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ザ・プロデューサー・シリーズ 野平一郎がひらく オペラ『亡命』

写真:野平一郎

ピアニスト、指揮者、作曲家。表現者として様々な顔を持ちながら、プロデューサーとして多彩な才能を発揮している野平一郎。原作台本・野平多美とのコンビによる書き下ろしの新作オペラにご期待ください。

8/22(水) 8/23(木) 19:00開演(18:20開場)ブルーローズ(小ホール)

  • 野平一郎(1953- ):オペラ『亡命』(2018)世界初演
  • 原作・台本・字幕:野平多美
  • 翻訳:ロナルド・カヴァイエ
  • 英語上演、日本語字幕付
ベルケシュ・ベーラ(作曲家)
精神科に通う男3、ベーラの子ども時代、語り手
松平 敬(バリトン)
ベルケシュ・ソーニャ(ベーラの妻、精神科医)
カトナ・ラースロー(ゾルタンとエスターの長男、小学生)、声
幸田浩子(ソプラノ)
オリヴァー (ソーニャの父)
精神科に通う男2、マウリツィオ・カーゲル、郵便配達夫、ベーラの父、語り手
鈴木 准(テノール)
カトナ・ゾルタン(ヴァイオリニスト、作曲家)
精神科に通う男1、カールハインツ・シュトックハウゼン、車掌、語り手
山下浩司(バス・バリトン)
カトナ・エスター(ゾルタンの妻、チェリスト)
ベルケシュ・ミーシャ(ベーラとソーニャの長男、5歳)、ナターシャ(看護師)、女、語り手
小野美咲(メゾ・ソプラノ)
  • 指揮:野平一郎
  • フルート:高木綾子
  • クラリネット:山根孝司
  • ホルン:福川伸陽
  • ピアノ:藤原亜美
  • ヴァイオリン:川田知子
  • チェロ:向山佳絵子

N.AIDA

■料金

  • 指定 5,000円/学生 1,000円
  • 野平3公演セット券 10,000円(8/22 or 8/23、8/27、9/1(S席))限定50セット
サントリーホール・メンバーズ・クラブ先行発売: 5月10日(木)10:00〜5月16日(水)
一般発売: 5月17日(木)10:00〜

※セット券は一般発売日よりサントリーホールチケットセンター(電話・窓口)東京コンサーツ(電話・Web)での取り扱い。*予定枚数を終了しました。

「MUSIC BIRDウィークエンド・スペシャル」特別対談
野平一郎✕片山杜秀✕野平多美 新作オペラ「亡命」について

(2018年7月8日放送)

出演:野平一郎(ピアノ/指揮/作曲)、片山杜秀(政治思想史/音楽評論)、野平多美(作曲/音楽評論)

*この音源は2018年7月8日MUSIC BIRDで放送された内容を編集しております。あらかじめご了承ください。
*MUSIC BIRDウィークエンド・スペシャル 《フランス音楽回顧展》についてはこちら
*衛星デジタル音楽放送「MUSIC BIRD」についてはこちら

福川伸陽(ホルン) インタビュー(1)

オペラ『亡命』について(文・野平多美)

これはある二組の音楽家の家族の、運命と葛藤の物語である。
なお、主人公ベルケシュ・ベーラの故国に、1950年代当時、政府機関に思想や言動を制限されていた場所としてハンガリーを選んだが、そういった場所はどこか他の国かもしれないし、誰かの心の中にある檻なのかもしれない。
つまり、このオペラは、登場人物も場所設定も<フィクション>である。

あらすじ

2017年。ある精神科医と何かに怯える患者の問診。この問診と患者の受けた衝撃的な経験のフラッシュバックは、この後も度々物語の隙間に現れて、観客は主人公の過去を振り返ることになる。

1950年代、共産主義国家ハンガリーでは、自由な言動や通常の創作活動が許されていない。
ベルケシュ・ベーラは、思想統制された環境においても、作曲家としての創作活動を続けていたが、次第に作曲の本質である自由意志の表現ができないことに苛立ちを覚えるようになっていた。そんなベーラを、精神科医としてなぐさめる利発な妻ソーニャ。実は、彼女が専門とする精神科の中でも主要なファクターである精神分析自体が、共産主義国家では禁止されていた。
音楽家の友人カトナ・ゾルタン夫妻とはしばしば午後をともに過ごし、音楽の喜びを分かち合った。公安が常に人々の言動に目を光らせている家の外の気配を気にしながらも、音楽を通して本当のことが話せる唯一の楽しい時間である。いろいろな手段を使ってやっと垣間見ることができる西側諸国の作曲家と作品について話し、まだ見ぬ自由の国について想像を膨らませる。

ある日ベーラが、西側への脱出の方法を郵便配達夫から手に入れ、早速カトナ夫妻に相談を持ちかける。秘密裏に段取りをつけて、2つの家族は明るい未来を夢見て旅立つ予定を立てる。

多くの困難を越えて、ベルケシュ家はついに国境を越え、憧れの街ウィ一ンに辿り着く。ところがカトナ家には不測の事態が襲いかかり、運命が彼らを引き裂いた。

数年後のベーラは、西側で作品が認められ、世界的に名を知られるようになっている。しかし、故国を失った根無し草ではないか、と一抹の寂しさも覚える。
一方、ゾルタンは、故国に残って作曲活動を続けることを受け入れざるを得なかった。その妻、ユダヤ人のエスターは、「すでに亡命して来た身。どこにいても、家族が一緒ならそこが私の居場所です」と夫に告げる。

2017年。ソーニャとエスターの毎日の電話交信。この電話は、亡命したソーニャが故国と一つにつながっているという心の拠り所である。エスターにとっては、この電話によって自身も亡命したかのような気持ちになれる唯一の手段。
「いったいどちらが亡命したのか、話しているとわからないわね、私たち」

“亡命(Exile)” それは逃亡なのか、自由への歓びの旅だったのか?
心は故国に置いたままでも、亡命と言えるのか?

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