サントリーホール Presents
伊集院光と行く! 奥深~いオルガンの世界 トーク&コンサート 第2回
1967年⽣まれ。84年に三遊亭楽太郎(六代⽬三遊亭円楽)に弟⼦⼊りし、落語家・三遊亭楽⼤として活動。87年ごろから伊集院光としてタレント活動をはじめ、ラジオ番組のパーソナリティとして人気を博す。「Qさま!!」(テレビ朝日)、「100分de名著」(NHK Eテレ)などに出演し、幅広く活躍。『のはなし』(宝島社)、『名著の話 芭蕉も僕も盛っている』(KADOKAWA)などの本も出版している。
東京藝術大学大学院修了。ドイツ国立ハンブルク音楽大学卒業。ドイツ、オランダの国際オルガンコンクールで受賞。現在、東京芸術劇場オルガニスト、豊田市コンサートホールオルガニスト、東京藝術大学非常勤講師、国際基督教大学オルガニスト。
J. S. バッハ:トッカータ、アダージョとフーガ ハ長調 BWV 564
バッハのオルガン曲といえば教科書にも載っている「トッカータとフーガ ニ短調」BWV 565が有名ですが、この作品では「アダージョ」という楽章がついています。「トッカータ」は、細かく急速な動き(パッセージ)を伴う、自由で即興的な雰囲気が特徴です。この作品の冒頭は手鍵盤のソロ(単旋律)で始まり、そのあとに足がもつれそうなほどの長いペダル・ソロが出てきます。そうしてソロの部分がやっと終わったかと思うと、オーケストラの総奏(トゥッティ)へと引き継がれ、華々しい雰囲気に包まれます。続く「アダージョ」は、ソロと伴奏という形で書かれ、異なる楽器が合奏をしているように聴こえるゆったりとした美しい音楽です。そして、軽やかなメロディー(テーマ)とともに「フーガ」が始まります。「フーガ」とは、初めに出てくるメロディーが他の声部でも追いかけ合うように出てきて、展開していく形式のことです(日本語では「遁走曲」といいます)。バッハは多くのフーガ作品を残しました。このフーガは、バッハが若いころに遠路はるばる会いに行った北ドイツの大音楽家ブクステフーデの影響を受けています。
スウェーリンク:『大公の舞踏会』SwWV 319
ここサントリーホールへ何度も足を運ばれている方々は、聞き覚えがあるかもしれません。実は、ホールのエントランスにある時報オルゴールの音楽の一つなのです。スウェーリンクはバッハよりもさらに1世紀ほど前に活躍した初期バロックの音楽家で、当時ヨーロッパ中に広く知られていました。オランダ、アムステルダムで最も古い建築物でもある旧教会でオルガニストを務めたことでも知られており、1970年代のオランダの紙幣にはスウェーリンクの肖像画が使われるほど偉大なオルガニストでした。彼は多くの鍵盤作品を作曲していますが、この作品のように、歌に基づく変奏曲も多く残されていて、コンサートのレパートリーとして欠かせない作曲家の1人です。『大公の舞踏会』は、イタリア人作曲家カヴァリエーリのオペラから取られた当時人気の旋律を使っていて、テーマの後に4つの変奏が続きます。
J. S. バッハ:『オルガン小曲集』より
「天より天使の群れ来たれり」BWV 607 「我ら悩みの極みにありて」BWV 641
『オルガン小曲集』は、30歳前後のバッハがヴァイマール宮廷在任中に作曲した46曲から成るコラール前奏曲集です。“コラール”とはプロテスタントのキリスト教会で歌われるドイツ語の讃美歌のことで、そのメロディーを使って書かれた作品を“コラール作品”と言います。この曲集はどれも比較的短い作品で、前半は教会暦に沿って、後半は様々な内容のコラールが並んでいます。表題には“教育目的として書いた”とありますが、それだけに留まらない芸術性の高い曲集です。「天より天使の群れ来たり」BWV 607は、クリスマスのコラールを使った作品で、ゆったりとしたソプラノのコラール旋律に対し、下3声は広い音域を駆け巡る動きが天使を表現しています。「我ら悩みの極みにありて」BWV 641も、コラール旋律がソプラノに置かれていますが、こちらは細かい音で繊細に装飾されています。苦しみの極限にあっても神様の救いを願い求めるという歌詞ですが、バッハの装飾の見事さに思わずうっとりとなる作品です。
エスケシュ:オルガンのための『詩曲』より 第1曲「世の始まりの水」
パリ、ノートルダム大聖堂が2019年4月に火災に見舞われましたが、昨年12月に再開されました。そのタイミングで、新たにここのオルガニストに加わったのがエスケシュです。彼は特に優れた即興演奏家として知られ、作曲家としても活躍し、世界中で彼の作品が演奏されています。現在、パリ国立高等音楽院の教授も務めています。オルガンのための『詩曲』より第1曲「世の始まりの水」は、フランス詩人の『失われた国』という詩からインスピレーションを受けて書かれました。冒頭の静かに波打つような動きと、テーマとなるメロディーが音色を変えながら、またときに激しさを伴いながら曲を通して繰り返されます。そして最後には再び神秘的な静けさを取り戻していきます。
オルガンがもつ音量の幅広さを効果的に使っているところや、合奏のように各声部を別の音色で弾くように指示してあるところなど、オルガニストとして楽器を熟知しているからこそ書ける作品となっています。古い時代の作品とはまた違った、オルガンの現代音楽の魅力を知っていただければ嬉しいです。
ヴィドール:オルガン交響曲第6番 ト短調 作品42-2 より 第5楽章
フランス人オルガニスト、作曲家であるヴィドールは、早くも26歳にしてパリ、サン゠シュルピス教会のオルガニストに就任し、生涯を終えるまで64年間務めました。この教会は、映画「ダヴィンチ・コード」でも有名になった大教会ですが、偉大なオルガン製作者アリスティド・カヴァイエ゠コルによる名器とされる大規模なオルガンを備えていることでも知られています。この素晴らしい楽器からヴィドールは10曲の『オルガン交響曲』を作曲しました。『オルガン交響曲』は、オーケストラの交響曲のような、複数の楽章で構成される大規模なオルガン・ソロのための音楽です。第6番はパリ、トロカデロ宮殿のコンサートホールに設置されたオルガンのお披露目演奏会のために1878年に作曲され、作曲者自身によって初演されました。最終楽章「フィナル」は、主要部分が何度も反復される“ロンド”という形式で書かれています。シューマンのピアノ作品『謝肉祭』の第1曲「前口上」から大きく影響受けました。弾むようなリズムと喜びに満ちた雰囲気の、きらびやかな音楽です。
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