連載

ワイナリー便り:シャトーラグランジュ便り
2013年3月28日 豪雪の功罪

3月11日から数日間、欧州北西部は季節外れの暴風雪に見舞われました。北フランスのノルマンディやブルターニュ地方では平地でも一日に30cm、吹き溜まりでは1mを超える積雪を記録し、交通に大混乱をきたしました。主要な空港では数百便が欠航となり、雪に強いと思われていたTGVまでもが不通になる状況でした。14日より徐々に復旧しましたが、3月中旬の積雪としては記録的な大雪となりました。


ボルドーも含むフランス全体の今冬の気象を総括すると、日照の少ない曇雨天の多い天候と言えると思います。平均気温は極端に低いわけではないのですが、どんよりとした雨の日が多かったという印象です。山岳地方では豪雪となり、ピレネーの山々では早いスキー開きで多くの観光客を得て、地元の方々は当初はほくほく顔でした。しかしその後も一向に降りやまない雪で逆に除雪が大変な状況となり、今でも悲鳴を上げているのが現状です。4mを超える雪でリフトが埋まってしまったスキー場のニュースなどが紙面を賑わせていました。


実際に地元で生活をされている方々にとっては難儀な豪雪も、農業や生活の面から見ますと恵みの雪ともいえます。ここ数年、フランスでは南西部を中心に夏の旱魃に苦しんできました。最大の理由は冬の降雪不足です。今年のような大雪で蓄えられた雪は、春先の雪解け水となって大地に少しづつ潤いを与えてくれるからです。

話をラグランジュの話題に移しましょう。前報にて、今年はアサンブラージュを2月に開始することをご報告しました。区画や品種、樹齢による品質の差が激しい年であり、例年以上に慎重な選別が必須と考えたからです。厳しい選別が必要であることは覚悟していましたが、最終的にシャトーものの生産量は過去最も少ないレベルにまで厳選する事となりました。シャトーものの生産量は昨年比でも20%減、平年比では35%減のレベルです。一方、品質に関してはしっかりした品質に仕上がったと感じています。4月のプリムール試飲会での評価を受けるまで詳細のコメントは避けたいと思いますが、収穫期に雨が続く難しいヴィンテージに於いては、皆様に自信を持ってお勧めできるレベルは確保できたと思います。もしプリムール試飲会やその後のイベントなどで試飲される機会がありましたら、ぜひ忌憚のないコメントを私宛にして頂ければと思います。

さて、いよいよ今年の『花祭り』(前報参照)まで3か月を切ってきました。準備もラストスパートです。晩餐会の会場となる樽貯蔵庫の塗装もほぼ終了しました。シャトーへのアプローチとなる道路の整備も急ピッチで進めています。これまでシャトーの北側にあったアプローチをベイシュベル村側から真っ直ぐシャトー前の池へ下ってくるアプローチに変更します。工事が納期通りに進まないフランスですので工事が完了するまで気は抜けませんが、全体像はほぼ見えてきました。これまでのラグランジュのイメージとは異なるアプローチを楽しめるはずです。

この花祭り同様、今年のもうひとつ重要なイベントとして、ニューヨークでジャーナリスト向けのラグランジュ取得30周年記念バーティカルテイスティングを3月4日に行ってきました。ニューヨークでは2007年にデュカス前社長からエイナール現社長にバトンタッチする際に行った試飲会以来、6年振りとなるビッグイベントでした。前回との違いは、サントリー取得以前のヴィンテージとして1982年、1970年、1959年の3ヴィンテージの試飲を追加した事です。畑の持つポテンシャルを示す目的での試みで、続く昼食会の席では非常に興味深い試飲会だったとのポジティブな反響が得られ、記念すべき年のイベントとして上々の滑り出しとなりました。年末にはいよいよ日本でも30周年イベントを企画しますので、どうぞご期待ください。

雨の中での収穫
花祭りに向け整備が進むシャトーアプローチ(舗装前の処理工事の風景)。
光センサー選果台導入で一新した葡萄レセプションの光景
壁面塗装が終了した樽熟庫。此処で花祭りの晩餐会が行われます。
1862年にJules Bretonが描いた『シャトー ラグランジュの収穫風景』
1NYで行われた30周年記念テイスティングの1ショット。
150年後の収穫風景(2011年秋)
1959まで遡るヴァーティカルテイスティングのワイン群
シャトー ラグランジュ
椎名敬一

葡萄栽培研究室、ガイゼンハイム大学留学、ロバート・ヴァイル醸造所勤務、ワイン研究室、原料部、ワイン生産部課長を経て、2004年6月よりシャトー ラグランジュ副社長。2005年3月より同シャトー副会長。

 
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