーブは減る)ため、ハーブのフレーバーが必ず極端に目立つわけではありません。香り高いアロマティック系品種ですが、その中では珍しく花の香りは前に出て来ないタイプです。
●リースリング
エルダーフラワーやカモミールなどの小さな白い花を連想させるフローラルなアロマが特徴の、典型的なアロマティック品種です。この品種の特徴としてもう一つよく挙げられている香りが、「ぺトロール(石油の)」と呼ばれる灯油を連想させる香りです。リースリングが熟成する過程で顕れる香りとされていましたが、日照量が強い産地のぶどうが原料であったり、ワインの状態で高温化に出やすくなる事がわかっており、若い時期にはぺトロールがほぼ感じられないリースリングも沢山あります。
●ゲヴュルツトラミネール
最も力強い第一アロマを持つぶどう品種の一つと言えると思います。ピンクの果皮のグリぶどうで、特徴香として良く挙げられるのがライチです。しかし、この品種の果実の香りはぶどうの熟度が上がるにつれてライチ⇒白桃⇒黄桃と変化していくため、必ずライチを感じるわけではありません。もう一つがバラの香りで、これもぶどうの熟度によって白バラ⇒黄色いバラに向かって変化していきます。また品種名のゲヴュルツとはドイツ語で「スパイシーな」と言う意味で、ジンジャーや白胡椒などのスパイスの香りも感じ取る事が出来ます。
●ヴィオニエ
ゲヴュルツトラミネールと並ぶ華やかなフローラルさを誇るアロマティック品種です。大輪の百合や蘭の花や、空気をその香りで染め上げるようなジャスミンの花の力強い香りが印象的です。果実は、最良のものはもぎたてをそのまま口に入れる様なジューシーでフレッシュな魅力的な白桃のアロマを持ちます。また、コリアンダーシードや白胡椒などを連想させるスパイスの風味も印象的です。
●マスカット(ミュスカ、モスカート)
ワインでは珍しく、原料であるマスカットの華やかな香りがそのままワインに反映されるぶどうです。オレンジの花と、つくりによってははちみつや紅茶などの甘やかな香りも出て来ます。
●ピノ・グリ(ピノ・グリージョ、グラウブルグンダー)
品種名にもグリとついている通り、ピンクの果皮のグリ系ぶどうです。グリ系ぶどうの中でも色素が濃いタイプで、産地によっては黒ぶどうと見間違えるほど濃い果皮の色になる場合もあります。香りの量はアロマティック系ほど多くはなく、セミ・アロマティックと言われる事が多いです。花の香りはそれ程強くなく、色々なスパイスの香りや、スモーキーさを感じられる品種です。
●シャルドネ
最も有名なワイン用ぶどう品種ですが、シャルドネは独自の個性的な香りを持ちません。その替わりに白ワインの基本的な要素を大体押さえており、香り以外の要素(ボディ、酸、骨格など)は全てトップクラスのポテンシャルを持っています。独自の香りを持たない分、醸造による味わいの変化が大きく、色々なワインになる事が出来るのがこの品種の魅力です。

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