連載

ワイナリー便り:シャトーラグランジュ便り
2010年2月26日

2月中旬まで続いた欧州全体を覆った寒波も、ようやく緩んできました。メドックはボルドーに隣接しているのですが、実はボルドーとはかなりの温度差があり、ラグランジュではボルドー市内よりおよそ3〜4℃も低いことが少なくありません。従って、朝、家を出発する頃のボルドーは0℃前後でも、一時間後にラグランジュに到着する頃には-4℃程度ということがよくあります。一般的にボルドーは温暖なイメージを持たれているのですが、今年の寒波では、サンジュリアンもかなり冷え込みました。1月前半の10日間は-6℃程度が続き、しばしば-9℃まで冷え込みました。2月も-3〜-5℃程度の寒い朝が続き、温暖化はどこにいってしまったのだろうという会話がされるほどだったのですが、月末になってようやく、しかも急激に気候が変わってきました。23、24日と続けて日中には17℃まで上がり、最低気温も5℃と春先のような暖かさでした。この暖かさは1週間ほど続くようで、再度冷え込んだ後、徐々に本格的な春の到来になりそうです。

厳しい寒さの中、セラーでの作業は順調に進んでいます。1月中旬にはアサンブラージュ(ブレンド)も終わり、樽熟成の長い旅路についています。酒質に関しましては1月にご説明したとおりですので、ご参照ください。前評判通りの仕上がりになりつつあります。生産数量は、これまでどおり量より品質を追求する姿勢は貫き通しましたので、結果的にシャトーものの生産量はほぼ前年並みとなりそうです。一方で、シャトーものと遜色ない酒質の原酒がレ・フィエフに回ったことで、レ・フィエフの酒質は特筆すべきものになる可能性があります。樹齢の高まりとともに、ここ数年のフィエフの酒質には目をみはるものがありましたが、今年はこれまでの一線を越える年となるかもしれません。ぜひご期待ください。

最後に今日は、『ラグランジュの垢落とし』の写真を幾つかご覧いただこうと思います。と言ってもシャトーそのものの話ではありません。シャトーの絵の一角を飾る、池の話です。ラグランジュと聞くと、シャトーを水面に映し出す傍らに、白鳥が優雅に羽を休める池の光景が、まず最初に思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。実は私もその一人で、2004年より導入したサードラベルの名前をLes sygnes de Saint-Julien(サンジュリアンの白鳥)と名付けたのも、そして刷新したラグランジュのホームページで白鳥のモチーフを強調したのも、もちろんこの強い印象からでした。

この池は1983年当時、現在の1/3程度しかなかったのを拡大し、今日の姿となったのですが、その後四半世紀、まったく手を入れませんでしたので、池の底には小川から流れ込む砂利と落葉などが堆積し、そろそろ大掃除が必要なタイミングに差し掛かってました。そこで、昨年秋より大規模な底さらい工事に着手したのです。 余談ですが、2003年に最後の白鳥が野犬(もしくは狐?)に食べられてしまって以来、実は池の主は不在となっていました。何度か白鳥を放すことを検討したのですが、夜、白鳥が安眠できる場所が必要との事でなかなか実行出来ずにいたのですが、今回の大掃除の機会はその千載一遇のチャンスでもあったわけです。ということで、池に小さな「中の島」を造ることとしました。ミニ・バードサンクチュアリとして、鳥たちの憩いの場になってくれればと期待しています。
ようやく工事も終了し、水も溜まりましたので、皆様の次回のご訪問時には、新しく生まれ変わった池の様子をお楽しみ頂けます。工事終了後の写真は意図的に掲載しませんでしたので、ご来場頂き、ぜひご自分の目でご確認頂ければと思います。

氷点下8℃の厳しい冷え込みとなった、ある冬の朝のぶどう畑。
氷点下8℃の厳しい冷え込みとなった、ある冬の朝のぶどう畑。
池底の大掃除のために、水を抜いた状態の池。
池底の大掃除のために、水を抜いた状態の池。
ショベルカーで池底に堆積した土砂を払い出す。
ショベルカーで池底に堆積した土砂を払い出す。
逃げ場を失った魚たち。50cm超の巨大鯉やウナギなど。
逃げ場を失った魚たち。50cm超の巨大鯉やウナギなど。
池横に積み上げた払い出された土砂は、トラック30杯分以上。
池横に積み上げた払い出された土砂は、トラック30杯分以上。
ぶどう栽培研究室、ガイゼンハイム大学留学、ロバート・ヴァイル醸造所勤務、ワイン研究室、原料部、ワイン生産部課長を経て、2004年6月よりシャトー ラグランジュ副社長。2005年3月より同シャトー副会長。  
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