完璧な満足感。ある意味究極の組み合わせ。
1975年、サントリー山梨ワイナリー(現在の登美の丘ワイナリー)の一角で、貴腐化したセミヨンとリースリングが収穫され、そこから極上の甘口ワインが生産されました。それが日本初の貴腐ワイン、ノーブルドールとノーブルダルジャン(ダルジャンは貴腐果比率の低いぶどうから)です。貴腐が付くかどうかは自然任せのため、90年代にはわずか3ヴィンテージ、2000年代にも5ヴィンテージしか生産されませんでした。深い自然の甘さと、複雑な風味を持った貴重な液体です。
あんぽ柿とロックフォールバターと合わせると、口の中に完璧と言って良いハーモニーが生まれました。ロックフォールチーズをはじめとする青カビチーズと極甘口の貴腐ワインというのは相性が良い事で良く知られる組み合わせです。今回はノーブルドールという日本の貴腐ワインが持つ派手ではないけど深い甘さと、あんぽ柿の持つやさしく体に染みて行くような甘さの同一性が、そこに更なる一体感を産み出しました。もちろんロックフォールバターとの相性も抜群。これだけで完全に満足してしまえる、ある意味究極の組み合わせです。
チェザーリ アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ 2016
※終売しました
風味はバッチリ。ただ、少しワインの酸が目立ってしまうペアリング。
アマローネはイタリアで最も価値の高い赤ワインの一つ。収穫したぶどうたちを陰干しして水分を飛ばす事で凝縮感を上げ、潜在アルコール度数や風味の強さ、複雑さを飛躍的に高めて生産されます。陰干しをするとぶどうの糖分が上がるので、陰干しぶどうからは甘口のワインも良く生産されますが、アマローネの凄さは上がったぶどうの中の糖度を全てアルコールに変えている辛口である事。その分高めのアルコール度数(このワインだと15%)になり、強いボディ感と深いコクを持ったワインになります。ドライフルーツの風味も持つので、今回はチャンスかなと思って選んでみました。
あんぽ柿とロックフォールバターと合わせると、ロックフォールバターのコクがグッと引き出される感じがありました。アマローネの持つ落ち着いた果実の深みのあるコクとあんぽ柿のじんわりと広がる甘さも良い感じです。ワインが持つドライフルーツの風味と、あんぽ柿の風味も良い感じ。ただ風味の相乗性は強いのですが、アマローネは辛口ワイン。あんぽ柿が持つ穏やかな糖分が出て来る後半にややワインの酸とタンニンが目立ってしまう所が少し気になりました。
ロックフォールバターとワインは最高、柿がお邪魔な組み合わせ。
ビッグレッドブレンドはその名前の通り、強い味わいになるぶどう品種のワインたちをブレンドする事で、さらに豊かで力強い果実味の味わいを目指したワイン。カリフォルニア産の色々なぶどう品種(カベルネ・ソーヴィニヨン、ジンファンデル、マルベック、テンプラニーリョなど)をブレンドして、果実味たっぷりの味わいを実現しています。強い太陽由来のドライフルーツを連想させる風味が、あんぽ柿と相性が良い様に思って試してみました。
あんぽ柿とロックフォールバターと合わせると、ロックフォールバターとダークホースの果実味が一気に前に出て来る感じがありました。柿の部分は全体の底支えという感じであまり目立たず、むしろあんぽ柿の甘さがワインの酸味を際立たせてしまう印象です。ただ風味の強いロックフォールバターと、強い果実味を持つこのワインの相性は抜群で、お互いの味わいをドンとぶつけ合う力強い相性の良さがある様に感じました。しかし、柿が要らない感じがペアリングとしてはマイナスという事で点は辛くしてあります。トーストにロックフォールバター、いやステーキにロックフォールバターなら完璧でしょう。
泡と柿&ブルーチーズが反発する、勿体ない組み合わせ。
黒いボトルのコルドン ネグロと並ぶ、フレシネのもう一つの看板商品がこのカルタ ネバダ。「雪の手紙」という名前の通りの、白いすりガラスのボトルが印象的です。今年の春からラベルを一新し、これまでの金のラベルから、目立つオレンジラベルに変更になっています。じつはそれに合わせて中身も少し見直ししており、より1本で満足頂ける様にコクと飲み応えが増しています。
あんぽ柿とロックフォールバターと合わせると、あんぽ柿のやわらかな甘さとワインのじんわりとした甘さが最初に口の中にゆったりと広がって、その後にロックフォールの刺激的な香りがバターの甘さに包まれつつ大きく広がります。時間差で出て来る風味の広がりが心地よい組み合わせだと思いました。ただ、スパークリングの泡立ちの軽快さと酸味が、柿とブルーチーズのどっしりとしたコクと少し反発する感じがあったので少し減点しています。