ワインって難しい・・・?
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香りからわかる事と、チェックする順番

2026年01月

(写真)テイスティングにとってとても大切な香りをとる作業

新しい年になりました。前回まではワインの外観をどの様に見ていくのかという点をお話して来ましたが、このシリーズでも今回から次のステップ、ワインの香りをどの様にとっていくのかという点に進んで行きたいと思います。

香りはワインというお酒のとても大切な要素です。ワインに含まれる香りの種類は、他の醸造酒に比較すると随分と多い事がわかっています(清酒:約100種、ビール:約500種、ワイン:約2,000種)。これは、日本酒やビールなどの穀物を原料とする醸造酒が原料を加熱して柔らかくしてからお酒にするのに対して、ワインはぶどうを搾り、そのまま酵母によってアルコール発酵させるという製法の違いが大きく関わっています。植物由来のアロマの多くは、加熱によって揮発してしまうため、「加熱しない」という製法がワインのアロマの豊かさにつながっています(ちなみに清酒とビールの違いはホップの影響が大きいです)。

優れたテイスターは、外観を見た上で香りを嗅ぐと、ほぼワインの味わいが想像出来てしまうと言います。間違える事は無いか?と聞くと、ほんのたまに違う事はあるが殆どの場合ブレる事は無いという答えでした。それくらいワインにとっての香りというのは重要な要素です。

とは言え、香りというのは不安定で常に変化し続けるもので、自分の記憶とのマッチングになりますので、日々意識していないとなかなか自信を持って「~の香りだ!」とは言い切れないところがありますよね。色々な方とお話をしていても、香りの判別に自信がある方というのはかなり少ない気がしています。そんな香りの要素を分解していければと思っています。

目次
  1. 香りの違いはどこから来るのか?
  2. 香りをチェックする順番

香りの違いはどこから来るのか?

上)収穫されたぶどう

2,000もあるというワインの香り成分ですが、実際にはそれらが組み合わさる事で、例えばレモンの香りだとか、白いバラの香りだとかを人間に連想させています。
ではそれらの元となる香り成分はどこから来ているのか。大きくは以下の3つに分類されます。
(1)原料のぶどうに由来する香り
(2)発酵などの醸造過程で発生する香り
(3)ワインが出来てから時間を経る事で発生する香り

一般的には、(1)を第一アロマ、(2)を第二アロマ、(3)を第三アロマもしくはブーケと呼んでいます。

もう少し詳しく分解すると、
(1)原料のぶどうに由来する香り…ぶどう品種が元々持っている特徴的な香り、気温・日照量・湿度・降水量などの気候条件や、栽培方法・収量などの違いによる、ぶどうの熟度や成分のバランスの違いによって変化する香り、特殊な土壌や地形などの条件がぶどうに与える影響によって出る香りなどがこれに当てはまります。実は収穫したぶどうの時点では、一部のアロマティックな品種を除いては殆どのぶどうは完成後のワインの香りは持っていません。ワインの香りは、ぶどうの中にある香りの前駆体が、酵母によって変化させられる事で初めて香りとして認識されるようになります。酵母によっては、ぶどうが持つある種の香りを強調する様に引き出すものもあります。

(2)発酵などの醸造過程で発生する香り…発酵温度の高低によって引き出されたり、失われたりする香りがあったりと、アルコール発酵の時点で香りは結構変わってきます。また、ある種の醸造技術(樽発酵・樽熟成、カーボニック・マセレーション、シュール・リー、全房発酵、スキン・コンタクト、マロラクティック発酵、アルコール発酵前の低温浸漬など)は、採用する事でその刻印をワインの香味に残していきます。つくり手の意思が香りにも顕れるという事ですね。

(3)ワインが出来てから時間を経る事で発生する香り…ワインは常に風味が変化し続けるお酒です。出来立ての新酒の様に鮮やかな果実味を主体としたものから、高級ボルドーやプレステージ・シャンパンの様に長い時間瓶内で熟成させて飲む事を前提としてつくられているものまで、色々な楽しみ方が出来るのもワインの魅力の一つだと思います。熟成によって出て来る香りには、ドライフルーツ、土、動物、スパイス、カラメル、きのこ、トースト、はちみつなどが挙げられます。
ワインになるぶどう品種は1,000種類を超えていますし、気候や土壌の異なるワイン産地は世界中にあるなど、ハードルは低いわけではないですが、これからの連載で少しずつ見ていければと思います。

香りをチェックする順番

上)色々な果物

第一から第三までのアロマ以外にも、香りでチェックしておくべきポイントがあります。以下の様な順番で確認していくと、抜けモレなく確実に香りをとる事が出来ると思います。
(1)香りの健全性
(2)香りのボリューム
(3)香りの複雑さ
(4)第一アロマ
(5)第二アロマ
(6)第三アロマ

(1)の香りの健全性とは、「変な香りがしないか?」というところです。もし、変な香りがするとしたら、原料のぶどう、醸造過程、熟成過程、流通過程、お客様の保管中のどこかで何か問題事が起こった可能性があります。ワインの欠陥臭については、別の回で詳しく説明したいと思っています。

(2)(3)どんな香りがあるか以外に、そのボリュームと、どれだけ多くの香り成分を含むかという香りの複雑さも見る必要があります。この詳しいところは次回見たいと思っています。
これも外観同様にこの順番で見る癖をつける事で、チェックを忘れることなく全ての要素を見る事が出来るようになっていきます。

もう一つ、グラスから上がってくる香りを取る時に気をつけたい事があります。それは、いつも同じやり方で香りを取るという事です。よくやりがちなパターンとしては、凄く華やかで香りの強いワインの時は軽く香りを嗅ぎ、香りが少ないワインの時には香りを求めて何度も力強く香りを嗅ぐというのがあります。このやり方では、強い香りを弱めに、弱い香りを強めにとる事になってしまい、本来の強さがきちんと把握出来ません。あくまで先入観なくフラットに、いつも同じ姿勢で臨むというのがテイスティングの大切なポイントの一つです。

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