連載

ワイナリー便り:シャトーラグランジュ便り
2011年04月26日 ヴィンテージ2010プリムール試飲会

あまりに突然に飛び込んできた信じがたい大災害の情報に、未だ実感を持てずにいるのはフランス人も一緒の様です。ラグランジュのメンバー一同からも、『我々フランス人が心を痛めている事と励ましの気持ちを持ち続けている事をぜひ日本の皆さまに伝えて欲しい』とのことでしたので、まずはこの誌面を借りてお伝えしたいと思います。また、恒例のユニオン・デ・グランクリュ主催のプリムール試飲会が4月5日〜7日に執り行われ、そのハイライトとなる6日夜のコマンダリー・ド・ボンタンの晩餐会でも、冒頭の会長挨拶でクリューズ会長から『われわれコマンダリーメンバー一同は、日本のワイン文化立ち上げ時からの長い友人として今回の災害に心を痛めており、友人の心の支えとなれるよう何か出来る事がないか考え続けている。』と言及して頂きました。会場に世界中から集まった600名を越す参加者からも、このスピーチに暖かい拍手が送られていました。同様にカーズ前会長からも、暖かい個人的なメッセージを頂いたことを併せてお伝えしておきます。

世界66ヶ国から5000人を超える参加者で熱気に満ちたプリムール試飲会でしたが、日本からの参加予定者では出張をキャンセルされた方が多かったようです。試飲会場、各種の晩餐会の場でも、今年は日本人の方に出会うことは極端に少なかったように感じました。対照的だったのは、中国からの訪問者の急増です。昨年の急増で既に市場の話題となったのですが、今年は更にその姿が至る所で目立っていました。これまで中国のバイヤーはプリムールを買わないと言われて来ました。しかしネゴシアン情報では、今年は間違いなくかなりの数量をプリムールで買おうとしているとの事です。さらに注目すべき情報としては、これまでラフィットに集中していた中国のトレンドがここ数カ月で微妙に変化してきているようです。手の届かない価格になったラフィットより、3〜5級クラスを探す動きが徐々に強まってきている様子で、<ラフィットを買う人=成金でワインの初心者>と小馬鹿にする風潮も出始めているとの事でした。あくまで上海など一歩先んじた市場での変化の兆しというレベルの話のようですが、中国市場がかなりのスピードで次の段階に移行しつつあるという、興味深い情報ではあります。
注目の試飲会でのヴィンテージ2010への評価ですが、2009ほど均一ではなく、スタイルも異なるものの、優良シャトーものに関して言えば品質レベルは2009と双璧をなすレベルとの声が多く聞かれました。スタイルとしては2009より長期熟成タイプとの評価がほぼ確立したように思われますので、そのスタイルが買いかどうかの判断材料として、皆パーカーノートが出るのを首を長くして待つ事になるのでしょう。

今年のプリマー期間は別の意味でも象徴的なものとなりました。2月以降暖冬が続き3月も平年の平均気温を1.4℃上回る暖冬となった事から、春の草花は例年より異常に早い萌芽・開花となっています。しかし4月に入ってからの、この期間中の好天は異常でした。試飲会初日、5日の24℃ですら驚いたのですが、続く6日7日とそれぞれ28℃、29℃まで上がり、Tシャツでも汗ばむほどの夏日となりました。4月後半には30℃を超える事もあるボルドーですが、4月初旬にこれほどの暑さが長く続くのは珍しいと気象庁もアナウンスしていました。
『まさに中国効果での過熱がアラームされる今年のプリムールキャンペーンを象徴する気候だ』と言っていたネゴシアンがいましたが、さてどうなるのでしょうか。いずれにしても、6月下旬のVINEXPOの直前まで続く、長く熱いキャンペーンとなりそうです。

サンジュリアン、ポイヤック、サンテステーフの会場となったブラネール・デュクル
サンジュリアン、ポイヤック、サンテステーフの会場となったブラネール・デュクル
ラグランジュのスタンドには、引退したセラーマスターのレイモン氏も応援に(中央)
ラグランジュのスタンドには、引退したセラーマスターのレイモン氏も応援に(中央)
一足飛びに初夏の気候となった影響で、池の畔ではレ・ザルムの花が満開に
一足飛びに初夏の気候となった影響で、池の畔ではレ・ザルムの花が満開に
葡萄畑近くの草原も、可憐な草花でまるで絨毯の様
葡萄畑近くの草原も、可憐な草花でまるで絨毯の様
葡萄栽培研究室、ガイゼンハイム大学留学、ロバート・ヴァイル醸造所勤務、ワイン研究室、原料部、ワイン生産部課長を経て、2004年6月よりシャトー ラグランジュ副社長。2005年3月より同シャトー副会長。  
現在シャトーラグランジュの販売は(株)ファインズで行っております。
詳しくは(株)ファインズのホームページをご覧下さい。 http://www.fwines.co.jp/
 
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