連載

ワイナリー便り:シャトーラグランジュ便り
2010年9月21日 9月の好天は天国?地獄?

理想的な天候に恵まれた7月の効果で、春先からの生育の遅れをかなり取り戻したことは前号でご報告しました。続く8月の平均気温は平年並みでしたが、朝夕の温度はまるで高原のような冷涼な夏となりました。8月の日照時間は平年を5%上回る253時間で、降水量はわずかに17mmと、7月の15mmに続く極度の乾燥となりましたので、葡萄果は病害のない健全な状態を維持できています。ベレゾン(果皮の着色と水回り)の終了は例年より遅めではあるものの、9月以降の天候がよければ、かなりの良年が期待できるレベルにまでなってきました。順調に行けば、メルロは9月下旬、カベルネは10月上旬の収穫開始となりそうです。
一方、白の収穫は昨年より5日遅れとなる9月13日に開始しました。ソーヴィニヨン・ブランは涼しく乾燥した夏の恵みを享受し、果実香の強いワインになる事が期待できそうです。

こういった気象概況説明から入りますと、今回のタイトルを見て首を傾げられる方も多いかもしれません。『ワインに携わる人なら誰でも9月の好天を望むだろう!』と叱られそうですが、実は9月10日前後がどうぞ涼しくなりますように、と期待している人が毎年約一万人もメドックへ押しかけるのです。
そうです、メドックマラソンの季節がまたやってきました。今年で26回目を迎えるメドックマラソンは、世界36カ国からの2,500人の外国人を含む8,750人が参加し、9月11日に行われました。8,500人を上限と制限しているのに応募者は増加の一途を辿っていて、競争倍率は年々高まってきています。今年の海外からの参加者では、日本からの参加者が240名の一大グループとなり注目を集めました。サントリーワインインターナショナル(SWI)&ファインズからも5名の選抜メンバーが参加し、この数字に貢献しています。

さて、気になる9月11日当日の天気はと言いますと、何と好天すぎて29℃の酷暑となってしまいました。9月前半は好天ながら日中でも25℃前後の快適な日々が続き、11日当日のみが29℃で、翌12日からはまた25℃前後に戻るという、まさに天の悪戯のようでした。

この天の悪戯を恨めしく思った参加者の一人に、実は私も含まれています。以前から一度は参加してみたいと思っていたものの、痛風(職業病?)を抱え、医師からは血液濃度の上がる激しい運動は禁止と言われ躊躇していたのですが、今年、節目となる○○歳を迎える記念に、一念奮起してみました。
5月頃からトレーニングを開始し徐々に負荷を強めていくと、体脂肪はみるみる下がり、なんと学生時代にスポーツをしまくっていた頃なみにウエストは絞り込まれました(筋肉が落ちただけだろう・・・などという心ないコメントは聞こえません)。あとは当日さえ涼しければ・・・と祈っていたのですが、まあ世の中、こんなもんでしょう。
幸い、明け方は13℃と寒いぐらいで、スタートの9時半でも16℃と心地良い気温でしたので、涼しい午前中に出来るだけ距離を稼ぐ事が鍵でした。ポーイヤックの南側を走る前半20Kmは比較的平坦で、しかも日陰があるのですが、後半のサンテステーフ側は、連続アップダウン、砂利道、日陰なし、応援閑散、の四重苦が待ち構えているからです。

いやー、それにしても暑かった!! 照り返しをまともに受ける葡萄樹の忍耐強さと、なぜ故メドックでカベルネが完熟するのかを身を持って知る事が出来ました。あんまり過酷と書くと来年の参加を検討している方は躊躇されるかも知れませんが、心配には及びません。仮装(今年のテーマはアニメのヒーロー)して走り、しかもコースでワインも振舞われるこのマラソンは、スタート時点から緊張感とは無縁で皆自分のペースで楽しむ事が出来るからです。私も予想通り後半の坂道は歩きながらになってしまいましたが、何とか4時間半でゴールまで辿り着く事が出来ました。また、シャトー・モンローズを過ぎた川沿いの37km地点からは、いきなりフランスモードに突入し、アルカッションの生牡蠣、アントゥルコットのサイコロステーキ、アイスクリームが最後のエネルギーを与えてくれます。さすが、フランス・・・ですね。

今回の便りを見て興味をもたれた方は、是非このいかにもフランス的なイベントをご自身で体験し、メドックの素晴らしさを発見(or再発見)してみてはいかがでしょう。ただし、マラソン当日以外は好天が続く事を、一緒に祈念してくださいますようお願い致します。

好天の中での白の収穫風景
好天の中での白の収穫風景
健全に熟し収穫を待つばかりのセミヨン
健全に熟し収穫を待つばかりのセミヨン
スタート地点でSWI&ファインズの選抜メンバーと(全員、見事に完走!!)
スタート地点でSWI&ファインズの選抜メンバーと(全員、見事に完走!!)
立ち止まってラグランジュを背景に記念撮影をするランナーが目立ちました
立ち止まってラグランジュを背景に記念撮影をするランナーが目立ちました
暑さでヘロへロの41km地点の筆者
暑さでヘロへロの41km地点の筆者
葡萄栽培研究室、ガイゼンハイム大学留学、ロバート・ヴァイル醸造所勤務、ワイン研究室、原料部、ワイン生産部課長を経て、2004年6月よりシャトー ラグランジュ副社長。2005年3月より同シャトー副会長。  
現在シャトーラグランジュの販売は(株)ファインズで行っております。
詳しくは(株)ファインズのホームページをご覧下さい。 http://www.fwines.co.jp/
 
連載トップへ戻るバックナンバー一覧へ