チーズとワイン

気軽にマリアージュ

カジュアルなワインとカジュアルなチーズの相性を
担当 柳原が独断で評価します

ブッラータと桃

第80回 2021年08月

ブッラータと桃

チーズの味わい

熟れた桃が店頭に並びだすと、この一品が食べたくなります。桃とブッラータって本当に相性が良いのです。とても簡単だけどうっとりする美味しさです。

準備するもの
ブッラータチーズ1個、桃1個、オリーブオイル適宜、ピンクペッパー(黒胡椒でも可)適宜、チャービル(無くても可)適宜

つくり方
(1)冷やした桃を食べやすい大きさに切り、皿に盛る
(2)ブッラータチーズを乗せ、十字に切り込みを入れる
(3)オリーブオイル、ピンクペッパーをかけ、チャービルを飾る


よく合うワイン

全ての素材に意味がある。素晴らしい一体感のある組み合わせ。

ワイン名が長くてなかなか覚えられませんが、ヴァルドッビアーデネはプロセッコ発祥の地。ドロミティ山塊の麓に位置する丘陵部に畑があり、通常のプロセッコよりも力強くボリューム感のあるワインを生むため、イタリアワインの最高峰であるDOCGに認可されています。味わいはほんのりと甘い(残糖17g/L)エクストラドライタイプ。プロセッコのメロンや白桃を連想させるフルーティさを際立たせてくれる、伝統的な残糖度です。
ブッラータと桃と合わせると、プロセッコのフルーティさがより輝きを増す感じがありました。白桃の瑞々しさと、プロセッコの白桃やメロンを思わせるジューシーさ、チャービルの甘い植物の青さ、ピンクペッパーの鮮烈な香り、そして再度プロセッコのフワっと広がるフルーティさと白い花のフローラルさ。それぞれの要素がみんな同じ方向を向いていて、口の中がとても心地よい感じで満たされます。そしてそれを最後にまとめるのが、ブッラータのまろやかだけどフレッシュなクリーミーさ。オリーブオイルまで全ての素材に意味があってプラスになっている。そんな感じの組み合わせでした。

ファルケンベルグリープフラウミルヒ マドンナ 2020

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

白桃 白い花 はちみつ

桃感マックス!とにかく桃の風味が前面に出る組み合わせ。

マドンナはドイツワインを代表する銘酒「リープフラウミルヒ(聖母の乳)」の元祖です。ぶどう品種はミュラー・トゥルガウ、リースリング、ケルナー、シルヴァーナーのブレンド。もぎたての白桃を連想させるフルーティな甘い香りと、甘酸っぱくキュートな味わいが魅力です。
ブッラータと合わせると、桃の甘い香りが口の中一杯に広がりました。ワイン自体にも白桃を連想させる香りがしっかりある事もあり、食べている桃の香りが広がっているのか、ワインの香りなのか、一瞬混乱するくらいの華やかな桃感です。実際の桃とワインの桃の風味が重なる事でこの華やかな桃マックス感が出ているのでしょう。その他の要素はチャービル、ピンクペッパー、オリーブオイルと次々と姿を見せては消えていく感じで、これはプロセッコの時に感じた一体感とは少し異なる感じです。ブッラータはどちらかと言うと、桃とワインの脇役になってしまう感じで、とにかく桃が主役のマリアージュになりました。とは言え、桃だけ食べてワインを飲んでもそうはならないのが面白いところです。

どっしり濃厚。クリーム&スパイスのコクを感じる組み合わせ。

<サミュエルズ コレクション>は、ヤルンバの創業170周年を記念して、創業者の名を冠して発売されたシリーズ。オーストラリアの白ワインの銘醸地として知られるエデン・ヴァレー産のヴィオニエを100%使用した、とろけるような果実味と複雑さを併せ持つ味わいです。ヤルンバはオーストラリアにおけるヴィオニエの先駆者で、一次は世界最大のヴィオニエ生産者だった事もある、この品種のスペシャリストです。
ブッラータと合わせると、ワインのどっしりとしたコクが強く感じられました。リッチな黄桃を思わせる重量感のある果実感と、ハッキリと出て来る生姜や白胡椒を思わせるスパイシーさ。4つのワインの中だと、ブッラータのチーズ感が最もしっかりと出て来ます。ただ、ワインがかなりしっかりとした味わいなので、白桃がワインの風味に負けてしまってあまり前に出て来ません。今回の4本の中で唯一の完全辛口のワインという事もあり、ワインのほろ苦い感じもそれなりに出てしまいます。クリームとスパイスの感じやワインのコクはわかるけど、ピッタリとは言えない組み合わせでした。

チェレット モスカート ダスティ 2020

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

マスカット はちみつ 白桃

香りが凝縮されるような、余韻が素晴らしい組み合わせ。

モスカート・ダスティは、イタリア・ピエモンテ州でマスカットからつくられる微発泡の甘口ワイン。もぎたてのマスカットや瑞々しい白桃を頬張るようなフレッシュ&フルーティな味わいが魅力です。結構甘い(残糖約100g/L)ワインで、デザートと合わせたり、食前酒に飲まれる事が多いです。今回は桃を活かしたかったので、このワインが持っている残糖の甘さも悪いくないかなと思って選んでみました。
ブッラータと合わせると、桃のフルーティさ、ブッラータのクリーミーさ、ピンクペッパー&チャービルの香りと、この料理が持っている香りが全て口の中で爆発するように強く感じられます。しっかり甘さとトロミのあるワインと、白桃の柔らかな果肉感や、ブッラータのクリーミーなテクスチュアとの一体感も見事です。ややワインが強いかな?と思う瞬間もありましたが、全ての味わいの要素がイキイキと出つつ、最終的に口の中に残る白桃の香りを凝縮したような余韻があまりに素晴らしいので、それも良いかなと思えました。素晴らしい組み合わせだと思います。

チャレンジまとめ

切って並べるだけ。簡単だけど見た目は豪華で素敵な一皿になるオススメの一品です。ブッラータというチーズ自体の魅力もありますが、何と言ってもこの料理のポイントは旬の完熟桃のうっとりするような香りと食感にあると思いますので、ワイン自体に桃の風味を感じる4本と試してみました。スパークリングワインとスティルワインが混ざってはいるものの、4本のポイントは完全辛口のヤルンバから始まって、残糖17g/Lのやや辛口のミオネット、残糖約40g/Lのやや甘口のマドンナ、そして残糖約100g/Lの完全な甘口のアスティと、ワインの持つ糖分に幅があるところです。今回のメイン素材である甘い桃を活かすためには、完全辛口のヤルンバはワインに苦みが目立ってしまい不利だったように思います。ただ、絶対にワインが甘くないといけないかというと、少し残糖があれば十分に桃の良さは味わえたように感じました。ワインのスタイルとしては、フレッシュな果実の風味をストレートに出す、ステンレスタンク発酵で熟成しないタイプがこのお料理には合うと思いました。その点ではミオネットの全体の一体感も素晴らしかったですし、アスティの桃の凝縮した香りも見事でこの2本は甲乙つけがたい良い組み合わせだったと思います。
ブッラータは高価ですし、どこでも買える訳ではないので、モッツァレラを使うレシピも色々なところで紹介されています。しかし、やはりブッラータだと一味違います。日常の食卓だとモッツァレラでも十分ですが、ここぞという時にはブッラータで試してみて下さい。

柳原 亮 (やなぎはら りょう)

野菜と穀物(ライ麦パンが好き)、豆腐が主食の草食系。
ヤギ乳製チーズをこよなく愛する、通称ヤギ原。
年間3,000種類超のワインをテイスティングし、お小遣いの総てをワインに投じる徹底したワイン愛好家。

(一社)日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ
NPO法人チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナル
第9回(2013年)全国ワインアドバイザー選手権大会準優勝

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