連載

ワイナリー便り:シャトーラグランジュ便り
2009年1月22日

明けましておめでとうございます。未曽有の金融危機で世界中が震撼した中での年明けとなりましたが、2009年が皆様にとって素晴らしい年となります事をお祈り申し上げます。

さて、ボルドーは年明け早々寒波が居座り、連日明け方は-5℃程度まで冷え込む厳しい寒さが続いています。1月6日には1cm程度の薄い雪化粧がみられました。こんな寒さの中でも畑では作業を休むわけにはいきません。剪定作業が粛々と進められ、2009年の豊かな実りへ向けた準備が着々と行われていきます。一方セラーでは2008年産ワインが順調にマロラクティック醗酵(※1)を終了し、アサンブラージュ(ブレンド)への準備が整って来ました。2008年は、歴史的に遅い収穫となったことから、例年では12月中旬に始められるアサンブラージュも、今年は1月中旬に開始の予定です。12月に樽から直接試飲した際には、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロともポテンシャルを強く感じさせるワインでしたので、難しいヴィンテージではあったものの、皆様に良いニュースを届ける事が出来そうな感触を持っています。どうぞご期待ください。

さて、この年末年始は、シャトー ラグランジュにとって大きな節目となりました。というのは、2008年12月で、サントリーの経営参画25周年を迎えたからです。この節目を記念して、11月上旬に東京と大阪でラグランジュ25周年の記念イベントを開催しました。11月5日に東京で行った試飲会では単独シャトーのイベントとしては異例の200名を超える参加者を得て、皆さまのラグランジュへの熱い期待を肌で感じることが出来ました。経営参画後の初ヴィンテージ1984年から2006年までをヴァーティカルに試飲して頂き、80年代、90年代、そして最近のヴィンテージと、樹齢の高まりや収穫を遅らせ完熟させたことによるスタイルの変化と、一方でベースの個性として変わらないエレガンスを感じて頂けたのではないでしょうか。

四分の一世紀というと、目まぐるしい現代にあっては感慨に耽るほどの時間かもしれません。しかし紀元前より造られ、数十年、数百年という単位で歴史が語られるワインの世界においては、ほんの一瞬の出来事とも言えます。荒れ果てたラグランジュがあるべき姿を取り戻す『復活』のステージには、20年の努力が注ぎ込まれました。前任者の鈴田氏とデュカス社長が、純粋に、そして実直に品質を追い求めてきた賜物が、紛れもない財産として私たちに引き継がれたのです。私とエイナール社長のミッションは、次の20年を『創造』のステージと位置付け、ラグランジュが所有する畑のポテンシャルの限界に挑戦することだと思っています。二つの丘に跨った115haという広大で多様性に富むテロワール、人、そして天候という気まぐれな天使が織り成すラグランジュならではの個性を持ったワインを造りあげることが出来たなら、それがラグランジュの歴史の小さな1ページになると確信しています。
創造』のステージの区切りとなる15年後に、次のランナーに満足してバトンを渡すことができる様、今年も地に足のついた地道な活動を積み重ねていこうと誓った2009年の年頭でした。

※1 マロラクティック醗酵:ワインに含まれるリンゴ酸が乳酸に変化する醗酵のこと。この醗酵により酸味が和らぎ、ワインにまろやかさが増す。

25周年垂直試飲会の様子(ファインズ社提供)
25周年垂直試飲会の様子(ファインズ社提供)
25周年垂直試飲会のセミナーで説明するエイナール社長と筆者。
25周年垂直試飲会のセミナーで説明するエイナール社長と筆者。
ぶどう栽培研究室、ガイゼンハイム大学留学、ロバート・ヴァイル醸造所勤務、ワイン研究室、原料部、ワイン生産部課長を経て、2004年6月よりシャトー ラグランジュ副社長。2005年3月より同シャトー副会長。  
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