連載

ワイナリー便り:シャトーラグランジュ便り
2014年02月27日 2014年始動

日本では東京が45年ぶりの大雪、アメリカでは体感温度-45℃の記録的寒波と、世界各地で異常気象での年の滑り出しになりました。フランスも記録的とまでは行きませんが、異常な暖冬でのスタートとなっています。1月の平均気温は9.6℃と平年を3℃も上回り、2月に入っても一向に寒くなる気配はありません。2/14の最高気温は20℃に達し、公園や庭先のスイセンは満開、木々の芽は3月並みに膨らんできています。異常なのは気温ばかりではありません。昨年、平年の1.5倍もあった降水量は年を越しても継続し、1月は平年の2倍を記録しました。これによりボルドー市内やメドック地区の川沿いの道路ではジロンド川の氾濫が起こっています。こういった年で最も懸念されるのは、萌芽が早まりその後突然の寒波来襲時の霜害です。葡萄たちが焦らず、じっくりと萌芽の態勢を整えてくれることを祈るばかりです。

さて、2月ともなるとボルドーはプリムールの前哨戦が始まり、様々なルートを通じて今年のプリムールに向けた情報が流れ始まります。 数日前のFIGARO紙に著名ワインコンサルタントのドゥルノンクール氏が(1)今年のシャトー マレスカス(クリュブルジョワ)はプリムールを行わない、(2)セカンドワインも造らずバルクで売る、(3)Vtg2013はVtg1992を連想させ、熟成に耐える品質ではなく同様の決断をするシャトーが増えるだろう、と語った記事が載り、物議を醸しました。2日後にはグランクリュ3級のシャトー ラ ラギューヌもプリムールを行わない意向をアナウンスしています。すかさず翌日のレ・ゼコー紙ではユニオン・デ・グランクリュのベルナール会長が、(1)Vtg2013は造り手による品質のばらつきが多く、一括りで2011や2012より良い、悪いの論議は不毛、(2)難しい年でも良いワインを造れることこそがグランクリュの本領、と火消しの発言をしたものの、一方でインタビューの最後に『240の著名シャトーの頂点を形成する50シャトーの半分は20-30%の価格ダウンは避けられないだろう』と発言し、これまた物議を醸してしまいました。この時期の発言には多分にアドバルーン的な要素がありますし、ラ ラギューヌのようにビオロジック栽培導入の結果、昨年の収量が平年の30%にも満たないという個別理由が背景の場合もあります。今年はパーカー評点も例年の4月ではなく6月になるとの噂も入ってきていますので、例年とはかなり違ったプリムールとなるのかもしれません。いずれにしても我々は、目先の情報に惑わされる事無く、粛々と自信を持ってお見せできる品質のワインを造り上げ、プリムールでの皆さんの評価を待ちたいと思います。

ワイン造りのご報告ですが、Vtg2013のアサンブラージュが終了しました。シャトーものに入れるかあるいはセカンドへ落とすか、更にはセカンドに残すかバルクとして外すか、を悩むロットが幾つかありましたので、それを別置きして残りはすべてブレンドし、樽詰めを行ないました。別置きしたロットに関しては、数ヶ月後に再度テイスティングし最終用途を決定していきます。品質的には前報でご報告したように、果実味を持ったバランスの良い、サンジュリアンらしい仕上がりになったと判断しています。悲観的なヴィンテージとしてセンセーショナルに取り上げようとしているジャーナリストや海外のインポーターに、プリムール試飲の際には小さな驚きを与えることは出来るのではないかと期待しています。

シャトーものの品種配合はカベルネ比率が約75%と、2000年、2009年、2010年とほぼ一緒の配合となりました。もちろんこういった特別なヴィンテージと肩を並べると言いたい訳では決してありません。ただ、もしジャーナリストが言うように悲観的な年であればカベルネの比率をここまで上げる事は不可能ですので、葡萄の熟度は満足のいくレベルであったことを察して頂ければと思います。いずれにしても、まもなく各シャトーのプリムールサンプルがベールを脱ぎますので、どんな品質となるか楽しみにお待ちください。こういう年こそ造り手の技量が試されますので、私も今年のプリムール試飲会はたいへん興味深いものになるであろうと期待しています。

アサンブラージュの光景。
ブレンドしたワインを樽詰めする際の秘密兵器<ピユーヴル(大蛸)>:複数のタンクから同量ずつ混ぜ合わせ、均一化したワインを樽詰めする事が出来る。
シャトー ラグランジュ
椎名敬一

葡萄栽培研究室、ガイゼンハイム大学留学、ロバート・ヴァイル醸造所勤務、ワイン研究室、原料部、ワイン生産部課長を経て、2004年6月よりシャトー ラグランジュ副社長。2005年3月より同シャトー副会長。

 
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