- 実験編「豆知識」
香りで最初にチェックするポイント
2026年02月
(写真)複雑な香りのワインからは色々な要素が感じ取れる
ワインの香りと言うと、バラの花とかラズベリーとか黒こしょうとか芝生とか、濡れた犬とか何かの香りに例えていく事を連想します。もちろん、どのような物質を連想させる香りがするかでそのワインの特性を判断するというのは間違えていないのですが、まずその前に押さえておくべきポイントが幾つかあります。前回の最後に述べたチェックする順番1~6までの最初の3つがそれにあたります。つまり香りの「健全性」「ボリューム」「複雑さ」という事になります。それらについて、もう少し詳しく見ていきたいと思います。
香りの健全性とは?
健全性は前回でも述べた通り、全ての入口です。ここでやるべき事は、もしそのワインに欠陥があった場合にそれを発見するという作業です。欠陥臭の発生はワインを取り巻くサプライチェーンのあらゆる場所で起こり得ます。ぶどうの熟度や健全性、ワイナリーのサニテーションレベル、発酵につかわれた酵母の活動環境、セラー内での保管容器や保管環境、瓶詰めのやり方、酸化防止剤の使用量、輸送方法、販売場所での保管状況、販売後開栓されるまでの保管状況などなど、どのシーンでも適切でない状態に置かれると、欠陥臭は発生する可能性があります。
そう聞くとワインはもの凄くデリケートで取扱いが難しいお酒に見えますが、これはワインに限らずの事で、きちんとした取り扱いをしなけれ酸微生物に汚染されてしまったり、しなびてしまったり、酸化した風味になってしまったりというのは他のお酒でも、野菜や果物の様な食品でも同じ事です。
上のまとめシートにも記載してある通り、欠陥臭には程度の問題があり、絶対にゼロで無ければならないものもあれば、絶対にゼロにはどうやってもならないものもあります。沢山含まれると欠陥ですが、少しであればむしろワイン全体の複雑さに寄与して美味しくさせるような成分もあります。ワインは嗜好品なので、個人の嗜好によってそれぞれの欠陥臭の許容度がわりと大きく変わります。大切な事は、一般的に「欠陥臭」にはどのようなものがあって、それがどの様な原因で発生しているかを理解しておく事だと思います。理解した上で個人的にその原因が気にならないなら、それでOKという事だと思います。こちらの「欠陥臭」については、また別の機会(今年の秋頃)にまとめて詳しくご説明する予定です。
香りの「ボリューム」とは?
香りのボリュームとは、どれくらい力強くワインから香りが発せられているかです。同じ系統(ぶどう品種や産地)のワインを比較した時に、上質なワインの方が出て来る香りのボリュームが大きい事が殆どです。ワインによっては、グラスに注いでいる瞬間から大きく香りが広がり、部屋中に香りが充満していくようなものも存在します。オフィスで、ある素晴らしいワインを抜栓した時には、部屋の端で作業していたにも関わらず、オフィスのメンバーが何人もこちらを振り返ったというような事もあったりしました。つまり、香りのボリュームをチェックする事で、飲む前にそのワインの品質感をある程度把握出来るという事になります。
その際に2つほど注意点を挙げます。
(1)アロマティック品種
ぶどう品種の中には、その他のぶどう品種と比較した際に、明らかに香りのボリュームが大きいものがあります。これらの品種をアロマティック品種と呼んでおり、これらの品種100%もしくは、これらの品種がブレンドされたワインは同じ品質レベルで比較した場合、通常品種(ニュートラル品種と呼ばれる)よりも香りのボリュームが大きくなります。代表的なアロマティック品種としては、ゲヴュルツトラミネール、マスカットの一族(トロンテスも含む)、リースリング、ヴィオニエ、ソーヴィニヨン・ブランなどがあります。白ぶどうに多く見られる特徴ですが、黒ぶどうにもアロマティックなものが存在します。
(2)ワインが閉じた状態
ワインは常に香りや味わいが変動するお酒です。香りのボリュームについても変動する事がわかっています。これは一定方向にのみ進む(例えば最初小さくて徐々に大きくなっていく)変化ではなく、時によって行ったり来たりする変化です。同じヴィンテージの同じ銘柄のワインを継続して飲んで行くとその事が良くわかります。という事で確実に言えるのは、ワインが瓶詰めされた直後は、香りは一旦閉じるという事です。高級ワインで香りがあまり無い時は「閉じている」のかも知れません。この場合は、少し時間を置いてから飲む事で本来の香りを感じ取る事が出来る様になるので、試してみて下さい。
香りの「複雑さ」とは?
香りはボリュームだけでなく、その持っている要素の多さも大切です。例えば同じボリュームの果実の香りでも、強くいちごを連想させる香りが出るものと、いちごだけでなくラズベリーやざくろ、クランベリーなどの果実や、もっと異なる色素のブルーベリーやダークチェリーなどの果実を連想させる香りも入るワインの方が複雑な香りを持つと言えます。次回以降でお話して行きたいと思いますが、ワインからは果実、ドライフルーツ、花、ハーブや木などの植物、スパイス、ナッツ、イースト、乳製品、樹脂、焦げ臭、動物、化学物質などなど色々なものを連想させる香りが嗅ぎ取れます。これら多くの要素を色々と併せ持つのが複雑な香りを持つワインです。香りのボリュームが大きくても、シンプルに果実だけというワインよりも、複雑な香りを持つワインの方が上質なワインである事が多いです。