- 水
- 生物多様性
水と生き物たちの命を未来につなぐ
「天然水の森 阿蘇」で実践するネイチャー・ポジティブ活動【前編】
サントリーは、様々な製品を「良質な地下水=天然水」を原料にしてつくっています。天然水は、サントリーの事業活動の生命線なのです。
ならば、その生命線を守るのは当たり前ではないか。そんな思いから始まったのが、「サントリー 天然水の森」です。この活動は、今から20年以上も前に、ここ熊本県・阿蘇でスタートしました。そして現在では16都府県27か所、総面積12,000ヘクタール超に広がり、国内工場で汲み上げる地下水の2倍以上の水を、工場の水源涵養エリアの森で育んでいます。そして良質な地下水を育む森は、同時に生物多様性に富んだ森でもあります。
今回は、2005年から水源涵養活動に取り組み続けている、サントリーホールディングス株式会社 サステナビリティ経営推進本部天然水の森グループ 専任シニアスペシャリスト 三枝直樹が、「サントリー 天然水の森 阿蘇」で地域社会とともに取り組んでいる、水と生き物たちの命を未来へつなぐ活動を、前・後編にわたりご紹介します。
後編は『水と生き物たちの命を未来につなぐ「天然水の森 阿蘇」で実践するネイチャー・ポジティブ活動【後編】』をご覧ください
「サントリー 天然水の森」はじまりの地、阿蘇
豊かな地下水を育む森は、どんな森かご存じですか? まず注目すべきは土です。いい森では、土がスポンジのようにフカフカしていて、降った雨をしっかり受け止めて地下へしみこませてくれます。そして、そのフカフカな土を育ててくれるのは、森にすむたくさんの生き物たちなんです。様々な木々が落とす落ち葉や枯れ枝が地面に積もると、それを分解してくれる微生物や、ミミズなどの土壌動物が土を柔らかく耕してくれます。こうして栄養豊かないい土ができると、地表を草や低木が覆いはじめ、今度は、それを食べる虫や、その虫を餌にする小鳥や小動物が集まり、さらにそれを餌にするキツネやテン、タカやワシなどといった大型の生き物もやってくる。こうして、豊かな生態系が育まれていくのです。そして、生物多様性が豊かな森ほど、土はフカフカになり、水を育む力も高くなる。いい森というのは、あらゆる生き物にとって暮らしやすい森なんですよ。
「サントリー 天然水の森 阿蘇」の土を触ってみると、スポンジのような感触で柔らかい。
「サントリー 天然水の森」の活動は2003年、ここ阿蘇からはじまりました。活動当初は、どのような整備が地下水涵養につながるのかまだ明確でなかったので、ほとんど手探り状態でした。そこで様々な分野の研究者の方々にご協力をお願いして、試行錯誤を続けてきました。その結果、今ではようやく科学的な根拠のある整備をしていると、自信を持って言えるようになってきました。研究の結果分かった「地下水涵養の鍵」はシンプルに2つ。健全な土壌を育てるためには、生物多様性の豊かな森にしていくことが最も重要だということ。そしてもう1つは、密になりすぎている人工林などを適度に間伐することで、森林からの蒸発散量をほどよくコントロールするということです。ですから、「この花が好きだから植えてみよう」とか、「みんなが集まれる広場をつくりたいから木を切ろう」といった発想ではなく、科学的な根拠と調査データをもとに判断し、水源涵養と生物多様性の二本柱が成り立つ森づくりに取り組んでいるんです。
ヒノキがぎっしり生えている人工林(左)では地面に日光が届くように間伐作業を行う。明るくなった森(右)にはたくさんの生き物たちが集まり、土がフカフカになって、地下水の涵養力が高まっていく。
森から田んぼへ──流域全体で水を育む
阿蘇での地下水を育む取り組みにはユニークなものもあります。「冬水田んぼ」です。これは冬の休耕期に田んぼに水を張り、地下へしみこませるというもの。「天然水の森 阿蘇」の下流域にあたる益城町の水田では、2010年から地元農家の皆さんにご協力頂き、この活動に取り組んでいます。
森でしみこんだ水は地下深く浸透していきますが、その一部は地表に湧き出て川になり、最終的には海へ流れ出ていきます。益城町の「冬水田んぼ」は、「天然水の森 阿蘇」や周辺の森から湧き出て川となった水を、下流にある田んぼに張ってもう一度地下へしみこませる。つまり森と田んぼで二重に水源涵養をしているんです。ここまでこだわって地下水を涵養しているのは、熊本が地下水の豊かな「水の国」だからです。熊本市は、70万人規模の都市でありながら、水道水の100%を地下水でまかなっている日本でも唯一の地域です。サントリーも地域の一員として地域全体の地下水の流れを調査したうえで、自社工場のためだけでなく、流域全体の地下水保全に貢献できるように、「天然水の森 阿蘇」と「冬水田んぼ」での涵養活動を推進しているのです。その規模は「天然水の森 阿蘇」が約420ha(サッカーコート約600個分)、「冬水田んぼ」は約13ha(同約19個分)になります。
水の持続可能性を追求することが、生物多様性の再生につながる
もともと「冬水田んぼ」は、地下水を育むための活動として始まりました。しかし、冬の間も田んぼや水路に水のある状態が続くことで、そこにさまざまな生き物たちが戻ってくるようになりました。水辺には昆虫やカエルが集まり、それを餌にする生き物たちもやってくる。そうやって、生態系が少しずつ豊かになって「冬水田んぼ」が生物多様性の再生にもつながる取り組みになってきました。
現在は、専門家による生き物調査も継続的に行っています。これまでに様々な水辺の生き物が確認され、水辺環境が少しずつ豊かになってきています。地元の小学校の子どもたちも調査に参加していて、地域ぐるみで自然環境を見守る取り組みにもなっています。そうした歩みのなかから、水と生き物たちの未来につながる新たな挑戦も生まれています。
(後編に続きます)
後編は『水と生き物たちの命を未来につなぐ「天然水の森 阿蘇」で実践するネイチャー・ポジティブ活動【後編】』をご覧ください
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