ワインって難しい・・・?
世の中で広く言われるワインの常識を、ワインのプロが実際に検証!
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  • 実験編「赤ワイン」

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デキャンタってどんな効果があるの??
~赤ワイン編~

2016年12月

レストランなどでワインをボトルから花瓶のような大きなガラスの器に移し替えているのを見たことはないでしょうか?
これは、『デキャンタ』と呼ばれるもので、ワインを大きな容器に移し替えることで香りが引き出されたり、少し空気に触れさせることで味わいがまろやかになったりすると言われています。

前回の白ワインの実験ではあまり変化しない結果でしたが、さて今回は赤ワイン。デキャンタというと赤をイメージする方も多いのでは?さて、結果やいかに!?

目次
  1. ▼ さっそくやってみた!!
  2. ▼ ざっくりと結果まとめ!!
  3. 【ワイン1】~フレッシュな果実味で軽めの赤ワイン~
    カルロ ロッシ レッド
  4. 【ワイン2】~チャーミングな香りで軽めの赤ワイン~
    ジョルジュ デュブッフ ボジョレー
  5. 【ワイン3】~華やかで複雑な香りの中くらいの重さの赤ワイン~
    ブシャール ペール エ フィス ブルゴーニュ ピノ・ノワール ”ラ ヴィニェ”
  6. 【ワイン4】~力強い味わいの重めの赤ワイン~
    ロス ヴァスコス グランド レゼルブ

▼ さっそくやってみた!!

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まずはワイン!次の4つのタイプで試してみました。
 
ワイン1.
フレッシュな果実味で軽めの赤ワイン:
カルロ ロッシ レッド
 
ワイン2.
チャーミングな香りで軽めの赤ワイン:
ジョルジュ デュブッフ ボジョレー
 
ワイン3.
華やかで複雑な香りの中くらいの重さの赤ワイン:
ブシャール ペール エ フィス ブルゴーニュ ピノ・ノワール ”ラ ヴィニェ”
 
ワイン4.
力強い味わいの重めの赤ワイン:
ロス ヴァスコス グランド レゼルブ
 
使用したデキャンタは、左上の画像のような縦長で細めのものと大きめの容量のもの(こちらはワイン4にのみ使用)を、グラスは小ぶりのティスティング用のグラスを使用しました。
検証の仕方は、4人のメンバーで次の条件のものを並べて試飲して、味わいの要素を最高5点で数値化して比較しました。
 
 A:普通に注いだもの
 B:縦長で細めのデキャンタに移し替えた後に注いだもの
 C:大きめのデキャンタに移し替えた後に注いだもの(ワイン4のみ)
 
さてさて、赤ワインはデキャンタでどう変わるんでしょうか??
 

▼ ざっくりと結果まとめ!!

いきなり今回の結論ですが、
★★どのタイプでもデキャンタした方がおいしい★★
ということに!
 
タイプによって変化の仕方は違いますが、今回試した赤ワインではとりあえずデキャンタしておいて悪いことはなさそうです。
 
  • 【ワイン1.カルロ ロッシ レッド】
    ★おいしくなる。ただ変化は少なめ★
    デキャンタをする前は、果実のような香りが主体で甘やかな印象だったのが、デキャンタすることで少し複雑さが増す。香り以外の要素はほとんど変化なし。
  • 【ワイン2.ジョルジュ デュブッフ ボジョレー】
    ★デキャンタで化ける。複雑さが増して洗練される★
    デキャンタをする前は、果実やキャンディのような甘やかな香りが主体だったのが、デキャンタすることで華やかな香りも感じられるように。味わいのバランスもよくなる。
  • 【ワイン3.ブシャール ペール エ フィス ブルゴーニュ ピノ・ノワール ”ラ ヴィニェ”】
    ★おいしくなる。でも変化は少ない★
    デキャンタをする前は、少し香りが閉じた印象だったのが、デキャンタすることで素直な果実や花のような香りが感じられるように。味わいはほとんど変化しない。
  • 【ワイン4.ロス ヴァスコス グランド レゼルブ】
    ★デキャンタでエレガンスに磨きが!★
    デキャンタする前は、樽と果実のような香りが全面に感じられて少し派手な印象だったのが、デキャンタすることで植物のような香りも感じられて、落ち着いて洗練された印象に。味わいもよりスムーズな飲み口でバランスが良くなったように感じる。
 
ワインごとの変化の仕方など、詳しくは「検証結果をくわしく!」で。
※一部製品における実験であり、テイスターの主観的な感想です。

【ワイン1】~フレッシュな果実味で軽めの赤ワイン~
カルロ ロッシ レッド

【ワインの特徴】 ブランドサイトはこちら 

ブラックチェリーのような黒い果実やスパイスの香りが特徴のワインです。豊かな果実味で酸味・渋味がまろやか、口当たりはやさしい味わいです。

 
【検証結果】

★おいしくなる!ただ変化は少なめ★

 

デキャンタをする前は、果実のような香りが主体で甘やかな印象だったのが、デキャンタすることで少し花やスパイスのような香りも感じられるように。複雑さが増した印象。

香り以外の要素はほとんど変化なし。

【ワイン2】~チャーミングな香りで軽めの赤ワイン~
ジョルジュ デュブッフ ボジョレー

【ワインの特徴】 ブランドサイトはこちら 

イチゴなどの赤い果実を思わせるチャーミングな香りが特徴のワインです。渋味は比較的穏やかで、ほどよい酸味とフレッシュな果実を楽しむ軽やかなタイプです。

 
【検証結果】

★デキャンタで化ける。複雑さが増して洗練される★

 

デキャンタをする前は、果実やキャンディのような甘やかな香りが主体だったのが、デキャンタすることで花やスパイス、土のような、複雑で華やかな香りが感じられるように。

味わいについては変化は少ないものの、渋味が穏やかに酸味が鮮やかに感じるようになって、バランスが良くなった印象。

【ワイン3】~華やかで複雑な香りの中くらいの重さの赤ワイン~
ブシャール ペール エ フィス ブルゴーニュ ピノ・ノワール ”ラ ヴィニェ”

【ワインの特徴】 ブランドサイトはこちら 

小さな赤い果実や赤い花のような香りが口いっぱいに広がり、軽やかな果実味をひかえめな樽香が心地よく引き立てます。スパイスやなめし革のような複雑な香りも感じられます。

 
【検証結果】

★おいしくなる。でも変化は少ない★

 

デキャンタをする前は、果実や花のような香りの中に少し閉じた印象だったのが、デキャンタすることで素直な果実や花のような香りが感じられるように。なめし革やスパイスのような複雑な香りも出てくる。味わいはほとんど変化しない。

【ワイン4】~力強い味わいの重めの赤ワイン~
ロス ヴァスコス グランド レゼルブ

【ワインの特徴】 ブランドサイトはこちら 

濃密で熟したカシスなどの果実を思わせる香りが特徴のワインです。南国の太陽を浴びた豊かな果実味と、骨太のタンニンの力強い味わいです。

 
【検証結果】

★デキャンタでエレガンスに磨きが!★

 

デキャンタする前は、樽と果実のような香りが主体で、カシスリキュールのような甘やかさも感じられる少し派手な印象だったのが、デキャンタすることで針葉樹やハーブ、土やスパイスのような香りが加わって、落ち着いて洗練された印象に。味わいもデキャンタすることで渋味が穏やかに飲み口がスムーズに感じられるように。

 

このワインだけ大きめのデキャンタでも試してみましたが、香りの強さは控えめになるものの、複雑さがさらに増す。味わいもさらに渋味が穏やかに感じられて、飲み口がかなりスムーズになった印象。

編集後記(やってみてわかったこと!!)

【結局のところは??】
★★タイプによらず、デキャンタの効果アリ!★★
 
今回の実験では、どのタイプでもデキャンタするとより良い結果になりました。タイプごとに多少違いますが、香りの複雑さが増して飲み口がスムーズになる傾向がありました。また、香りの要素と比較すると、味わいの要素は変化が少ないようでした。
 
これまで試したグラスをまわす等の方法よりもデキャンタは変化が穏やかで、マイナスな要素もほとんど出てこなかったので、ワインに優しい方法のようです。
 
【あまり変化しないものもあったようだけど?】
変化が少ないワインについては、デキャンタしたものをそのまま1時間ほどおいて、もう一度試飲してみました。すると、香りの複雑さがかなり増して、味わいも渋味が穏やかになって飲み口がスムーズになりました。かなりバランスが良くなったように感じました。デキャンタしてすぐだと、あまり効果的ではない場合もあるようです。
 
また、デキャンタしたワインをデキャンタの中で10回ほどまわして空気に触れさせる方法も試してみました。率直にこれは良くないです。香りの要素が少なくなってしまって、樽やアルコールの香りだけが残ってしまったような印象で、味わいも後味にエグミが残っておいしくなくなってしまいました。まわす回数が少ないとまた違う結果になるかもしれませんが、調整も難しそうなのでわざわざやらなくて良さそうです。
 
【この次。】
次回は、『産地で味わいはどのくらい変わるのか?』を『シャルドネ』という白ぶどうからつくられる白ワインで試してみたいと思います。
一言で『シャルドネ』と言っても、いろんな味わいのものがあって、なかなかどれを選んだものかわからないもの。自分好みのものを見つけるためにも、まず産地でどんな傾向があるのか実験してみたいと思います。乞うご期待!
 
 

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