第32回 芥川也寸志サントリー作曲賞選考演奏会

写真:芥川也寸志

日本の音楽界の発展を支えた故 芥川也寸志(1925~89)の功績を記念し名を冠されたこの賞の公開選考および演奏会は、本当の意味で「選りすぐりの」新進作曲家たちの、旬で、熱い、オーケストラ作品を聴くことができる貴重な機会。2年前の受賞者の委嘱新作発表もあわせて、日本発信の「いま」が、ここに集結します。

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第32回
芥川也寸志サントリー作曲賞選考演奏会

8/27(土) 
15:00開演(14:20開場)大ホール

ライブ配信あり

第30回
芥川也寸志サントリー作曲賞受賞記念
サントリー芸術財団委嘱作品

  • 小野田健太(1996~ )
  • 『綺羅星』2台のピアノとオーケストラのための(2021~22)世界初演
  • Kenta Onoda: Chants d’étoileurs for Two Pianos and Orchestra [World Premiere, commissioned by Suntory Foundation for the Arts]
  • ピアノ:秋山友貴/山中惇史

【小野田健太、委嘱新作を語る】
ピアノで密集した和音をがちゃん、と鳴らしたときの衝撃。ピアニストが指先に神経を集中させ、力をこめて鍵盤を勢いよく押し下げると、いくつもの弦とハンマーがぶつかり合い、その衝突は弦を振動させ、複雑な共鳴を生み出します。そのときの、火花がぱっとはじけるような、空気がびりびりと震えるような感覚に、いつも苦しいくらいに魅せられています。今回の新作ではそれを探求すべく、2台のピアノとオーケストラという編成を選びました。
作品は、ピアノがメロディの断片を積み重ねるところから始まり、そのメロディはやがて房状の和音の連なりへと変異してゆきます。オーケストラは、ピアノの音を粒状の脆い音響で支えつつ、ピアノの変化に合わせてそのかたちをさまざまに遷移させてゆきます。

[小野田健太]

第32回芥川也寸志サントリー作曲賞
ノミネート作品(50音順/曲順未定)

※曲順が下記の通り決定しました。

  • 波立裕矢(1995~ )
  • 『失われたイノセンスを追う。Ⅱ』オーケストラのための(2020~21)
  • Yuya Haryu: A Lost Innocence Chase Ⅱ for Orchestra

【作品の特徴】
失われたイノセンスをめぐる冒険

  • 根岸宏輔(1998~ )
  • 『雲隠れにし 夜半の月影』オーケストラのための(2020)
  • Kohsuke Negishi: Moonlight Hidden in the Clouds for Orchestra

【作品の特徴】
提示されたテーマや音響は、いろいろな形へと移り変わってしまいます。姿を現したかと思えば消えてしまうその儚い様子を描写しようと試みました。

  • 大畑 眞(1993~ )
  • 『ジンク』(2021)
  • Makoto Ohata: JINK

【作品の特徴】
西洋の伝統的なオーケストラという媒体に対し、配置の異化、小アンサンブル化、日本の伝統的な素材を用いること、アルゴリズムによるヘテロフォニーの「機械的」生成等を通して、その可能性を拡大する試み。

小野田健太
  • 指揮: 杉山洋一
  • 新日本フィルハーモニー交響楽団
  • 候補作品演奏の後、公開選考会(司会:沼野雄司)

選考委員(50音順):
酒井健治/福士則夫/山根明季子

協力:
(一社)日本作曲家協議会/
(一社)日本音楽著作権協会/
(特非)日本現代音楽協会

候補作品応援企画 非公式開催!

SFA総選挙
~あなたの清き、耳の一票を

恒例となった、聴衆による投票「SFA(S=サマー、F=フェスティバル、A=芥川)総選挙」を、今年も行います。

この選考演奏会を会場で聴いて、気に入った曲に投票してください。
観客による総選挙の結果は、作曲賞決定後に発表します。
写真は昨年の総選挙の結果。公演当日にロビーで掲示します。

■料金

  • 指定席 
    前売一般 2,000円/学生 1,000円
  • 指定席 
    当日窓口一般 2,500円/学生 1,500円
サントリーホール・メンバーズ・クラブ先行発売: 5月10日(火)10:00〜16日(月)
一般発売: 5月17日(火)10:00〜

※先行期間中は窓口での販売はございません。

※学生券はサントリーホールチケットセンター(WEB・電話・窓口)のみ取り扱い。25歳以下、来場時に学生証提示要。お一人様1枚限り。

サマーフェスティバル全公演セット券 20,000円

5月10日(火)10:00〜 一般発売開始
チケット取り扱い: サントリーホールチケットセンター(電話・窓口)のみ

※限定50セット

※大ホールS席/ブルーローズ(小ホール)前方中央寄りの良席。

※1回のお申込みにつき1セットまで。

有料オンライン
(ライブ)配信

  • 視聴券 1,000円
一般発売: 7月29日(金)~8月27日(土)
16:00(開演1時間後)まで
チケット取り扱い: デジタルサントリーホールサントリーホール・メンバーズ・クラブWEBチケットぴあ

※ご購入にはいずれも会員登録が必要です。
(登録は無料)

※リピート配信はございません。

作曲家

※下線つきの氏名をクリックすると、
プロフィールがご覧いただけます。

第30回芥川也寸志サントリー作曲賞受賞

小野田健太
小野田健太

第32回芥川也寸志サントリー作曲賞候補

波立裕矢
波立裕矢
根岸宏輔
根岸宏輔
大畑 眞
大畑 眞

出演者

※下線つきの氏名・団体名をクリックすると、
プロフィールがご覧いただけます。

候補作品作曲家 メッセージ〜
「候補作品作曲家に聞く
素朴な質問」

質問1)
候補作品を作曲することになった経緯と聴きどころを教えてください。
質問2)
あなたにとって最も影響を受けた、あるいはお気に入りの「音楽作品」、「作曲家」、「演奏家」は何、もしくはどなたですか?その理由もあわせてお聞かせください。

波立裕矢

波立裕矢
質問1)

現実的な経緯としては、東京藝術大学大学院修了に向けて、作品を提出する必要があったからです。
構想上の経緯としては、同年の秋に行われたオーケストラ作品の初演を経て、管弦楽について今一度考えたいと思ったのがきっかけです。
また、本作の構想の源泉は、愛知県立芸術大学在学中に作曲した自作の室内楽作品にあります。当時は未熟で書ききれなかったことを、今の自身の技術でオーケストラ作品にまとめたかった、というのが、本作の音楽上の原点になるのかなと思います。
本作の聴きどころは、曲の構造の一定の割合を占める、マーラーの《交響曲 第1番 巨人》 再作曲の部分です。
私は本作を聴くにあたって、文脈に大別して二つのレイヤー(層)があると考えています。現代の一作曲家(私)が西洋音楽、交響曲、マーラーという作曲家をどう捉え、編集したか、また、作品自体は聴く人にどのような印象を与えるのか、ということです。

質問2)
作曲家としてはモーツァルト、ブラームス、マーラー、ドビュッシー、ケックランが好きです。
モーツァルトの《ピアノ協奏曲第23番》、ブラームス、マーラーのほぼすべての作品、ドビュッシーの《第一狂詩曲》、《練習曲集》、ケックランの《リリアンのアルバム》から特に大きな影響を受けました。
戦後の作曲家では、リゲティからも最も多くの影響を受けました。
演奏家では、カルロス・クライバーやセルジュ・チェリビダッケのような指揮者が好きです。
また、現在のベルリン・フィルの首席指揮者、キリル・ペトレンコも好きです。
ピアニストだと、マルタ・アルゲリッチが好きです。

根岸宏輔

根岸宏輔
質問1)
卒業制作としてオーケストラ作品を提出したいと思い、この曲を書きはじめました。この作品を書く前に、一作オーケストラのために曲を書いたのですが、そこでの反省を踏まえ新たな作品として完成させました。
明確な旋律を予め設定し、それをもとに曲の展開を決めたので、旋律や響きがどのようにカタチを変えてゆくのか音を追ってみるのもいいと思いますし、ぼんやりと音を眺めるだけでもいいと思います。
質問2)
かなり答えるのが難しいですが、やっぱり伊藤弘之氏の音楽からは影響を受けていると思います。まず数小節音を聴いただけで誰の作品か判断できるほどの強烈なオリジナリティを持っていることと、複雑な素材を魅力的に聴かせるのは簡単なことではないので、それだけでも彼の作品には目を見張るものがあると私は考えています。

大畑 眞

大畑 眞
質問1)
本作品は、東京藝術大学作曲科4年次在学中に卒業制作として作曲いたしました。本作品においては、特殊な配置を採用したり、和楽器を編入したりすることなどによって、音響上の特性が生じるように内部で様々に構造化されています。そのような「一味違ったオーケストラ」から発せられる特殊な音響に満たされた空間に浸るような感覚でお聴きいただければ、いくらかお楽しみいただけるのではないかと思います。
質問2)
これまで、さまざまな音楽や音楽家に影響を受けて制作を行ってまいりましたが、私の中で特筆すべき出来事は、2018〜19 年に行った東北地方(主に宮城県北部)の民衆芸能・神楽の取材と研究です。この活動を通して、脈々と受け継がれてきた民衆芸能・音楽の持つ特性や、そこに見いだされる構造美に大いに魅せられました。この活動の成果として得られたことは、実際に作品の中で活用することもあります。また、その中で出会った、民衆芸能の伝承に携わっていらっしゃる方々の徹底した職人的気質に、人間的にも影響を受けたことは間違いありません。