連載

ワイナリー便り:シャトーラグランジュ便り
2020年10月5日 2020年の収穫を終えて

秋晴れの2020年9月16日早朝、醸造所横にあるぶどう受入エリアで、全ての機械のスイッチが押されました。現場は轟音が響き渡ります。いよいよ赤ワイン用ぶどう収穫の始まりです!

この日ばかりは、職場の上下関係も、フランス人が大好きな長い立ち話も一切ありません。皆の目は真剣そのもの。一年に一度の、最もエキサイティングな季節の始まり。私たちの気持ちも大いに高まります。

まず収穫を始めるのはメルロです。メルロはカベルネ・ソーヴィニヨン、プティ・ヴェルドよりも早く成熟が進むため、最初に収穫します。今年のぶどうは粒が小さく、とても果皮が厚く、幸いにもシャトー ラグランジュのぶどうは健全で病気が出る気配がありませんでした。そこで、私たちは9月後半から天候が崩れていくことは分かっていましたが、慌てずに、一つ一つの区画毎に丁寧に観察を続け、ぶどうが熟すのを待ちました。最適な収穫タイミングを見極め、周辺シャトーよりやや遅れて収穫を進めていきました。メルロの収穫を終えたのは、9月23日でした。
周辺のシャトーが雨、そして病気の心配から、メルロに続いてカベルネ・ソーヴィニヨンの収穫を推し進める中、私たちは「まだカベルネは熟していない」と判断し、9月24日の木曜日からは一旦収穫をストップ。とはいえ、その日から強い雨の日が続き、私は自宅でドキドキしながら週末を過ごしました。とても長く感じた数日間でした…

そして28日、いよいよカベルネ・ソーヴィニヨンに取りかかります。幸いにもそれから4日間は天候にも恵まれ、一時15℃前後まで下がっていた最高気温は再び上昇し、20℃を超える日もありました。カベルネ・ソーヴィニヨンの成熟はさらに進み、私たちの待っていた「収穫のベストタイミング」が訪れました。多い日は一日に200人を超えるスタッフを投入し、一気に主要な区画の収穫を進めました。そして、10月2日、シャトー ラグランジュの103区画全ての収穫が終わり、畑のぶどうは全てタンクに入りました。あっという間の2週間、私たちのフェスティバルは打ち上げとなりました。

現時点では、まだワインの品質について述べることはできませんが、ラグランジュのスタッフが想いを込めて育み収穫したぶどうは、今も順調にアルコール発酵をしています。

ワインは天候の影響をとても強く受けます。天候の良い年も、天候の悪い年もありますが、どんな年であっても私たちのやるべきことは変わりません。天から授かったテロワール、そして長い歴史の中で引き継がれてきたテロワールに光を当て、この地で生み出せる最高のぶどう、そして最高のワインをつくることです。ぶどう、ワインの生産は、人の関与がなければできません。従って、それぞれのシャトーが目指す「最高のワイン」は、そこで働く我々の価値観、信念が盛り込まれたものとなります。
今年、私たちは自分たちを信じ、強い信念を持って、雨が降ることが分かっていても周辺シャトーよりも収穫を遅く進めました。雨の影響よりも、ぶどうの成熟を待つ方が良いと信じたからです。結果は、まだわかりませんが、今年やれることはやりきりました。2020年のラグランジュを、楽しみにしていて下さい。

写真1:収穫直前のカベルネ・ソーヴィニヨン
写真1:収穫直前のカベルネ・ソーヴィニヨン
写真2:ぶどうが次々と運び込まれるぶどう受入エリア
写真2:ぶどうが次々と運び込まれるぶどう受入エリア
写真3:アルコール発酵中に行われる作業“ルモンタージュ”
写真3:アルコール発酵中に行われる作業“ルモンタージュ”
写真4:収穫、醸造中も多くのプロフェッショナルが見学に来ます。
写真4:収穫、醸造中も多くのプロフェッショナルが見学に来ます。
シャトー ラグランジュ
桜井楽生(さくらいらくさ)

登美の丘ワイナリー醸造責任者(2009〜2012)、ボルドー大学研究員(2012〜2015)、ワイン生産研究本部課長を経て、2020年よりシャトー ラグランジュCSO。ワイン醸造技術管理士(エノログ)

 
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