サントリー ワイン スクエア

VINEXPO 2009の中と外

VINEXPO 2009が終了しました。4月第1週におこなわれたヴィンテージ2008プリマー試飲会でアメリカやイギリスからの訪問者が激減したことから、今回のVINEXPOでは早くから期待と不安の声が聞かれていました。悲観派が、『アメリカだけではなく新興市場からの訪問も期待できず、VINEXPOが失敗に終わる可能性が高い』と囁く一方で、楽観派は、『例年4月のプリマー試飲会に来ているインポーターも、VINEXPOの年は会場でプリマーサンプルをすべて試飲できるので、今年は4月の訪問を見送っただけ』というロジックで、むしろ今回のVINEXPOが昨年からの経済危機の流れを断ち切るきっかけになる、と期待しているようでした。
結果はと言いますと、両派のまさに中間に落ち着いたというところでしょうか。来場者数は47,000人と前回の7%減となった一方、新興市場、特に中国、香港を中心とするアジアからの来場者が目立ちました。ユーロに対し円が強くなった日本からの来場者も多かったようです。
会場内で連日催される様々な試飲会への参加者数は、企画ごとでまちまちでした。目玉はユニオン・デ・グランクリュ(UGC)主催のプリマー試飲会で、会場はかなりの熱気に包まれました。パーカーが高い評価を下したことも、4月のプリマー試飲会以上の熱気の理由と思われます。他の試飲会で高い人気を感じたのは、ビオワインの試飲会です。以前はビオの名前に頼っただけの生産者が品質的に不十分なワインを提供し、試飲会の名に相応しくないものが多かったのですが、今回の試飲会では全体のレベルが底上げされ、個別の生産者でも、驚きを与えてくれる生産者が散見されました。品質からかけ離れたカルト的なビオには個人的には賛同しませんが、品質を伴ったものになりつつあることは、喜ばしい事です。

VINEXPO会場の外でも、この期間には様々な催しが企画されます。代表は最終日のフィナーレを飾る花祭りです。今年はボンタン会(※1)の新グランメートル(会長)となったクリューズ氏のシャトーディッサンで1500人の招待客を集め、華やかにおこなわれました。前菜にはヴィンテージ2001ラグランジュがサーヴされる光栄に預かった事をご報告しておきます。

花祭り以外にも、グランクリュのシャトーでは昼や夜にシャトー主催のイベントがおこなわれます。ラグランジュはこれまで訪問希望者の受け入れのみでしたが、今回はセカンドステージへ向けた活動を積極的にアピールする事としました。まず、VINEXPO初日の6月21日(日)夜に、シャンパンの雄、ローラン・ペリエと協働で晩餐会をおこないました。天候にも恵まれ、中庭でグラン シエクルでの乾杯に始まり、着席後のメインにはヴィンテージ2000のローラン・ペリエのお披露目、フロマージュ(チーズ)にはヴィンテージ1985ラグランジュがサーヴされるという組み合わせです。世界中から集まった70名強の招待客にご満足して頂けたものと思います。
VINEXPO4日目となる6月24日夜には、ラグランジュ主催のカクテル・ソワレ(カクテルパーティ)もおこないました。4日目ともなると訪問者側にも疲れが出てくるため、あえてシャトー中庭での気軽なパーティーとし、カナッペや軽い食事とワインで、ラグランジュの自然感溢れる中庭を満喫してもらいました。

最後に、ヴィンテージ2009の生育状況をご報告します。前号にて、5月の降雹や低温による生育の遅れに触れましたが、5月下旬より回復した天候で、開花は均一に進み、その後の生育もこれまでの遅れを取り戻す十分なものとなりました。データを見ますと、平年と比べ、気温は5月が+1.9℃、6月は+2℃、日照時間に至っては、5月が+6%、6月が+30%とグランミレジムに匹敵する2ヶ月となりました。開花期の好天でぶどうの果房数、果粒数とも非常に多く、摘果など今後の夏季管理には注意が必要ですが、まずは良年に向けての好発進が切れたことを喜びたいと思います。

ローラン・ペリエと協働での晩餐会(中庭でのカクテルパーティ)
ローラン・ペリエと協働での晩餐会(中庭でのカクテルパーティ)
晩餐会でヴィンテージ1985ラグランジュを語るセラーマスターのレイモン氏
晩餐会でヴィンテージ1985ラグランジュを語るセラーマスターのレイモン氏
ラグランジュ主催のカクテル・ソワレ
ラグランジュ主催のカクテル・ソワレ
シャトーディッサンでの花祭りの最後を飾る花火
シャトーディッサンでの花祭りの最後を飾る花火
  • ※1 ボンタン会
    メドック、グラーヴ、ソーテルヌ地区の主要生産者、およびネゴシアンとクルチエが中心となり世界的な広報活動を行う目的で1950年に発足した会のこと