チーズとワイン

気軽にマリアージュ

カジュアルなワインとカジュアルなチーズの相性を
担当 柳原が独断で評価します

ラックス&ベーグル

第63回 2020年03月

ラックス&ベーグル

チーズの味わい

ラックスはイディッシュ語(古いユダヤの人たちの言葉)で鮭を意味する言葉で、スモークサーモンのこと。これまたユダヤのパンであるベーグルとは相性抜群。ここにクリームチーズを合わせたサンドイッチは、食べ応えがありながらサッパリとした、定番の美味しさです。

準備するもの
ベーグル(ポピーシードベーグルを使用)1個、スモークサーモン3枚、クリームチーズ50g、好みのハーブ(ここではディルと小ねぎ使用)適宜、塩適宜

つくり方
(1)クリームチーズを常温に戻して柔らかくしてから、刻んだ好みのハーブ(少し取り置く)を混ぜる。好みで塩で味付けする。
(2)横半分に切ったベーグルに①を塗り、スモークサーモンを乗せる。取り置いたハーブを散らす。


よく合うワイン

フレシネ オーガニック ブリュット

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

黄桃 洋梨 はちみつ

まろやかさが印象に残る、とても滑らかなマリアージュ。

30年連続で売上No.1※の、名実ともにカヴァのトップメーカーであるフレシネ社がつくる、オーガニックのカヴァ。カヴァの主要産地であるカタルーニャ州ではなく、オーガニック栽培に適したバレンシア州レケーナのぶどうを使用しています。マカベオ75%、シャルドネ25%の品種構成からうまれる、まろやかで豊かな果実感が特長です。
ラックス&ベーグルと合わせると、ワインのやさしい果実味が口の中全体に広がる感じがしました。オーガニックのワインから良く感じられるジワっと体に染み込んでいく感覚です。スモークサーモンのスモーキーさとワインにある香ばしさの調和も良い感じ。練り込んだハーブはそれほど目立たないのですが、その分全体の味わいのまろやかさが印象に残る組み合わせとなっているように思いました。クリームチーズが全体を上手にまとめてくれている、とても滑らかなマリアージュでした。
※The IWSR 2018 スペインスパークリングワイン販売数量

ロス ヴァスコスソーヴィニヨン・ブラン 2019

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

ルビーグレープフルーツ パッションフルーツ ディル

全ての要素をきちんと出しきる、余韻まで素晴らしいマリアージュ。

ロス ヴァスコスはフランス ボルドーのメドック地区で格付け1級筆頭のシャトー ラフィット・ロートシルトを擁する、ドメーヌ バロン ド ロートシルト ラフィット社が1988年からチリで運営するワイナリー。ソーヴィニヨン・ブランは鮮やかな柑橘&トロピカルフルーツを連想させる風味を持つ、フレッシュでキレのある味わいが魅力です。
ラックス&ベーグルと合わせると、全ての味わいが活性化する感じがありました。まずはワインの柑橘系の爽やかな香りが口の中でドンと爆発する感じがあり、そこにディルの甘い香り、サーモンの香り(あまりスモークの感じが目立たなくなります)が続きます。そこで終わらず、味わいの後半からはベーグルの麦の甘さとクリームチーズの乳の甘さがきちんと出て、最後にまた今度は甘いトロピカルな感じになったワインの味でフィニッシュとなるのがこの組み合わせの凄いところ。余韻までしっかりと味わいきる事が出来る、素晴らしいマリアージュだと思います。

サーモンの味がドンと強化される、サーモン好きのためのマリアージュ。

12角形のボトルシェイプが印象的なジャン ガイラーの上級版。生育条件の良い特級畑の近くに位置し、水はけがよく、温まりやすい土壌故に、高い熟度の果実が収穫出来る畑のぶどうを厳選して使用しています。2014年のワインという事もあり、程よい熟成感が出て来ています。厚みと複雑さのある果実感を、リースリングらしい緊張感のある酸が引き締める、魅力的な味わいに発展していました。
ラックス&ベーグルと合わせると、ワインの味わいに奥行が出てくる感じがありました。ワインの持つ蜜を思わせる甘い香りや、緻密なテクスチュア、透明感のある酸などの良い要素がしっかりと感じられます。ベーグルはというと、サーモンの味わいがかなり強調されるようになりました。スモークの香りもしっかり出て来ますし、サーモン特有の脂の香りも強調される感じがあります。ワインの味も強くなるし、サーモンの味も強くなる、お互い強化型のマリアージュとなりました。リースリング好き、サーモン好きには堪らない組み合わせになると思います。僕はかなり好きでした。

マクマレーセントラル コースト ピノ・ノワール 2016

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

アメリカンチェリー スミレの花 バニラ

お互いの悪い部分を暴いていく。痛快に合わない組み合わせ。

マクマレーはアメリカ カルフォルニア州で100年の歴史を持つワイナリー。ピノ・ノワールが生産量の殆どを占める、ピノに特化したワイナリーです。このワインはカリフォルニアでも特に冷涼なセントラル・コースト産のピノ・ノワールを使用した、華やかな果実味とエレガントさを持った1本です。
ラックス&ベーグルと合わせると、何とも言えない違和感を感じました。ディルの香りと、ワインの樽からのバニラ感のギャップ、ワインの華やかな果実味の後に現れる、サーモンの脂の生臭い香り、ポピーシードの香りによって気付くワインの煮詰めたような感じなど、合わせる事でお互いの気になるところを暴いていく感じは、美味しくはないけれど、むしろ痛快ですらあります。こういう組み合わせを合わないと言うのでしょう。ワインもベーグルも単体だと美味しいだけに、よりそれが目立ちます。これはワインのせいでも、ベーグルのせいでもなく、これを選んだ僕の責任です。

チャレンジまとめ

今月はニューヨーカーの定番、ベーグルサンドです。この連載の取材の時は、大体10:00くらいから料理をつくって、写真撮影して、お昼前からマリアージュ実験をして、という感じなのですが、サンドイッチは早いです。今日は10:30には撮影終了して、マリアージュ実験を始める感じになりました。この手軽さがサンドイッチの魅力です。今回はベーグルでしたが、パンの種類によってもバリエーションは無限大だし、挟む具材も無限大。サンドイッチは可能性が凄くあると思います。今日は中の具がスモークサーモンとハーブとクリームチーズと完全に白ワイン寄りのものだったので、赤ワインには可哀想なことをしてしまいましたが、これも中の具材さえ選べば問題ありません。楽で美味しいって素晴らしいですね。お鍋も使わないので、洗い物も出ませんし。ただ、こういうシンプルなものほど素材の味わいが顕著に出ますので、自分の好みのものを見つける事が大事になってくると思います。それが見つかれば15分でご馳走にありつけます。
マリアージュとしては、スモークサーモンに合うと言われる定番2品種、ソーヴィニヨン・ブランとリースリングがともにいい活躍をしてくれました。ソーヴィニヨンの方が少しだけ評価点が高くなったのは、ロス ヴァスコスのオーナーのロートシルト家がユダヤ系だからかも知れないですね。何かそういう感じでつながっているものはある気がします。
ハーブは今回はディルと小ねぎを使っていますが、他にもケイパー、セルフィーユ、きゅうりのピクルスなど、スモークサーモンと相性の良いものであれば何を使って頂いても美味しいと思います。紫玉ねぎのスライスなんかもいい感じで使えます。

柳原 亮 (やなぎはら りょう)

野菜と穀物(ライ麦パンが好き)、豆腐が主食の草食系。
ヤギ乳製チーズをこよなく愛する、通称ヤギ原。
年間3,000種類超のワインをテイスティングし、お小遣いの総てをワインに投じる徹底したワイン愛好家。

(一社)日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ
NPO法人チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナル
第9回(2013年)全国ワインアドバイザー選手権大会準優勝

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