連載

ワイナリー便り:シャトーラグランジュ便り
2008年2月14日

2007年のアサンブラージュ(ブレンド)が終了しました。2007ヴィンテージの特徴ですが、(1)涼しい夏を感じさせない見事に熟したタンニンが特長で、(2)ボリューム感としては2006ヴィンテージのほうが圧倒的であるものの、タンニンの質は心地よいニュアンスに富んでおり、2006年と比べてもタイプが異なるというだけで甲乙つけがたいです。厚みのあるワインが好みの方には線が細く感じられる可能性はあるものの、完熟したカベルネが醸し出す繊細で品のあるタンニンはたいへん心地よく、個人的には満足のいく仕上がりとなりました。あとは春のプリマー試飲の時期にどういう評価を受けるのか審判を待つばかりですが、巷では2007ヴィンテージはパーカー好みの年ではないなどの噂も飛び交っているのが少々気になるところではあります。しかし、どういう結果であれ、チームメンバー間では難しい年をやりきった達成感が共有されており、今は静かに審判を待つ心境です。

ワイン造り作業も一段落を迎えましたので、今回は話題を変えて、久しぶりにボルドーワイン市況に関して触れたいと思います。2002年ごろは『業界の危機』とまで囁かれていたボルドーワインの市況を、1万haの減反と50万hlの過剰ワイン蒸溜で乗り切ろうとしている時代でした。さて3年後、特に2005ヴィンテージの恩恵を受け、市場は変わったのでしょうか?

答えは『はい&いいえ』です。ボルドーワインの輸出市場は、一言で説明するなら完全な二極化と言えるからです。グランクリュの空前の高価格は既にご承知のとおりで、いまだに市場在庫が底をついた状態が続いています。一方で、4ユーロ/本以下の価格帯のワインは対前年比で10%以上売上数量が落ちることが、ここ5年以上継続しており、いまだに底打ちとは言えない状況が継続しています。

それではここで質問です。(1)ボルドーワインの輸出比率は生産全体の何%でしょうか?また、(2)輸出ワイン全体の中でEU諸国以外への輸出は何%でしょうか?これに答えられる方は本物のボルドーオタクかもしれません。答えは、(1)が34%、(2)は32%です。つまり、ボルドーワインが欧州域外に輸出されるのは、この数字を掛け合わせた10%程度しかないのです。意外に思われませんでしたか? 輸出のイメージが強い理由は、輸出比率80%を誇るグランクリュワインによってもたらされたものであり、ボルドーワイン全体では、欧州域内、特にフランス国内が主な消費地であるわけです。そしてその低価格帯ワインの主な消費国であった欧州域内の各国でチリやオーストラリアといったニューワールド産ワインに10年以上の長きにわたって押しまくられているというのがボルドーワインの実情なのです。この間、フランスサイドも手をこまねいていた訳ではなく、ヴァン・ド・ペイの新規導入、オークチップの原則利用認可、等々、新しい試みはされているのですが、こういった手法でニューワールドワインと戦うことが、本当にボルドー全体にとってプラスとなるのか、私には判断できません。ブランドビジネスでは世界の先端を歩むフランス人にとっても、やはりこのテーマは簡単ではないようです。 とにかくサイは投げられましたので、結果が吉と出るのか、これもあとは審判待ち・・・ですね。

ぶどう栽培研究室、ガイゼンハイム大学留学、ロバート・ヴァイル醸造所勤務、ワイン研究室、原料部、ワイン生産部課長を経て、2004年6月よりシャトー ラグランジュ副社長。2005年3月より同シャトー副会長。  
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