チーズとワイン

気軽にマリアージュ

カジュアルなワインとカジュアルなチーズの相性を
担当 柳原が独断で評価します

チキン ケサディーヤ

第58回 2019年10月

チキン ケサディーヤ

チーズの味わい

メキシコ風に味付けしたチキンとたっぷりチーズを、フラワートルティーヤに挟んで焼いた一品。スパイシーなチキンととろけるチーズの相性がたまりません。

準備するもの(今回のレシピ・2つ分)
 鶏むね肉(一口サイズ)50g、溶けるチーズ50g、フラワートルティーヤ4枚、玉ねぎ半個(紫玉ねぎ使用)、カラーピーマン半個、コリアンダー、オイル、メキシカンシーズニング適量

つくり方
 (1)オイルを入れたフライパンで、メキシカンシーズニングと合わせておいた鶏肉、薄切りにした玉ねぎ、ピーマンを炒める。最後に刻んだコリアンダーを入れる。
 (2)フライパンにトルティーヤをのせ、その上に(1)を半量、さらにチーズ半量をのせて、トルティーヤをかぶせ火にかける。チーズがとろけてくるまで両面を焼く。もう一つも同様に焼く。


よく合うワイン

シャルル ヴォルネーブリュット※終売しました

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

青リンゴ ミラベル/黄色すもも はちみつ

ワインの味わいが瑞々しさを増す、
膨らみのあるマリアージュ。

シャルル ヴォルネーはフランス国内での販売数量No.1※を誇るスパークリングワインです。つくり手はシャルマ法(タンク内で泡をつくるスパークリングワインの製法)を開発したC.F.G.V.社。元祖らしい安定感のある味わいです。
ケサディーヤと合わせると、ワインのりんごを思わせる風味と、やさしいパンの風味が広がっていく感じがありました。ケサディーヤのスパイシーな部分はどちらかというと陰を潜めて、チーズのまろやかさ、トルティーヤの香ばしさが前に出てくる感じです。さらにワイン単体では殆ど感じなかった、メロンを思わせる華やかで瑞々しい香りが立ち上がってきて、全体の味わいを膨らませてくれました。どちらかというとワインが良くなる感じですが、十分に美味しい組み合わせです。

※IRI フランススパークリングワイン市場2017年販売数量(シャンパン除き)

エスニックにはヴィオニエ。
層になって味が広がるマリアージュ。

<サミュエルズ コレクション>は、ヤルンバの創業170周年を記念して、創業者の名を冠して発売されたシリーズ。オーストラリアの白ワインの銘醸地として知られるエデン・ヴァレー産のヴィオニエを100%使用した、とろけるような果実味と複雑さを併せ持つ味わいです。
ケサディーヤと合わせると、お互いに単体で食べた時には絶対に出てこない複雑な風味が出てきました。ワインの持つ果実や花のような香りに、コリアンダーや玉ねぎが反応し、ケサディーヤのスパイシーさや鶏肉の香りにワインの持つスパイシーな部分が反応して、味わいを何倍にも広げていく感じがあります。さらに、チーズのまろやかなテクスチュアとヴィオニエのゆったりとしたコクのあるテクスチュアもピッタリ。”エスニックにはヴィオニエ”という定説をしっかりと裏付けてくれる結果になりました。本当にピッタリの組み合わせです。

サンタ カロリーナ エストレセルヴァ カベルネ・ソーヴィニヨン 2017

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

カシスリキュール ミント 樽

ワインの果実味が全開。まろやかで甘いマリアージュ。

エストはスペイン語で「星」を意味する「Estrella」から名付けられました。その名の通り、満点の星が輝く(チリの星空は素晴らしく綺麗です)夜間に収穫(ナイト・ハーベスト)したぶどうを使用しています。ナイト・ハーベストで保持された酸味と、チリらしい果実味が融合した味わいが特長です。
ケサディーヤと合わせると、不思議と暖かさを前面に感じる味わいになりました。チーズとトルティーヤに反応して、ワインの果実やスパイスを思わせる香りやオークの甘い風味がどんどん出てきました。事前の予想では、カベルネのミントを思わせる風味と、ケサディーヤのコリアンダーやピーマンが反応して、野菜系のスッキリ味に行くかと思っていたのですが、個人的にはちょっと意外な味の出方になりました。果実味全開になりますので、果実の甘さを感じたいという方にはオススメのマリアージュかと思います。

「しっくりくる」という言葉がピッタリ。素直に合うマリアージュ。

型破りの味わいで人気のダークホースの限定商品。ダブルダウンとは賭け事の際に強気に出て「倍賭け」する事。その名前の通りの力強い果実味とタンニンが特長です。ぶどうはタナ、テロルデゴ、ジンファンデル、プティ・シラーのブレンドです。
ケサディーヤと合わせると、元々しっかりとした強さを持つワインの味わいが、さらにもう一回り厚みを増すように感じました。メキシカンシーズニングのチリのスパイシーさとワインの持つ果実味&少しの残糖感が抜群に合います。他にも色々と合う要素はあるのですが、言葉にしようと思うとピッタリくるものが見つからない感じで、これが同じ地方の料理とワインを合わせた時に感じる、「しっくりくる」という事なのかと思います。使っている肉が鶏ではなく牛なら、きっとさらに良いマリアージュになったでしょう。

チャレンジまとめ

ケサディーヤは元々メキシコの料理ですが、メキシコのケサディーヤはトルティーヤ(しかもコーントルティーヤが普通)にチーズのみのシンプルなもの。今回は中に炒めたメキシコ風味の鶏肉と野菜も入ってますので、テックス・メックススタイルのアメリカ風のケサディーヤです。やっぱりそうなると強いのはアメリカのワインという事で、少し甘さを感じるような強い果実味を持つダークホースとの相性の良さは、言葉ではなくて、直接感覚に訴えるような美味しさを感じました。これが、土地の料理に土地のワインの相性の良さかと思います。
それ以上に良かったのがヤルンバのエデン・ヴァレー ヴィオニエ。ヴィオニエがエスニック料理に合うという事を見事に証明する素晴らしいマリアージュになりました。オレンジ、新生姜の甘酢漬け、コリアンダーシード、マスクメロン、温州みかん、はちみつヨーグルトなどを思わせる、個別の解説には書ききれなかった香りが、ワインと料理の双方からどんどん出てくる感じは圧巻で、マリアージュの醍醐味を味わわせてくれました。試して頂ければ、素晴らしい体験になると思います。

柳原 亮 (やなぎはら りょう)

野菜と穀物(ライ麦パンが好き)、豆腐が主食の草食系。
ヤギ乳製チーズをこよなく愛する、通称ヤギ原。
年間3,000種類超のワインをテイスティングし、お小遣いの総てをワインに投じる徹底したワイン愛好家。

(一社)日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ
NPO法人チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナル
第9回(2013年)全国ワインアドバイザー選手権大会準優勝

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