連載

ワイナリー便り:シャトーラグランジュ便り
2012年4月20日 ヴィンテージ2011プリムール

4月になりました。3月後半の陽気のおかげで、ぶどう樹の活動も早まり、もう今年の新芽が出始めました。
ボルドーでの、この時期の大きなイベントといえばもちろん、プリムール週間です。プリムールというとボジョレーヌーヴォーなどのすぐに飲んでしまう新酒を思い浮かべられる方もいらっしゃるかもしれませんが、長熟のボルドーワインにもプリムール=新酒の時期が当然あります。前年に取れたぶどうが、主発酵とマロラクティック発酵を終え、樽での熟成が始まったこの時期は実力を測るのに最適なタイミングなのです。毎年いろいろな場所でテイスティング会が開かれます。それらの会を目指して、世界各国からプロフェッショナルの人々が集まるのですが、今年は4,000人を超えたといわれています。数多くのプリムールのテイスティング会の中で一番伝統があって、規模も一番大きいのが、ボルドーのグランクリュ協会UGC(Union des Grands Crus de Bordeaux)が主催して行うイベントです。例年、地域ごとに7か所の会場に分かれてテイスティングが行われますが、今年、実はその一つがシャトー ラグランジュでした。ラグランジュが会場に選ばれるのは、サントリーが1983年に経営権を取得して以降は、1989年に次いで2回目、実に23年振りになります。しかも7つの会場のなかでも最も参加シャトーが多く、AOCサンジュリアン、AOCポーイヤック、AOCサンテステフのグランクリュワインが、ずらりと並びます。
会の運営にはテイスティングの会場のほかに昼食の会場が必要です。ラグランジュには樽熟庫が3つ並んで建っているのですがそのうちの1つをほぼ丸々使う形となりました。並んでいた樽とその土台を全て移動し、床にカーペットを敷き詰めてテーブル等を並べ、十分な広さのテイスティング用および昼食用スペースが出来上がりました。(※写真1、写真2:参照)
そして、いよいよ4/3から4/5まで3日間にわたるUGCプリムールが始まりました。開始直後から会場には多くの来場者が訪れ、めいめい各シャトーの2011年ヴィンテージを評価しました。また昼食時にはテーブルはすぐに満席になり、さらには食事待ちの人々が列をなしていました。(※写真3、写真4:参照)ちなみにランチで提供されたワインは、レ ザルム ド ラグランジュ2011、レフィエフ ド ラグランジュ2005、そしてシャトー ラグランジュ2000という顔ぶれで、たいへん好評を博していました。
普段はラグランジュの現場で働くスタッフも今回は皆、駐車場での誘導係、昼食会場での受付、ワインのサーヴ係などに変身して大活躍です。(※写真5:参照)
今年のプリムールですが、実際の参加人数は昨年よりも約10%減という結果でした。特に昨年いたるところで見かけられた中国からの参加者の減少が目立ちました。パーカーが2011年ヴィンテージの品質にがっかりした、というコメントが影響したのか、もしくは中国経済の減速の影響があったのかもしれません。
実際のワインの品質は、偉大なヴィンテージであった2010年、2009年と比較するとやや小粒な印象を受けるものの、全体的にはバランス良くきれいにまとまった、心地良くエレガントなワインに仕上がっているというのが個人的な印象です。
2011年の気候条件を振り返ると、まず春先の高温と乾燥により開花が平年より2週間早く、ぶどうの生育が順調に進みました。が、その後、7月の低温と降雨、さらに8月後半から9月前半の降雨と雹で早い収穫を余儀なくされるなど、結果的にぶどう造りには難しい条件であったのは確かです。春先からの貯金(早い成熟と乾燥による収量低下)で品質が確保できたという要素はありますが、収穫期の難しい条件の中、それでも皆、完成度の高いワインを仕上げてくるということに、栽培、醸造技術の進歩とボルドーのワイン造りに携わる人々の底力を感じました。

さて、私はこのたび、日本に帰国して再び山梨県のサントリー登美の丘ワイナリーでワイン造りに携わることになりました。
昨年秋から短い期間の代打でしたが、ここまで読んでいただいた方、最後までお付き合いいただきありがとうございました。シャトー ラグランジュの現場で学んだことのうち、技術的なポイントはもちろんですが、ここまで数回ご紹介させていただいたワイン造りにおけるこだわりや、作業の質について妥協しない姿勢、いわば「プロの矜持」を自分の中でも大切にして、良いワイン造りに励んでいきたいと思います。

凧糸に沿って樽の端を合わせていく
準備が整った前日のテイスティング会場く(※写真1)
特製の器具を使って2段目の樽の位置合わせを行う
同じく前日の昼食会場(※写真2)
セラーに美しく並んだ樽
来場者で賑わうテイスティング会場(※写真3)
旧レセプションのぶどう柄タイル
昼食会場のテーブルは満席(※写真4)
ぶどう柄のレセプションのアップ
引っ切り無しにワインをサーヴするラグランジュのスタッフ(※写真5)
篠田健太郎
ワイン生産研究本部、登美の丘ワイナリー等を経て2009年9月よりボルドー第二大学醸造学部に留学中。
 
現在シャトーラグランジュの販売は(株)ファインズで行っております。
詳しくは(株)ファインズのホームページをご覧下さい。http://www.fwines.co.jp/
 
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