主催公演

ホール・オペラ®
ヴェルディ:ラ・トラヴィアータ (椿姫)
(全三幕/イタリア語上演・日本語字幕付)

「ラ・トラヴィアータ <道を外した女(ひと)>」 が映し出す
ヴェルディ・オペラの真髄
(ドラマ)
ルイゾッティ率いる伝説のホール・オペラ®を、最高の歌手と共に


サントリーホールならではの空間と音響を活かし、音楽の中のドラマを最大限に楽しむオペラの表現形式として評価を確立したホール・オペラ®。今秋、5年ぶりに『ラ・トラヴィアータ』を上演します。
2004年から2010年までのホール・オペラ®を指揮し、数々の名演を残したニコラ・ルイゾッティ(指揮)は、今回の来日直前にウィーン国立歌劇場で『ファルスタッフ』と『ラ・トラヴィアータ』のタクトをとり、ムーティに続くイタリアの生んだ最高の指揮者の一人として、このオペラで満を持してサントリーホールに戻ってきます。
舞台映えする恵まれた長身と品のある艶やかな声を持ち、今、世界の歌劇場で圧倒的な存在感を放つ、チェコの新星、ズザンナ・マルコヴァ(ソプラノ)のヴィオレッタはまさに当たり役。2010年にホール・オペラ®『コジ・ファン・トゥッテ』のフェルランド役で日本デビューしたアルフレード役のフランチェスコ・デムーロ(テノール)は、イタリア人らしい天性のブリリアントなハイトーンの声とその情熱的な歌唱でヴェルディ・オペラには欠かせません。そしてゲルギエフやバレンボイムに抜擢され、ルイゾッティの信頼も厚いアルトゥール・ルチンスキー(バリトン)のジェルモン。今、世界の歌劇場で注目される最高の3傑がホール・オペラ®に揃います。
その他の配役には、サントリーホール オペラ・アカデミーやびわ湖ホール声楽アンサンブル等で研鑽を積み、世界に羽ばたいている日本人若手歌手を抜擢、オーケストラはかつてルイゾッティと共にホール・オペラ®の歴史を刻んだ東京交響楽団が務めます。演出の田口道子はイタリアをはじめ世界各地の歌劇場での豊富な経験を活かし、シンプルな舞台装置ながらも映像や照明を使って、登場人物の心情を細やかに描き出します。

【チケット発売】
サントリーホール・メンバーズ・クラブ先行発売 2021年7月3日(土)10時~7月17日(土)
一般発売 2021年7月18日(日)10時~


【チケット料金】
S席 28,000円 A席 25,000円 B席 21,000円 C席 10,000円 
※C席は舞台の一部が装置で隠れる可能性があります。

【主催】サントリーホール
【特別協賛】大和ハウス工業株式会社/大和証券グループ
【後援】イタリア大使館/イタリア文化会館

ヴィオレッタ役のズザンナ・マルコヴァ(ソプラノ)
ニコラ・ルイゾッティ(指揮)

『ラ・トラヴィアータ』 あらすじ  

[第一幕]
1840年代後期のパリ社交界。美しい高級娼婦ヴィオレッタは夜毎に開かれる快楽に満ちた宴で、彼女に恋心を抱く純朴な青年アルフレードを紹介される。
肺の病に侵され、愛とは無縁の人生を送るヴィオレッタはアルフレードの真摯な愛の告白に心を動かされ、初めて人を愛し愛される感情を覚えて困惑する。

[第二幕 第一場]
社交界と決別しパリ近郊の田舎で愛に満ちた生活を始めたヴィオレッタとアルフレード。しかしその生活はヴィオレッタが密かに身の回りのものを売ることで支えられていた。それを知ったアルフレードは自分を恥じ、金策のためにパリへ出かける。
そこへ、アルフレードの父ジョルジョ・ジェルモンが訪ねてくる。息子が人から謗りを受ける高級娼婦と暮らしていては娘の結婚にも差し支えると訴え、息子と別れてくれるようせまる。ヴィオレッタは自分が犠牲になることを決心する。パリから戻ったアルフレードに自分の心からの愛を告げ、去って行くヴィオレッタ。彼女が華やかな社交界に戻ったと考えたアルフレードは父が止めるのも聞かず追いかけて行く。

[第二幕 第二場]
仮面舞踏会で賑わう夜会の席に先回りしたアルフレード。社交界時代のパトロンだったドゥフォール男爵と共に夜会に現れたヴィオレッタは、男爵がアルフレードに決闘を申し込むのではないかと恐れる。真実を理解できないアルフレードは賭博で儲けた金をヴィオレッタに投げつける。人々から非難されるアルフレード。男爵は決闘を決意する。

[第三幕]
カーニバルで賑わうパリ。ヴィオレッタは病に伏している。彼女の最期の生きる望みは、別れの真の経緯とヴィオレッタの本当の想いを知ったアルフレードが自分の元へ向かっている、というジェルモンからの手紙のみ。道をはずした女は死を以てしてでも償えないのかと絶望しているところへアルフレードが駆けつけて来る。愛する人との再会、しかしヴィオレッタは死が迫っていることを悟っていた。


新世代のスター、マルコヴァを中心に 相性も最高の3傑の夢の競演

香原斗志(オペラ評論家)


コロナ禍がなければ、ズサンナ・マルコヴァの名声は、すでに日本のファンに深く届いていたに違いない。力ある歌手が至芸を披露する機会がしばらく失われていたが、世界各地の劇場に日常が戻り次第、マルコヴァが新世代のスターとしてトップを走るひとりになることに、疑いをはさむ余地はないだろう。4年ほど前、ヴェネツィアで上演されたドニゼッティ『ルチア』で彼女の歌を初めて聴いてから、私はそう確信している。
20代のあのときからマルコヴァにはオーラがあった。美貌と気品ある立ち姿が抜きん出ていたが、さらに驚かされたのは、歌の質が見た目の美しさと見事に一致していたことだった。魅惑的な翳りが添えられたその声は、豊かな倍音を伴ってきわめて上質に響いた。そして品位ある声は縦横にコントロールされ、ルチアのよろこびから苦悩、絶望までが、高い音楽性のもとに表現されたのである。無理なく到達する輝かしい超高音が心地よいのはもちろん、強い意志を内包した表現がヴィオレッタにぴったりであることも加えておこう。そんなマルコヴァのヴィオレッタを日本で聴ける。日本人は恵まれている。

アルフレード役のフランチェスコ・デムーロは、デビュー直後からホール・オペラで歌って大きな可能性を感じさせたが、期待通りにイタリアを代表するスター・テノールに成長し、一昨年、超難役として有名な『清教徒』のアルトゥーロをパリで歌って大成功してからは、現代の大テノールという評価も定着した。イタリアらしい明るい声による歌はイタリアでいつ聴いても、美しく、情熱がみなぎっていた。ただし大仰な表現とは無縁で、あくまでも作品が求める様式を守り、楽譜をディテールまで尊重した端正なフォームで歌いながら、ニュアンスや色彩で情熱を表す。それができる歌手にしか音楽性と演劇性は両立させられない。デムーロはまぎれもなくそのひとりで、その意味でもマルコヴァとの相性は抜群だと思われる。

©J Henry Fair www.jhenryfair.com MED
ズザンナ・マルコヴァ(ソプラノ)
©Elena Cherkashyna
フランチェスコ・デムーロ(テノール)

そしてアルトゥール・ルチンスキー。新国立劇場における『ルチア』でルチアの兄のエンリーコ役を歌い、黒光りするとびきり深い声を朗々と響かせたのを記憶している人もいるだろう。しかも、その歌はスタイリッシュで格調高い。近年、ヴェルディを歌って聴き手を感服させられるバリトンが少ないといわれるなか、ルチンスキーは理想的なヴェルディ歌いの最右翼に位置している。

最高の3人のそろい踏み。しかも3人の音楽性が同じ方向にある。大成功する公演は、この条件が必ず満たされているものである。

©Andrzej Swietlik
アルトゥール・ルチンスキー(バリトン)

ホール・オペラ® 『ラ・トラヴィアータ』 演出ノート

演出:田口道子


『ラ・トラヴィアータ(椿姫)』はオペラの中で最も有名で世界での上演回数が多い作品だ。
アレクサンドル・デュマ・フィスが自身の体験から1848年に書き上げた小説「La Dame aux camelias」が原作で、この作品はベストセラーとなり出版の翌年にデュマ・フィス自身によって戯曲化された。ヴェルディは1852年にパリのヴォードヴィル座で観劇し、すぐにオペラにすることを決めた。
フランチェスコ・マリア・ピア―ヴェに台本を依頼し1853年に初演というスピードでこの作品を書き上げた。ただし、タイトルは原作『椿の花の貴婦人』とは全く違う。トラヴィアータとは『道をはずした女性』という意味だ。ヴェルディはこの作品を以て、それまでの歴史上の人物を主役とする物語とは異なる、自分自身と同時代の実生活を描き、当時の社会を告発したのである。
オペラは総合芸術である。しかし、ホール・オペラ®は音楽に集中できるという特徴を持つ上演法である。それは決して視覚が聴覚を邪魔してはならない。演出はすでにすべてヴェルディがスコアに書いてくれている。それを歌手がどのように表現してドラマを仕上げていくか、決して道をはずさないように導いていくのが演出家としての仕事だと思っている。今年のホール・オペラ®はヴェルディの『ラ・トラヴィアータ』なのだ。

ニコラ・ルイゾッティ(指揮) メッセージ

©Terrence McCarthy SFO

私が音楽家や歌手たちと一緒にサントリーホールで制作したホール・オペラは、とても大切な思い出です。オペラを舞台装置なしで上演するのは、劇場で上演するのとは違う困難があります。サントリーホール、歌手たち、そして私がいつも喜んで指揮をしてきたオーケストラのおかげで、素晴らしいプロダクションが実現しました。
この10年間、私は伝統的な歌劇場で舞台装置のあるオペラ上演を指揮してきましたが、東京で再びホール・オペラを手がけるのはとても刺激的なことです。
『ラ・トラヴィアータ』は、時代や歴史を超えて残る名作です。ヴェルディが観客に伝えたかったこと、それはこの二人の主人公の置かれた社会的地位についてです。(中略)

音楽とは触れ合いです。音楽は、私たちの身体の中にある魂の琴線に、また感受性に触れることができるのです。昨年からコロナ禍で生の音楽に触れられなかったことで、私たちは音楽が皆にとっていかに大切なものであるか、サントリーホールでの経験がいかに得難いものか実感できました。
親愛なるサントリーホールの仲間やファンの皆様、どうか日本で多くの方に再会できますように。多くの方が公演に来て下さって、音楽を愛してくれますように。

※ルイゾッティのメッセージ全文は、この欄の上に掲載している動画をご覧ください。

©Terrence McCarthy SFO