連載

ワイナリー便り:シャトーラグランジュ便り
2015年10月22日 待望のグランミレジム??

5月のワイナリー便りから間が空いてしまいましたが、初夏から秋へと期待通りの天候に恵まれ、2010年以来の待望のグランミレジムへの期待が高まってきました。ラグランジュでは白の収穫は9月2日、赤も9月21日から開始されました。例年より5日ほど早い収穫開始です。これは記録的な6,7月の好天によるもので、6月13日から7月末までの一ヶ月半の降水量はわずかに15mmと砂漠並みの降水量でした。その間、40℃近い猛暑が何度も襲ってきたのですが、夜は気温が下がり、葡萄にとっては恵まれた気候となりました。猛暑となった2003年を思い起こして今年の品質を心配する声もありましたが、夜温が下がらなかった2003年とは明らかな違いを感じます。
グランミレジムかどうかは、本来は熟成を経たワインを口にしないと判りません。プリムール時点の若いワインで判断するのも難しいのですが、ワインになる前に天候からその可能性を判断しようという試みを、ボルドー大学のデュブルデュー教授が行っています。教授の説では、グランミレジムになるには5つの条件を満たすことが必要で、どれか一つでも欠けたらグランミレジムにはならないとの事。過去の検証ではこの説がすべて当てはまっていて、業界では説得力のある解析と見なされています。以下がその5つの条件です。

① 開花が早めに始まり、しかも均一に進み、開花期間の気候に恵まれること。
② 結実期が乾燥した気候で枝の生育が抑制されること(ただし生育が止まってはいけない。)
③ 着色の始まるヴェレゾン期(通常7月末)の一週間前には枝の生育が止まっていること。
④ ヴェレゾン期以降、好天と適度な降雨が8月末まで続くこと。
⑤ そして8月下旬から収穫まで、好天とお湿り程度の雨に恵まれること。

教授は、この中で最も重要なのは③だと言います。果実に光合成の養分を蓄えるには枝の生育が止まっている必要があるからです。タンニンの質を決めるのは②の条件で、これも重要なポイントと指摘しています。2015年は既に①〜④の条件はすべて満たしました。唯一微妙なのが⑤の収穫期までの天候です。9月上旬は好天でしたが、9/12-18まで約一週間、時々強いにわか雨を含む天候不順が続きました。その後19日からは好天に恵まれ、メルロは収穫日和の中で収穫できました。しかしカベルネの開始に合わせるかのように10月3・4日と二日で50mmの降水量を記録し、10/5-7の軽いにわか雨も入れると5日連続での降雨となってしまいました。幸い夏の猛暑で果粒が非常に小さく果皮が分厚かったため、水を吸っても玉割れは見られませんでしたが、どのシャトーも収穫のピッチをあげることとなりました。頭をよぎったのは2006年の経験です。2006年は、9月10日時点では2005年を超えるグランミレジムになることが期待されていました。しかし9/10-16日にかけての降雨で玉割れが始まり、収穫を早めざるを得ませんでした。かくして2006年はタンニンのしっかりした素晴らしい良年ではあるもののグランミレジムの仲間には入れなかったのです。

カベルネの収穫は10月12日に終了しました。果たして今年の収穫期の天候は5番目の条件を満たしたのか・・・次回のワイナリー便りでご報告します。

好天の中で収穫された完熟したメルロ
写真1:好天の中で収穫された完熟したメルロ
収穫初日のカベルネ・ソーヴィニヨン
写真2:収穫初日のカベルネ・ソーヴィニヨン
10月上旬の天候不順の後でも健全な状態を保ったカベルネ・ソーヴィニヨン
写真3:10月上旬の天候不順の後でも健全な状態を保ったカベルネ・ソーヴィニヨン
シャトー ラグランジュ
椎名敬一

葡萄栽培研究室、ガイゼンハイム大学留学、ロバート・ヴァイル醸造所勤務、ワイン研究室、原料部、ワイン生産部課長を経て、2004年6月よりシャトー ラグランジュ副社長。2005年3月より同シャトー副会長。

 
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