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「サントリーホール アカデミー」トピックス

室内楽アカデミー

2018年6月「チェンバーミュージック・ガーデン」を開催して「室内楽アカデミー第4期」が修了し、9月から第5期がスタートしました。
同年11月に行われたヴォーチェ弦楽四重奏団による特別マスタークラス、毎月のワークショップの様子を取材した片桐卓也さん、山田治生さんのレポートをお届けします。

2019年3月

室内楽アカデミー第5期がスタート

山田治生(音楽評論家)

9月18日のサントリーホールリハーサル室での開講式とともに、サントリーホール室内楽アカデミー第5期(2018〜2020)が始まった。今期は、弦楽四重奏が5団体、ピアノ三重奏が2団体、計7団体がフェロー(受講生)として参加している。第4期まであった個人での参加はない。ファカルティ(講師)は、第4期と同じく、原田幸一郎、池田菊衛、磯村和英、毛利伯郎、練木繁夫、花田和加子の6名。アカデミー・ディレクターは堤剛

月2回のワークショップでは、フェローが準備してきた曲を演奏し、ファカルティからの指導を受ける。今期は、難曲で知られるバルトークの弦楽四重奏曲を持ってくる団体も多く、フェローたちのレベルの高さがうかがい知れる。
ファカルティは、それぞれにアメリカで学んだ・教えた経験を持ち、ワークショップの雰囲気は緊張感がありながらも和やか。一つの表現を押し付けるのではなく、様々な可能性が試される。強調されるのは、楽譜に書かれている通りに弾くこととイメージ力や感情表現。フェローたちは名前で呼ばれ、個として尊重される。弦楽四重奏曲のレパートリーでは、世界の檜舞台で活躍した元東京クヮルテットの3人(原田、池田、磯村)の経験値の高さが際立つ。とりわけ、池田菊衛の実体験に裏打ちされた話は非常に説得力があり、時には歌いながらの指導がわかりやすい。今期は、以前に比べて、フェローたちが他団体のワークショップを熱心に聴講しているように思われる。

5期の7団体のうち、アミクス弦楽四重奏団とトリオ デルアルテは、第4期から引き続いての参加である。
アミクス弦楽四重奏団の第1ヴァイオリン奏者、宮川奈々は、NHK交響楽団第1ヴァイオリン奏者でもある。忙しいオーケストラの仕事の合間を縫っての参加。高度かつ緻密なテクニックでこの団体をリードする。第2ヴァイオリンの宮本有里とチェロの松本亜優は第3期にも個人として参加していた。ヴィオラの山本周は第4期の途中からの参加だが、彼が加わることによって、アミクスのアンサンブルが落ち着いたように思われる。昨年のチェンバーミュージック・ガーデンではベートーヴェンの「大フーガ」を演奏した。

トリオ デルアルテは、昨年、サントリーホールとヨン・シュー・トー音楽院(シンガポール国立大学音楽学部)との協同企画によるシンガポールでのコンサートで演奏し、好評を博した。ヴァイオリンの内野佑佳子とピアノの久保山菜摘が中心となるアンサンブル。第5期ではチェロが交替し、東京藝術大学大学院の修士に在籍する河野明敏が参加している。
タレイア・クァルテットは、2014年、東京藝術大学の学生によって結成された。昨年の第4回宗次ホール弦楽四重奏コンクールで第1位を獲得するなど、既にコンクールでも実績を示している。第1ヴァイオリンが山田香子、チェロが石崎美雨。ヴィオラの渡部咲耶はアカデミーの第3期にも個人で参加していた。第2ヴァイオリンは、第5期の途中で二村裕美に交替されている。
クァルテット・インテグラは、最近、クァルテット・トイトイから名称を変更した。2015年、桐朋学園の大学生および高校生によって結成。2017年にはフィリアホールでの「山崎伸子プロデュース 輝く若手演奏家による『未来に繋ぐ室内楽』Vol.1」に出演した。三澤響果、菊野凛太郎、山本一輝、築地杏里の4人。

チェルカトーレ弦楽四重奏団は、第5期のなかで最も若いアンサンブル。東京音楽大学、東京藝術大学、東京藝大附属高校の学生によって構成されている。ヴァイオリンの関朋岳は、これまでにクァルテット・エクセルシオと共演。NHK交響楽団アカデミー生でもある。もう一人のヴァイオリン、戸澤采紀は、2016年、15歳で日本音楽コンクール・ヴァイオリン部門第1位。現在、高校3年生ながらソリストとしても活躍。旺盛な好奇心から弦楽四重奏にもチャレンジしている。第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンは曲によって交替している。ヴィオラの中村詩子、チェロの牟田口遙香は共に東京藝術大学に在学。
クァルテット・ポワリエは、桐朋学園大学の卒業生と在学生によって構成されている。ヴァイオリンの宮川莉奈は、アミクス弦楽四重奏団の宮川奈々の妹。ヴィオラの佐川真理とともに桐朋オーケストラ・アカデミーに在籍している。ヴァイオリンの若杉知怜は大学4年生。チェロの山梨浩子はNHK交響楽団アカデミー生でもある。

トリオ・ムジカは、東京藝術大学で学んだ、ヴァイオリンの柳田茄那子、チェロの田辺純一、ピアノの岩下真麻によって結成された。柳田は、英国王立音楽院と同大学でジョルジュ・パウクに師事。ソリストとして東京交響楽団や新日本フィルとも共演している。トリオとしての活動はこのアカデミーから。

すべての団体のワークショップを聴いたが、今期のアカデミーが始まった時点では、個々のフェローの室内楽経験は千差万別だと思われた。一人ひとりの楽器の技量が高いだけに、世界最高水準のファカルティのもとで研鑽を積んで、大きく羽ばたいてほしいと願う。
(学年は2019年3月現在)

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