連載

ワイナリー便り:シャトーラグランジュ便り
2010年11月18日 年子の大器?

2010年の収穫が終了しました。7、8月に続き、9、10月も乾燥した好天が続いたことから手ごたえの感じられる収穫になりました。特に9月の好天の恵みを最大限引き出すべく収穫をじっと待った甲斐もあり、完熟した果実が得られています。収穫期間では、10月4日と10日にまとまった雨がありましたが、すぐに風と好天が果房を乾かしてくれたため、病害の懸念は皆無の状況でした。

今年の収穫報告を書くために昨年の記事を見ていて、ふと気付いたのですが、この両年には非常に多くの共通点が見出せます。以下は昨年の収穫終了後に私が報告した内容です。

『ボルドーでの今年の特徴は、まず収量が少なく、凝縮感がとてつもなく高い葡萄が収穫された事です。開花後から夏場を通してずっと乾燥が続いた事から、果粒が小さく、皮が厚い理想的な葡萄果が得られました。しかも収穫期も好天が続いた事から、腐敗の心配はまったくなく、最後の凝縮に至ってはむしろアルコール度数の上がりすぎを懸念せざるを得ないほどの状況でした。8月、もしくは収穫前の9月にもう一雨あったならと、贅沢な悩みを言える状況にあった事は事実です。』

もし今年の生育と収穫を簡潔に書けと言われたら、この文章をそのまま書いても良いくらいです。昨年と今年の違いを探すとするなら、今年は春先の萌芽が遅く、開花期の天候が不順であった事、そして8月は乾燥した好天であったものの、涼しい夏であった事ぐらいです。これが今年の個性を作る事になるわけですが、仕込みが進んできた現時点での試飲からの感触では、昨年のふくよかで丸みのある味わいから一転、非常にタンニックな力強いワインになりそうな予感がします。

ラグランジュでの収穫時分析値を見ますと、メルロの糖度は昨年並みに到達しており、カベルネに至っては昨年をも上回っています。最も重要な指標の一つであるアントシアン総量は両品種とも昨年より10%以上も高い値を示しています。おそらくこれは今年のヴィンテージの特徴と思われますが、これらの兆候を踏まえて一部の生産者やジャーナリストは、今年の品質が昨年を超える可能性に言及し始めています。まだカベルネの醗酵すら終わらない現段階で、昨年との比較をするのは時期尚早ですのでコメントは差し控えますが、『フランス人の言う事を聞いていたら、毎年最高のミレジム(ヴィンテージ)になってしまう』という笑い話の次元とは異なる事も確かです。今後の仕込みの進捗に応じてタイムリーにレポートしていきますので、期待してお待ちください。

もう少し、収穫の状況を詳しくお伝えしましょう。
ラグランジュのメルロの収穫開始は9月29日で、平年よりやや遅めの収穫開始でした。その後好天が続いたことから、10月2、3、5、6日と収穫を見合わせるなど、極力収穫を遅らせる戦略を取り、カベルネの収穫開始は10月11日で、これはラグランジュで最も遅い収穫開始日となっています。カベルネ収穫のピークは16、17日で、10月20日に収穫を終了しました。遅い収穫のハプニングとして、10月18日未明の厳しい冷え込み(-3℃)により、低地の畑で収穫された朝方の葡萄は何と0℃で搬入されました。昨今の醸造技術の一つである、クーリングマセレーションのまさに天然版という感じでしょうか。

こういった天候の恵みと我々の情熱がギュッと詰まった今年の品質が、ヴィンテージ2009と年子の大器となることを期待しつつ、今日の報告を終わります。

見事なまでに健全で熟した果粒が小さなカベルネ・ソーヴィニオン
見事なまでに健全で熟した果粒が小さなカベルネ・ソーヴィニオン
7〜9月の乾燥で、水捌けの良すぎる畑では早期の落葉も見られた
7〜9月の乾燥で、水捌けの良すぎる畑では早期の落葉も見られた
今年から始めた、「カジェット」と呼ばれる小容量コンテナでの収穫
今年から始めた、「カジェット」と呼ばれる小容量コンテナでの収穫
果房が潰れないようトラクターで慎重に運ばれるカジェット
果房が潰れないようトラクターで慎重に運ばれるカジェット
葡萄栽培研究室、ガイゼンハイム大学留学、ロバート・ヴァイル醸造所勤務、ワイン研究室、原料部、ワイン生産部課長を経て、2004年6月よりシャトー ラグランジュ副社長。2005年3月より同シャトー副会長。  
現在シャトーラグランジュの販売は(株)ファインズで行っております。
詳しくは(株)ファインズのホームページをご覧下さい。 http://www.fwines.co.jp/
 
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