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世界で一番売れているスパークリングワイン!

2020年12月

2013年にシャンパンを抜いて、出荷数量で世界一になった、今世界で一番売れているスパークリングワインがプロセッコです。
何と言ってもその魅力は、果物をそのまま口いっぱいに頬張るようなフレッシュな果実感。アルコール度数も低めで、気軽に飲める軽やかな味わいが特長です。
シャンパンと比較すると価格がお手頃なのも魅力です。
気軽に飲める通常のDOCプロセッコに加えて、よりスケールの大きな味わいを持った1ランク上のDOCGクラスのプロセッコも存在します。

目次
  1. 【プロセッコの産地】
  2. 【主要なぶどう品種】
  3. 【プロセッコの味わい】
  4. 【おすすめ料理】
  5. 【代表的な1本】

【プロセッコの産地】

イタリア北東部、ヴェネト州を中心に、フリウリ=ヴェネツィア・ジュ―リア州に跨る広い産地でプロセッコ(Prosecco)の生産が認められています。中でも、トレヴィーゾの町からコネリアーノ周辺の丘陵までの一帯は、プロセッコ発祥の地とされ、他のエリアのプロセッコとは一味違う上質なワインが生産されるため、DOCプロセッコの後にトレヴィーゾ(Treviso)というエリア名を付記する事が認められています。

さらに、丘陵部にはDOCよりも1ランク上のDOCGに位置づけられるエリアが2つあります。それが①コネリアーノ村とヴァルドッビアーデネ村の間にある、DOCGコネリアーノ ヴァルドッビアーデネ プロセッコ(Conegliano Valdobbiadene Prosecco)と②アゾーロ村の周囲に広がるDOCGアゾーロ プロセッコ(Asolo Prosecco)です。この2つの産地からは通常のDOCプロセッコと比較すると、一回りスケールが大きく、より豊かな果実味を持つワインが産まれます。

そして、全てのプロセッコの中で最高のワインを産むとされる畑が、DOCGコネリアーノ ヴァルドッビアーデネ プロセッコの中にある、わずか106haのカルティッツェ(Cartizze)。この畑のぶどうから生産されるプロセッコは、驚くほどにキメ細かいシルクのような泡立ちと、どこまでも軽やかで繊細かつ奥行のある果実味を持つ何とも魅力的なもので、特別にDOCGスペリオーレ ディ カルティッツェ ヴァルドッビアーデネ(Superiore di Cartizze Valdobbiadene)を名乗る事が許されています。

コネリアーノ ヴァルドッビアーデネ地域の丘に広がる美しいぶどう畑の景観は、"コネリアーノとヴァルドッビアーデネのプロセッコの丘陵地帯"として、2019年にユネスコの世界文化遺産として登録されています。

【主要なぶどう品種】

グレーラ(Glera)がプロセッコの主要品種です。上で述べた産地のワインは全てグレーラを85%以上使用する必要があります。その他の品種としては、ヴェルディーゾ、ビアンケッタ・トレヴィジャーナ、ペレーラ、グレーラ・ルンガなどが認可されています(DOCプロセッコではシャルドネやピノ系も認可)が、よっぽどの方でないとご存知ない、地元のマイナーなぶどう品種です。

主力のぶどうであるグレーラという品種自体が殆ど知られていませんが、これには理由があります。グレーラは2009年まで「プロセッコ」という名前で知られていました。当時はまだDOCプロセッコは存在しておらず、プロセッコというぶどう品種名を謳ったスパークリングワインとして販売されていました。ところが、世界的なプロセッコ人気を見て、歴史的産地以外でつくられるプロセッコ種からの安価なワインが市場に供給されるようになってしまったのです。これに対抗するべく2009年に生まれたのがDOCプロセッコで、これによってプロセッコという名前は限られた歴史的なエリアでしか名乗れなくなりました。そして、その過程で原料のぶどうをプロセッコの現地での別名であったグレーラに変更しました。ぶどう品種名はどの産地の生産者でも名乗る事が出来ますので、この場合は知られていない品種名であればあるほど都合が良かったわけです。あえて知らない名前にした。これがグレーラが知られていない理由です。

【プロセッコの味わい】

青りんごや白桃などを連想させる、イキイキとした軽やかな果実感がプロセッコの最大の魅力です。そこにこれまたフレッシュな白い花のニュアンスが加わって生まれる、飲み口の良さがこのワインの基本。ふんわりとしたムース状の軽やかな泡も魅力の一つです。ワイン法で求められる最低アルコール度数も10.5%と低めで、酸穏やかで軽やかで飲んでいても疲れません。瓶内二次発酵&長期瓶熟成によるコクと北の産地ならではの切り裂くような鋭い酸のシャンパンとは対極に位置すると言ってよい味わいで、これまでのスパークリングワインの頂点=シャンパンという図式に対して、全く異なる価値観を提示出来たのが、プロセッコがこれだけ世界で売れている理由な気がします。

その軽やかな味わいからアペリティフの定番で、イタリアでは「プロセッキアーモ!(プロセッコ飲もうぜ=一杯軽く引っかけようぜ)」とう造語の動詞が出来たくらい、気軽に愉しまれています。

近年は辛口ブームでBrut(残糖~12g/L)のタイプが増えていますが、伝統的には少し甘さのあるExtra Dry(残糖12~17g/L)やSecco(もしくはDry、残糖17~32g)で、軽やかな果実味が愉しまれて来ました。確かにこの少し甘さのあるタイプは、プロセッコの魅力であるフレッシュな果実味を最大限に引き出してくれる感じで、まさに果物をそのまま口の中に頬張っている気持ちになります。機会があればお試し下さい。

これまでスパークリングワインの事しか書いてきませんでしたが、DOCプロセッコにはわずかな量ですがスティルワインと微発泡のフリッツァンテもあります。珍しいので見つけたら試してみて下さい。これはこれでいいものだと僕は思っています。

また、タイムリーなニュースとしては今年、2020年の5月にこれまで白しか認められてこなかったDOCプロセッコにロゼが認可されました。ぶどう品種はグレーラを主体に、10~15%のピノ・ネロ(ピノ・ノワールのイタリアでの呼び名)をブレンド。味わいは一切の味わい調整をしない極辛口のBrut Natureか、ほんのりとした甘さが感じられるExtra Dryのどちらかで、その間のExtra BrutやBrutは認められないのが面白いところです。ロゼの登場は2021年1月から。話題性もあり、さらに広がると思われるプロセッコの世界。ますます目が離せないですね。

【おすすめ料理】

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▶ヒラメのカルパッチョ ラヴィゴットソース

 

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▶ヘッド トート(きのこと鯖のタイ風天ぷら)

 

先にも述べましたが、食事前にプロセッコを飲みながらおしゃべりする、アペリティフの1杯が定番です。軽やか&フレッシュな味わいですので、お料理と合わせる場合でも、野菜や魚を中心とした軽めの前菜や、ソーセージやハムなどの豚肉加工品、軽くつまめるフィンガーフードなどがオススメです。

エクストラ・ドライなどの少し甘さのあるタイプは、ちょっとピリ辛で甘さも持った、東南アジアや韓国などのアジアン・エスニック料理との相性が良いので試してみて下さい。

【代表的な1本】

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ミオネット プロセッコDOC トレヴィーゾ ブリュット

 

ミオネットは1887年創業。130年を超える歴史を誇る、世界No.1※のプロセッコメーカーです。オレンジラベルのトレヴィーゾ ブリュットは、ミオネットのラインナップの中で販売量最大を誇るフラッグシップ商品。プロセッコの特長である「軽やか・フレッシュ・フルーティー」を具現する味わいです。

※IWSR 2018 International brandにおいて 

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