連載

ワイナリー便り:シャトーラグランジュ便り
2013年02月06日 記念すべき年を迎えて

新年のご挨拶にはいささか間延びしてしまいましたが、あけましておめでとうございます。欧州の2012年は、ギリシャ問題がスペイン、イタリアへも飛び火してユーロ解体の危機にまで発展しましたが、新年は少し落ち着きを取り戻した年明けとなっています。東日本大震災以降、厳しい逆風が吹き荒れた日本も、年末の政権交代で閉塞感打破への期待感がほのかに表れた年初という感じでしょうか。今年が日本にとっても、そしてラグランジュ便りを読んでくださる皆様にとってもポジティブな年となりますことを心より期待したいと思います。

さて、迎えた2013年は、ラグランジュにとって記念すべき節目となる年です。と云いますのも、今年が経営参画30周年に当たるからです。5年前、25周年を迎えた時には『四分の一世紀』の大きな節目として祝いました。その5年後に『記念すべき節目』と書きますと、『毎年がグラン・ミレジムと言うフランス人になりきったか?』などと意地の悪いコメントが何処かから飛んできそうですが、それには正当な理由がひとつあります。
それは、今年の『花祭り』がラグランジュで開催されるというビッグニュースです。花祭りとはLa Fete de la Fleur と呼ばれるコマンドリー・ド・ボンタンが主催する晩餐会で、今年ワイン業界で催されるイベントの中でも、最も重要なイベントの一つです。毎年6月末に開催され、2年に一度のVINEXPO開催年(表年)には1,500人もの人が集う大きなイベントです。表年はシャトー、裏年はボルドーでの開催が恒常化しており、仮にメドック格付けシャトーの60シャトーが持ち回りで開催するとしても120年に一回しかチャンスは回ってこない計算です。ソーテルヌやペサック・レオニャンを合併した現在のコマンドリー・ド・ボンタンではその確率が更に小さくなっています。
そんな花祭りを、経営参画30周年の区切りに合わせ、ラグランジュで開催することが決定したので、自信を持って『記念すべき節目』と書いたわけです。表年の花祭りには、世界中の業界の主要プレーヤーがほとんど参席します。各国の主要インポーター、ジャーナリストに留まらず、各国大使や政治家(アラン・ジュペや、クリスティーヌ・ラガルド経済産業大臣等)、特別ゲストとしての女優・男優などが一堂に会することになり、その盛り上がりは言葉で表現することが難しい晩餐会です。そんな一大イベントを、自分が駐在しているときに経験できるというのもまさに運ですので、参席される皆様に『さすがラグランジュ』と言われるような最高のイベントに仕上げるべく、頑張りたいと思います。

さて、前報から時間がかなり空いてしまいましたので、その後の仕込みの進捗状況を報告しましょう。まず収穫ですが、過去最も遅い10月23日に終了しました。前報のとおり雨天の多い難しい収穫となり、今年から光センサーの選果台を2台体制に増強したことが功を奏した形です。未熟果や腐敗果を徹底して除去できた一方で、収量は平年を35%下回る結果となってしまいました。開花期の天候不順、その後の極度の乾燥、そして収穫期の雨が重なり、品質を優先する方針の下では、やむを得ない結果であったと受け止めています。
平年でしたら12月下旬よりアサンブラージュを開始するのですが、今年は2月まで引き延ばしています。収穫期が極端に遅かったことが理由のひとつですが、区画や品種、樹齢による品質の差が激しい年であることももう一つの重要な理由です。例年でも厳しい選別をしてシャトーものを造っているのですが、今年は更にもう一段、次元の異なる選別が必要になる可能性があるため、ワインが落ち着くのを待って2月中旬にアサンブラージュを行う予定です。どんなワインになるか、アサンブラージュでの感触を次号ではご報告しますので、楽しみにお待ちください。

昨年ラグランジュで開催されたコマンダリー世界大会時の花火の写真
昨年ラグランジュで開催されたコマンダリー世界大会時の花火の写真。ラグランジュのXmasカードに使ったこの写真は、まさに今年の花祭りのプレリュード・・・です。
シャトー ラグランジュ
椎名敬一

葡萄栽培研究室、ガイゼンハイム大学留学、ロバート・ヴァイル醸造所勤務、ワイン研究室、原料部、ワイン生産部課長を経て、2004年6月よりシャトー ラグランジュ副社長。2005年3月より同シャトー副会長。

 
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