ワインって難しい・・・?
世の中で広く言われるワインの常識を、ワインのプロが実際に検証!
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「肉には赤ワイン、魚には白ワイン」ってほんと?
~魚編~

2016年04月

よく、ワインと料理の相性が語られるときに「魚には白ワイン、肉には赤ワイン」と、もはや常識のように言われています。でも、魚といっても白身もあれば赤身もあるし、肉といっても鳥肉と牛肉ではずいぶん味わいも違います。実際のところワインとの相性はどうなんでしょう?読者の皆さまから検証してほしいとのご要望も多くいただいていますので、実際に試してみたいと思います!


今回は魚料理とワインの相性を検証します!
総勢8名のテイスターが、合わせてみておいしくなるかどうか、それぞれ主観で相性を評価しました。

さて、結果やいかに!?

目次
  1. ▼ さっそくやってみた!!
  2. ▼ ざっくりと結果まとめ!!
  3. 【料理A】刺身(白身):鯛
    刺身しょうゆとわさびで味付け
  4. 【料理B】刺身(赤身):マグロ
    刺身しょうゆとわさびで味付け
  5. 【料理C】焼魚:塩鮭
  6. 【料理D】煮魚:カレイ
    しょうゆベースの甘めの味付け

▼ さっそくやってみた!!

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まずはワイン!魚介との相性が良いと言われる白ワイン1種類と、タイプの異なる赤ワイン3種類で試してみました。
 
ワイン1.
キレのある酸味が特長の辛口白ワイン:
ウィリアム フェーブル シャブリ
 
ワイン2.
フレッシュな果実味で軽めの赤ワイン:
酸化防止剤無添加のおいしいワイン(赤)
 
ワイン3.
華やかな香りで軽めの赤ワイン:
ジョルジュ デュ ブッフ ボジョレー
 
ワイン4.
力強い味わいの赤ワイン:
ロス ヴァスコス グランドレゼルブ
 
そして、合わせる魚料理は次の4種類。近所のスーパーに売っているお惣菜を使いました。
 
 A:刺身(白身):食材は鯛で、刺身しょうゆとわさびを付けて試しました。
 B:刺身(赤身):食材はマグロで、刺身しょうゆとわさびを付けて試しました。
 C:焼魚:食材は塩鮭で試しました。
 D:煮魚:食材はカレイで、しょうゆベースの甘めの味付けの煮付けで試しました。
 
検証の仕方は、8人のメンバーで試飲・試食して、合わせることでおいしくなったかどうかを最高5点で数値化して比較しました。点数の基準は以下の通りです。
 
 1点:合わせる前には感じなかったネガティブな要素を感じるようになる。
 2点:合わせる前より、ワインもしくは料理の味わいがおいしくなくなったと感じる。
 3点:合わせる前と変わらない、予想通りの味わい。
 4点:合わせる前より、ワインもしくは料理の味わいがおいしくなったと感じる。
 5点:合わせる前には感じなかったポジティブな要素を感じるようになる。
 
さてさて、赤ワインと魚料理の相性やいかに??
 

▼ ざっくりと結果まとめ!!

さっそく実際に料理とワインを合わせてみた結果は、
 
★★刺身(白身)にはやっぱり、ワイン1の辛口の白ワイン!
★★刺身(赤身)には、ワイン2の軽めの赤ワインがぴったり!
★★焼魚には、ワイン4の力強い赤ワインが一番!ワイン1の白ワインも良い!
★★煮魚は、どのワインも厳しい結果に。
 
ということに!
 
 
魚には白ワイン!とは必ずしも言えない結果になりました。何事も実際に試さないとわかりませんね。
また、これまでの実験と比べると、ティスターごとのばらつきがかなり大きいのも印象的でした。嗜好は人それぞれということを改めて実感しました。
 
  • 【A.刺身(白身)】
    ★セオリー通り白のワイン1と相性ぴったり!★
    白のワイン1は、鯛の旨味とワインの旨味が相乗効果を生み出す感じ。
    一方赤ワインはどれも、ワインの印象の方が強くて、鯛の旨味を消してしまったり、ワインの酸味や渋味が浮いて感じてしまったりする感じ。
  • 【B.刺身(赤身)】
    ★赤のワイン3と相性が良い!★
    ワイン1は、マグロの味わいと風味が強まる印象で、好みがわかれるところ。ワインの苦味も少し強く感じる。ワイン2,4は悪くはないけれど、ワインの味わいが強くてマグロの味わいを消してしまう感じ。ワイン3は、マグロの旨味はしっかり感じながらも、マグロの血のニュアンスは穏やかにしてくれて、寄り添う印象。
  • 【C.焼魚】
    ★ワイン4と相性良い!ワイン1も良い★
    ワイン1は、鮭の旨味とワインの果実味や酸味がうまくマッチしている感じ。ただ、少し鮭の脂の香りを強く感じる印象も。ワイン2,3は悪くはないけれど、後味に若干鮭の生臭さを感じてしまう。ワイン4は、ワインの味わいがやや強めなものの、サーモンの味わいもしっかりわかる。脂を流してさっぱり食べられる感じも。
  • 【D.煮魚】
    ★どのワインともあまり相性がよくない結果に★
    カレイの特徴的な旨味や香りがポイントになる感じで、ワイン1と3は魚の生臭さを引き出してしまう印象。唯一ワイン4は、お互いの味わいの調和がそこそことれて、魚の臭みも感じにくいので悪くはない印象。
 
ワインごとの変化の仕方など、詳しくは「検証結果をくわしく!」で。
※一部製品における実験であり、テイスターの主観的な感想です。

【料理A】刺身(白身):鯛
刺身しょうゆとわさびで味付け

【検証結果】

★予想通り、白のワイン1と相性ぴったり!★

 

ワイン1.辛口白ワイン:ウィリアム フェーブル シャブリ

魚とワインがお互いの良さを引き出している印象。鯛の旨味やワインのミネラル感は合わせることでより感じられるように。

 

ワイン2.フレッシュな果実味の赤ワイン:酸化防止剤無添加のおいしいワイン(赤)

ワインのイキイキしたベリー系の果実の印象と、淡白な鯛の味わいがミスマッチな印象。

 

ワイン3.華やかな赤ワイン:ジョルジュ デュ ブッフ ボジョレー

鯛の繊細な味わいを消してしまったり、ワインの酸味や渋味が強調されたりして、お互いによくない影響を与える感じ。

 

ワイン4.力強い赤ワイン:ロス ヴァスコス グランドレゼルブ

ワインの味わいが圧倒的に強くて、鯛の味わいがまったく感じられない。。

【料理B】刺身(赤身):マグロ
刺身しょうゆとわさびで味付け

【検証結果】

★「魚には白ワイン」のセオリーに反して、赤のワイン3と相性が良い!★

 

ワイン1.辛口白ワイン:ウィリアム フェーブル シャブリ

マグロの味わいと風味が強まる印象で、好みがわかれるところ。ワインも飲み口が重くなって、苦味も少し強く感じるように。

 

ワイン2.フレッシュな果実味の赤ワイン:酸化防止剤無添加のおいしいワイン(赤)

白身よりは悪くない感じだけれど、やはりフレッシュなベリー系の果実の印象と生魚はミスマッチ感がある。

 

ワイン3.華やかな赤ワイン:ジョルジュ デュ ブッフ ボジョレー

マグロの旨味は感じさせながらも、マグロの血のニュアンスは穏やかにしてくれる印象。ワインと料理それぞれの香りや味わいが、強さが同じくらいで、お互いが持つ要素がしっかり活きている感じ。

 

ワイン4.力強い赤ワイン:ロス ヴァスコス グランドレゼルブ

ワインの味わいの方が強すぎて、これまたマグロの味わいを消してしまう感じ。。

【料理C】焼魚:塩鮭

【検証結果】

★ワイン4と相性良い!ワイン1も良い★

 

ワイン1.辛口白ワイン:ウィリアム フェーブル シャブリ

鮭の旨味と、ワインの柑橘系を思わせる果実味・酸味がうまくマッチしている感じ。ただ、鮭の脂の香りをやや強く感じさせる印象も。

 

ワイン2.フレッシュな果実味の赤ワイン:酸化防止剤無添加のおいしいワイン(赤)

ワイン3.華やかな赤ワイン:ジョルジュ デュ ブッフ ボジョレー

悪くはないけれど、後味に若干鮭の生臭さを感じてしまう。

 

ワイン4.力強い赤ワイン:ロス ヴァスコス グランドレゼルブ

ワインの味わいがやや強めなものの、サーモンの味わいはしっかり感じられる。脂を流してさっぱり食べられる印象も。

【料理D】煮魚:カレイ
しょうゆベースの甘めの味付け

【検証結果】

★全体的にあまり相性が良くない結果に。★

 

ワイン1.辛口白ワイン:ウィリアム フェーブル シャブリ

ワインも料理もネガティブな要素が出てきてしまう感じ。とくに魚の生臭さが際立ってしまう。また、料理の甘めの味付けとワインの酸味がかなりミスマッチ。

 

ワイン2.フレッシュな果実味の赤ワイン:酸化防止剤無添加のおいしいワイン(赤)

悪くはないけれど、後味に若干魚の生臭さを感じてしまう。

 

ワイン3.華やかな赤ワイン:ジョルジュ デュ ブッフ ボジョレー

ワイン1と同じような傾向で、ワインも料理もネガティブな要素が出てきてしまう感じ。魚の生臭さをより強く感じる。

 

ワイン4.力強い赤ワイン:ロス ヴァスコス グランドレゼルブ

唯一、料理の味わいとそこそこ調和がとれて、魚の臭みも消してくれるので悪くない印象。

編集後記(やってみてわかったこと!!)

【結局のところは??】
結論としては、
★★刺身(白身)にはやっぱり、ワイン1の辛口の白ワイン!
★★刺身(赤身)には、ワイン2の軽めの赤ワインがぴったり!
★★焼魚には、ワイン4の力強い赤ワインが一番!
★★煮魚には、ワイン4の力強い赤ワインが良さそう!
 
必ずしも「魚には白ワイン」とは言えない結果に。
 
淡白な白身の魚を刺身や焼きでシンプルに食べるには、セオリー通りに白ワインが良さそうだけれど、血のニュアンスがある赤身や、甘い味付けの煮付けは、わざわざ白ワインと一緒に食べない方がよさそうな結果でした。
 
一方で赤ワインでも、刺身(白身)以外は、タイプ次第で相性が良いと言えるものがありました。特に赤身とボジョレーの組み合わせは、今回試した全員がおいしくなったと言うほどでした。何事も実際に試さないとわかりませんね。
 
【人によってかなりばらつきがありそうだけど?】
これまでの実験と比べると、ティスターごとのばらつきがかなり大きいのも印象的でした。一番ばらついた刺身(赤身)とワイン1の白ワインでは、最高点は3.3点、最低点は1.7点で、まあまあ相性が良いと思った人がいる一方で、明確にネガティブな印象を感じた人もいました。
 

今回も味わいの要素(甘味や酸味など)の強さやその変化の感じ方自体は、人によってそれほど大きな差はなかったのですが、それをポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるかでばらつきました。

当たり前のことですが、おいしいと思うかどうかは、人それぞれの嗜好による部分が大きいことを改めて感じました。あまり先入観にとらわれずに、いろいろ試してみるのも良さそうです。
 
【この次。】
今回「魚には白ワイン」を検証しましたが、次回は「肉には赤ワイン」を検証してみたいと思います。お楽しみに!
 

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