連載

ワイナリー便り:シャトーラグランジュ便り
2018年11月13日 異次元への突入?

2018年の収穫が終了しました。前報にて7月以降、暑く乾燥した夏が続いていると記しましたが、今年は10月13日の収穫終了までこの暑さと乾燥が継続する稀有な気候となりました。月別に追うと、平年より2℃も平均気温が高かった7月に続き、まず8月は3日と6日に38℃を記録するなどコンスタントに気温が高く、8月の平均気温は平年+1.4℃でした。8月の降水量は35mmと、平年と比べ30%も少なく、6〜8月トータルでも112mmと平年比30%減の、乾燥した理想的な夏であったと言えます。50年ぶりと言われたベト病の蔓延にも、完全に歯止めがかかりました。続く9月は更に乾燥した月となり、月間降水量はわずか3mm、平均気温は平年+1.0℃、日照時間に至っては平年比22%も多い252時間となり、これで6-9月の降水量は116mmと平年の52%減、平均気温は平年+2.2℃とグランミレジムの状況は整いました。

ラグランジュでは、植付6年目の幼木メルロを9月20日に収穫開始。同じく幼木のオー・メドック(キュサック村)のメルロも22日に、そしてカベルネ・ソーヴィニヨンは10/1に開始しました。  10月に入っても暑く乾燥した天候が続き、5日と12、13日には29℃を記録するなど10月とは思えない天候の中、13日にオー・メドックのカベルネ・ソーヴィニヨンを最後にすべての収穫を終了しました。10月1日から収穫終了までの平均気温は平年+1.5℃で、降水量はわずか15mm。この収穫期の乾燥により収量は当初見込みを下回り、最終的に平年比20%減となってしまいました。今年は果実の1粒重が2016年、2010年に次いで過去3番目の小ささで、搾汁歩合は0.78(通常0.82〜0.85)と平年を大きく下回り、最終的にワインの量は更に5〜10%減る事が予想されています。

一方で1粒重の小ささは高品質の証で、品質に関しては偉大なヴィンテージの素質を備えています。プロフェッショナル間での情報交換では、グランミレジムの2010年の強さと2009年の柔らかさを併せ持つという声が聞こえてきます。ラグランジュのカベルネ・ソーヴィニヨンの平均糖度はアルコール換算で初めて14度を上回り、メルロに至っては約15度と記録的な熟度での収穫となりました。アルコール度数だけ見るとニューワールドのワインと錯覚しそうですが、酸もしっかりと残っているため、味わいはボルドースタイルに仕上がっています。個人的には過去最高の出来となった2016年に匹敵するポテンシャルすら感じています。

写真1は、収穫最終日(10月13日)となったオー・メドックのカベルネ・ソーヴィニヨンの収穫時の写真です。サンジュリアンと錯覚するほどに濃い果皮の色合いに驚きませんか?写真2と3は、醗酵後期にタンクサンプルを試飲した際の写真です。グラスに注がれたサンジュリアンのメルロの色の濃さは過去に例がないレベルで、異次元への突入を感じさせるほどでした。カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、そしてプティ・ヴェルドと、全ての品種がこれほど完熟したという点では2009年、2016年をも凌ぐかもしれません。1月のアッサンブラージュが今から待ち遠しい気持ちです。

最後に収穫後の季節の風景を2ショットお届けします。写真4は、昨年秋に改植のため抜根した畑の今の風景です。新植前に畑を2〜3年休ませ、地力を充実させるために牧草や豆類の種を播種します。訪問された方々の目を楽しませるために、四季折々の花の種も併せて播種しておくのですが、今、コスモスが満開で、あまりに綺麗なので皆さんと共有したいと思いました。

写真5は楓の紅葉です。11月上旬に一度だけ急に0℃近く冷え込んだため、一気に紅葉が始まりました。11月に入っても温暖な天候が続いていますので、もうしばらく秋の風物詩が、収穫での疲れを癒してくれそうです。

写真1:収穫最終日の、完熟したオー・メドックのカベルネ・ソーヴィニヨン
写真1:収穫最終日の、完熟したオー・メドックのカベルネ・ソーヴィニヨン
写真2:醗酵終了直前でのタンクサンプル試飲の光景
写真2:醗酵終了直前でのタンクサンプル試飲の光景
写真3:グラスに注いだ醗酵終了間際のメルロは、異次元の色の濃さ。
写真3:グラスに注いだ醗酵終了間際のメルロは、異次元の色の濃さ。
写真4:休耕地を埋め尽くすコスモス
写真4:休耕地を埋め尽くすコスモス
写真5:シャトー醸造棟傍の紅葉
写真5:シャトー醸造棟傍の紅葉
シャトー ラグランジュ
椎名敬一

葡萄栽培研究室、ガイゼンハイム大学留学、ロバート・ヴァイル醸造所勤務、ワイン研究室、原料部、ワイン生産部課長を経て、2004年6月よりシャトー ラグランジュ副社長。2005年3月より同シャトー副会長。

 
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