連載

ワイナリー便り:シャトーラグランジュ便り
2008年11月13日

厳しいヴィンテージとなった2008年の収穫が、ようやく終了しました。8月の天候不順で今年の見通しはかなり厳しいものでしたが、僅かに望みを賭けた9月、10月の好天が期待以上のものとなり、最後は笑顔で収穫終了を迎えることができました。もちろん本当の品質は醗酵、樽熟成が完了するまで分かりません。しかし、この厳しいヴィンテージに於いて、我々が想定しうる以上の結果であったことには確信を持っています。

今年のラグランジュの収穫開始はメルロが10月6日、カベルネが10月13日と、平年より10日以上遅い開始となりました。最終日の10月23日と併せ、すべてがラグランジュの歴史で最も遅い記録です。記録的に遅い収穫となったぶどうの品質を支えたのは、春先以降、品質を高めるために可能なことはすべてやり切ったことによる結果であることは言うまでもありません。

昨年の2007年も非常に難しいヴィンテージで、『待つ』ことによって乗り切ったのですが、今年はあたかも昨年の再生テープを見ているかのようで、まさにフランス語で言う『デジャヴュ』そのものでした。いえ、厳密に言えば『昨年を進化させた映像の再現』という表現が正しいかもしれません。

収穫期の天候を振り返ってみましょう。前月のご報告のとおり、9月前半は8月の延長で、たいへん厳しいスタートでした。9月13日までは、9日間が雨と、日本の秋雨のようでしたが、14日以降では18日に、にわか雨があった以外、すべて晴天というすばらしい天候に恵まれました。データ上では9月の平均気温は平年比-1.2℃と涼しかったものの、日照時間+20%、降水量−27%と、月後半の好天の恵みが数字にも表れています。10月に入り、上旬に4日ほど雨があり、10月6日は雨の中での収穫開始となったものの、10月8日以降は晴天が続き、16日の1mmという軽い通り雨以外は好天の元での収穫となりました。10月のデータはまだ手元に届いていませんが、平年より日照時間はかなり多かった気がします。また快晴の早朝となった19日には−1℃を記録し、収穫されたぶどうを破砕しタンクに入れた際の温度はなんと、2℃しかありませんでした。文字通り、天然のクーリング・マセレーション(低温発酵)です。こういった初物尽くしのヴィンテージ2008がどんな仕上がりになるのか、今からたいへん楽しみです。

さて、今日はもうひとつの収穫の様子をお伝えしましょう。秋のボルドーと言えば・・・、そうです。セップ・ド・ボルドーの季節です。イタリアでいうポルチー二ですが、ボルドーでは巨大なセップが採れる事から、秋の味覚の代表として知られた存在です。日本の松茸同様、場所を知っている人以外は、簡単には採れない代物で、2004年の着任以来、何度かチャレンジしたのですが、なかなか大物はゲットできませんでした。しかし、今年はやりました!写真のように、ワインボトルに匹敵する大物をかなりの数、収穫できました。ちなみに写真3のものは、1本0.8Kgの大物でした。
さっそくオリーブオイルで炒め、さっとパセリを散らし、よく冷えたレ・ザルム・ド・ラグランジュで・・・・うーん、ボルドーに来て良かった!!  
と、今日は、収穫を終えた充実感に満ちたボルドーからのレポートでした。

10月19日撮影のカベルネ畑。収穫を極限まで遅らせる事を可能にした健全な果房。
10月19日撮影のカベルネ畑。収穫を極限まで遅らせる事を可能にした健全な果房。
同日のカベルネのぶどう果。この時期としては信じ難いほどの健全さ。
同日のカベルネのぶどう果。この時期としては信じ難いほどの健全さ。
ワインボトルに匹敵する大きさの見事なセップ。
ワインボトルに匹敵する大きさの見事なセップ。
早速、セップをオリーブオイルで炒め、冷えたレ・ザルムと・・・
早速、セップをオリーブオイルで炒め、冷えたレ・ザルムと・・・
ぶどう栽培研究室、ガイゼンハイム大学留学、ロバート・ヴァイル醸造所勤務、ワイン研究室、原料部、ワイン生産部課長を経て、2004年6月よりシャトー ラグランジュ副社長。2005年3月より同シャトー副会長。  
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