連載

ワイナリー便り:シャトーラグランジュ便り
2007年9月13日

前号で暑い夏の日差しが待ち望まれると記しましたが、どうやら本格的な暑さを迎えることなく、2007年の夏は過ぎていきそうです。
7月の平均気温は平年を1.1度下回る19.7度。最高気温が30度を超えた日は3日間だけでした。8月上旬はやや回復したものの、20日以降はまた雨の日が続き、最高気温が30度を超えた日はやはり3日のみ。平均気温も平年より1度ほど低くなっています。
また、最も品質に影響を及ぼすぶどう生育期間の日照時間については、5月から7月までの通算で平年比20%減となりました。
雨に関しては摘葉や薬剤散布など、きめ細かい畑の管理を行なうことで、病害を最小に抑えることはできますが、日射量だけは天からの授かりものであり、我々にはどうしようもありません。これから収穫期までの大事な1か月が、恵みの天候となることを期待しています。偉大な年となった2000年も、8月中旬から9月いっぱい続いた好天がもたらしてくれましたので、勝負はまだこれからだと考えています。

クリュ・ブルジョア表示禁止
さて、そのような涼しい夏の中、思いがけない話題がありました。3月のワイナリー便りにてご報告したクリュ・ブルジョア表示に関して、新たな激震がボルドーを揺るがしたのです。このたび、ボルドー行政控訴院(高等裁判所級)が2003年に制定されたメドック地区のクリュ・ブルジョア新格付を無効とする判決を言い渡しました。この判決は1932年制定の格付けへの回帰、すなわちクリュ・ブルジョワの資格を剥奪された200シャトーの復帰、および2003年に制定された3段階のヒエラルキー(‹クリュブルジョア・エクセプショネル›、‹クリュ・ブルジョア・スペリュール›、‹クリュ・ブルジョア›)を廃止し、1階級に戻すことを命令したものです。
この判決を受けた公正取引委員会の出方に注目が集まっていたのですが、公正取引委員会はさらに踏み込み、『クリュ・ブルジョワ』のラベルへの表記そのものを禁止することを明言したのです。つまり2003年の新格付けが無効となった今、新たな格付けが制定されるまでは、『クリュ・ブルジョワ』そのものが存在しないとの立場を明確にしたわけです。しかし新格付け制定には、手法、メンバーなど、これから決めなければならない難題も多く、早くても数年は必要と見られています。それまでの間、一切の表示が禁止されるわけで、仮に新格付けが数年後に制定されたとしても、『クリュ・ブルジョワ』という表示の持つブランド価値が損なわれることは避けられない状況です。既に市場に一部出回っているヴィンテージ2005は交渉により認められる可能性が残っているものの、これも予断を許さない状況ですので、今後の動きに注目していく必要があります。

ぶどう栽培研究室、ガイゼンハイム大学留学、ロバート・ヴァイル醸造所勤務、ワイン研究室、原料部、ワイン生産部課長を経て、2004年6月よりシャトー ラグランジュ副社長。2005年3月より同シャトー副会長。  
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