ワインって難しい・・・?
世の中で広く言われるワインの常識を、ワインのプロが実際に検証!
毎月1つのテーマに絞って連載していきます。

  • 実験編「赤ワイン」

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ワイングラスをくるくるまわすとおいしくなるの??
~赤ワイン編~

2016年10月

ワイングラスをくるくるとまわしてからワインを飲んでいる人を見かけたことはないでしょうか。

これは、グラスをまわすことでワインの香りが引き出されたり、少し空気に触れさせることで味わいがまろやかになるという定説からなのですが、前回の白ワインの実験では、まわすとおいしくなるものもあれば、まったくまわさない方がよさそうなものもありました。

さて今回は赤ワイン。白より赤の方がグラスをまわすイメージがあるのでは?さて、結果やいかに!?

目次
  1. ▼ さっそくやってみた!!
  2. ▼ ざっくりと結果まとめ!!
  3. 【ワイン1】~フレッシュな果実味で軽めの赤ワイン~
    カルロ ロッシ レッド
  4. 【ワイン2】~チャーミングな香りで軽めの赤ワイン~
    ジョルジュ デュブッフ ボジョレー
  5. 【ワイン3】~華やかで複雑な香りの中くらいの重さの赤ワイン~
    ブシャール ペール エ フィス ブルゴーニュ ピノ・ノワール ”ラ ヴィニェ”
  6. 【ワイン4】~力強い味わいの重めの赤ワイン~
    ロス ヴァスコス グランド レゼルブ
  7. 【ワイン5】~濃縮した果実味の重めの赤ワイン~
    カーニヴォ

▼ さっそくやってみた!!

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まずはワイン!次の5つのタイプで試してみました。
 
ワイン1.
フレッシュな果実味で軽めの赤ワイン:
カルロ ロッシ レッド
 
ワイン2.
チャーミングな香りで軽めの赤ワイン:
ジョルジュ デュブッフ ボジョレー
 
ワイン3.
華やかで複雑な香りの中くらいの重さの赤ワイン:
ブシャール ペール エ フィス ブルゴーニュ ピノ・ノワール ”ラ ヴィニェ”
 
ワイン4.
力強い味わいの重めの赤ワイン:
ロス ヴァスコス グランド レゼルブ
 
ワイン5.
濃縮した果実味の重めの赤ワイン:
カーニヴォ
 
試してみる条件は次の5つ。ワインをそれぞれグラスに注いで、A~Eの回数グラスをまわしたものを比較試飲しました。
 
 A:まわさない
 B:10回
 C:20回
 D:30回
 E:50回
 
また、グラスは小ぶりのティスティング用のグラスを使用しました。
検証の仕方は、4人のメンバーで試飲して、味わいの要素を最高5点で数値化して比較しました。
 
さてさて、グラスをまわすとワインはおいしくなるんでしょうか??
 

▼ ざっくりと結果まとめ!!

いきなり今回の結論ですが、
★★どのタイプでも少しまわした方がおいしい★★
ということに!
 
タイプによって変化の仕方は違いますが、赤はどれもまわすことでおいしくなりました。軽めのタイプは10~20回程度、重めのワインでは20~30回程度まわすとよさそうです。
 
  • 【ワイン1.カルロ ロッシ レッド】
    ★10回~20回まわすのがよさそう★
    グラスを少しまわすと香りや果実味を感じやすくなる。20回をピークにまた果実味や香りを感じにくくなっていく。渋味や酸味はまわすごとにかなりまろやかに感じるように。
  • 【ワイン2.ジョルジュ デュブッフ ボジョレー】
    ★20回まわすのがよさそう★
    これもグラスを少しまわすと香りや果実味を感じやすくなる。20回をピークにまた果実味や香りを感じにくくなっていく。渋味や酸味はまわすごとに少しずつまろやかに感じるように。
  • 【ワイン3.ブシャール ペール エ フィス ブルゴーニュ ピノ・ノワール ”ラ ヴィニェ”】
    ★20~30回まわすのがよさそう★
    これは10回はあまり変化が大きくなかったけれど、20回は一気に果実味や香りが感じられるように。50回はやはりまわしすぎのよう。渋味や酸味の感じ方はまわしてもあまり変化しない感じ。
  • 【ワイン4.ロス ヴァスコス グランド レゼルブ】
    ★まわすごとに香りや果実味が華やかに。50回まわしてもおいしい★
    ワイン1~3と比べると、まわすことによる変化は緩やかな感じ。ただ、まわすごとにどんどん果実味や香りが出てきて、50回以上まわしてもさらによくなりそうな予感。渋味や酸味の感じ方はまわしてもほとんど変化しない感じ。
  • 【ワイン4.カーニヴォ】
    ★20~30回まわしたものがよさそう★
    グラスをまわすごとに香りや果実味を感じやすくなる。50回は酸味を一気に感じにくくなって飲み口が重く感じる。
 
 
ワインごとの変化の仕方など、詳しくは「検証結果をくわしく!」で。
※一部製品における実験であり、テイスターの主観的な感想です。
 

【ワイン1】~フレッシュな果実味で軽めの赤ワイン~
カルロ ロッシ レッド

【ワインの特徴】 ブランドサイトはこちら 

ブラックチェリーのような黒い果実やスパイスの香りが特徴のワインです。豊かな果実味で酸味・渋味がまろやか、口当たりはやさしい味わいです。

 
【検証結果】
★10回~20回まわすのがよさそう★
 
まわさないものでも果実味や香りが感じられるが、10~20回では果実味の豊かさやスパイスのような香りをしっかり感じられる。酸味や渋味はまろやかになっていき、口当たりがスムーズに感じる。
 
30回以上では、果実味や香りが感じにくくなり、酸味や渋味はさらにまろやかになる。一方でアルコール感は強く感じるようになって、味わいがぼやけた印象に。
 

【ワイン2】~チャーミングな香りで軽めの赤ワイン~
ジョルジュ デュブッフ ボジョレー

【ワインの特徴】 ブランドサイトはこちら 

イチゴなどの赤い果実を思わせるチャーミングな香りが特徴のワインです。渋味は比較的穏やかで、ほどよい酸味とフレッシュな果実を楽しむ軽やかなタイプです。

 

【検証結果】

★20回まわすのがよさそう★

 

まわさないものや10回は、酸味の爽やかさが印象的で、果実味や香りが控えめ。20回はベリー系を中心としたチャーミングな香りや果実味をしっかり感じられるようになる。30回は、酸味が少し穏やかになるが果実味はしっかりと楽しめる。

酸味や渋味はまわすごとに少しずつまろやかに。

 

50回は、果実味や香り、酸味を感じにくくなって、逆にアルコール感を強く感じて、飲み口が重い印象に。

【ワイン3】~華やかで複雑な香りの中くらいの重さの赤ワイン~
ブシャール ペール エ フィス ブルゴーニュ ピノ・ノワール ”ラ ヴィニェ”

【ワインの特徴】 ブランドサイトはこちら 

小さな赤い果実や赤い花のような香りが口いっぱいに広がり、軽やかな果実味をひかえめな樽香が心地よく引き立てます。スパイスやなめし革のような複雑な香りも感じられます。

 

【検証結果】

★20~30回まわすことで劇的に香り豊かに★

 

まわさないものは果実味や香りが控えめであまり感じられない状態。10回ではチャーミングな赤いベリー系の香りや果実味を感じられるように。

20~30回では、より果実味が豊かになって、リキュールやスパイス、赤い花などの複雑な香りをしっかり感じられるように。

50回は、果実味や香りが控えめになってしまって、逆にアルコール感や酸味、渋味を強く感じて飲み口が重い印象に。

 

このワインはまわしても酸味や渋味の感じ方があまり変化しない。

【ワイン4】~力強い味わいの重めの赤ワイン~
ロス ヴァスコス グランド レゼルブ

【ワインの特徴】 ブランドサイトはこちら 

濃密で熟したカシスなどの果実を思わせる香りが特徴のワインです。南国の太陽を浴びた豊かな果実味と、骨太のタンニンの力強い味わいです。

 

【検証結果】

★ガンガンまわしてもおいしく飲める!★

 

まわさない状態でも果実味や香りがかなり豊かな印象のため、他のワインと比べると変化が穏やか。ただ、まわすごとに着実により豊かな印象になっていく。もともと感じられる果実の香りやミントのような植物系の香り、樽の香りがまわすごとに調和していくような印象。30回からは、リキュールやスパイスのような香りも感じられるように。

さらに50回では、カシスのコンポートのような芳醇な果実の印象が出てくる。

 

もっとまわしてもさらに楽しめるようになるかも?と期待してしまう結果でした。

【ワイン5】~濃縮した果実味の重めの赤ワイン~
カーニヴォ

【ワインの特徴】 ブランドサイトはこちら 

トースト香やエスプレッソ、チョコレートのような香ばしい香りと、完熟したブドウを思わせる凝縮した果実味が特長の赤ワインです。酸味や渋味は穏やかでスムースな口あたりです。

 

【検証結果】

★20~30回くらいがおいしい★

 

このワインも変化は穏やかながら、まわすことで果実味や香りが豊かに感じられる結果に。もともとは黒系の果実主体のフルーティな印象だったのが、20~30回は、スパイスやチョコような複雑な香りも感じられるように。

 

50回では、果実味や香りはしっかり感じられるものの、酸味がかなり控えめな印象になって、逆に甘味とアルコール感を強く感じてしまって、かなり飲み口を重く感じるように。

編集後記(やってみてわかったこと!!)

【結局のところは??】
★★タイプによらず、とりあえずくるくるまわした方がおいしそう★★
★★軽めの赤ワインはまわしすぎ注意!★★
 
今回の実験では、どのタイプでも少しはまわした方がよい結果になりました。タイプごとに少し違う傾向が見られましたが、基本的に軽めのワインは少しだけまわしたものが、重めのワインはたくさんまわしたものがおいしく感じました。軽めのワインではまわしすぎると一気にワインの魅力を感じにくくなってしまいますのでご注意ください。
 
グラスをまわすことで同じワインでも短時間で違う顔が見られますので、興味のある方はくるくるまわしてみては?まわす回数は10回から多くても30回くらいまでが目安です。
 
【余談ですが、、】
実験でまわしたワインを残しておいて、実験後にもう一度ティスティングしてみました。すると、一番おいしかったのはまったくまわしていないワイン。その印象は、実験でまわして一番おいしいと思ったものに近かったです。自然と空気に触れて変化したようです。ゆっくりとワインを楽しむ時間があれば、がんばってグラスをまわさなくてもよさそうです。
 
【この次。】
前回と今回の実験で、グラスをまわすことでワインの香りが引き出されたり、空気に触れさせることで味わいが変化することがわかりました。
同じような目的で使われるデキャンタという道具があります。レストランなどでワインをボトルから花瓶のような大きなガラスの器に移し替えているのを見たことはないでしょうか?きっとおいしくなるんだろうと思ってみていましたが、実際のところはどうなんでしょう??
次回試してみたいと思います。お楽しみに!
 

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