主催公演

第55回サントリー音楽賞受賞記念コンサート

近藤 譲(作曲) オペラ『羽衣』
*日本初演・演奏会形式(舞踊付)

※チラシPDFはページ下部からご覧いただけます。

サントリー芸術財団は、1969年の創設以来、日本の洋楽発展に最も顕著な功績のあった個人または団体に「サントリー音楽賞」を贈呈しており、第55回(2023年度)は作曲家・音楽評論家の近藤譲が受賞しました。海外で最も著名な日本の作曲家のひとりとして、今なお次世代に大きな影響を与え続ける近藤氏の受賞を記念し、8/28(木)にサントリーホールにて、各所から上演が熱望されている唯一のオペラ『羽衣』を演奏会形式(舞踊付)で日本初演します。

また、公演同日にブルーローズ(小ホール)では、本作の日本初演の機会にあわせて、ドキュメンタリー映画『A SHAPE OF TIME -the composer Jo Kondo』(2016年)を上映します。
映画上映後には作曲家本人が登場するアフタートークの開催も決定!(8/21更新)

■サントリー音楽賞受賞記念コンサート
【日時】2025年8月28日(木) 19:30開演(18:50開場)*休憩なし
【会場】大ホール
【料金(全席指定)】S席9,900、A席7,700、U25席2,200

■ドキュメンタリー映画上映
【日時】2025年8月28日(木) 17:00開始(16:30開場)19:00終了予定
【会場】ブルーローズ(小ホール)
【料金(全席自由)】一般席1,000円、U25席500円
【アフタートーク】18:40~19:00頃 登壇者:近藤譲、小沼純一(批評家・詩人)

※チラシPDFはページ下部からご覧いただけます。
近藤 譲(作曲)
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作品と出演者/エッセイ

コンサートは2作品から成り、初めに『接骨木(にわとこ)の3つの歌』が読売日本交響楽団コンサートマスターの林悠介(ヴァイオリン)と西久保友広(打楽器)により演奏され、「前口上」として『羽衣』の世界へと導きます。

続くオペラ『羽衣』(1994)は、フィレンツェ五月音楽祭(フィレンツェ市立歌劇場)の委嘱で作曲され、ロバート・ウィルソンの演出で初演された近藤譲唯一のオペラ。三保の松原が舞台の「羽衣伝説」を題材とした世阿弥の原文から、作曲家自身が核となる部分を抽出して台本を構成し初演されました。

サントリー音楽賞を受賞するきっかけとなった2023年度の「コンポージアム」でもオーケストラの指揮を務めたピエール=アンドレ・ヴァラドを迎え、加納悦子(メゾ・ソプラノ)、厚木三杏(舞踊)、塩田朋子(ナレーター)、多久潤一朗(フルート)、女声合唱団 暁読売日本交響楽団といった豪華布陣のキャストにより、大ホールの舞台で展開される幻想的な世界にご期待ください。

>エッセイ「『羽衣』は風に――近藤譲、音楽、ひと、ことば」(PDF)
文:小沼 純一(批評家/詩人)

ピエール=アンドレ・ヴァラド(指揮)、加納悦子(メゾ・ソプラノ)、厚木三杏(舞踊)
塩田朋子(ナレーター)、多久潤一朗(フルート)

■曲目・出演者
近藤譲:『接骨木(にわとこ)の3つの歌』(1995)
 ヴァイオリン:林悠介
 打楽器:西久保友広

近藤譲:オペラ『羽衣』(1994)[日本初演・演奏会形式(舞踊付)]
 指揮:ピエール゠アンドレ・ヴァラド
 メゾ・ソプラノ:加納悦子
 舞踊:厚木三杏
 ナレーター:塩田朋子
 フルート:多久潤一朗
 読売日本交響楽団
 女声合唱団 暁
 合唱指揮:西川竜太
>出演者プロフィールはこちら

■あらすじ
駿河の三保の松原で、伯陵という漁師が松の枝に掛かった美しい羽衣を見つけ、家宝にしようと持ち帰ろうとすると、天に帰るために羽衣が必要だと嘆く天人が現れ、返してほしいと訴える。漁師は、最初は聞き入れないが、天人の悲しむ姿に心を動かされ、天上の舞を見せてもらうことを条件に羽衣を返すことにする。羽衣をまとった天女は、三保の松原の春の美しさを賛美しながら優雅に舞い、やがて富士山の方へ舞い上がり、霞の中に姿を消していった。

作曲家自身によるプログラム・ノート

■『接骨木(にわとこ)の3つの歌』
作曲年代:1995年
委嘱:草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァル
初演:1995年7月 草津 石井光子(ヴァイオリン) 永曽重光(打楽器)
楽器編成:ヴァイオリン、打楽器(任意)

この作品は、1983年に作曲したソプラノ独唱のための『接骨木の新芽(New Buds on the Elderberry Tree)』をヴァイオリン独奏用に書き換えたものである(付随する打楽器のパートは省くこともできる)。原(もと)の声楽曲に用いた歌詞は、木下利玄(1886~1925)の歌集『紅玉』(1919 年)に収められている次の3首である。[続きを読む]

■オペラ『羽衣』
作曲年代:1994年
委嘱:フィレンツェ五月音楽祭
初演:1994年6月 フィレンツェ、テアトロ・ぺルゴラ
ロバート・ウィルソン(演出) ドゥーニャ・ヴィエソヴィチ(メゾ・ソプラノ) 和泉淳子(ナレーター) 花柳寿々紫(ダンサー) マルチェロ・パンニ(指揮) フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団
楽器編成:メゾ・ソプラノ、ナレーター、舞踊、独奏フルート、女声合唱、オーケストラ(フルート、オーボエ、クラリネット2、ファゴット、ホルン、トランペット、トロンボーン、マリンバ、ヴィブラフォン、ピアノ、弦楽合奏)

一般的に「オペラ」は、17世紀におけるその始まりから今日に至るまで、「音楽による劇」という基本的な性質を変えていない。しかし、このオペラ『羽衣』は、「劇(ドラマ)」というよりもむしろ、「抒情的情景」とでも言うべきものである。
勿論、広く流布した伝説に基づいて世阿弥が記した「羽衣」の物語は、一つのドラマに外ならない。天女が松の枝に掛け置いた羽衣を軸に、それを見つけて持ち帰ろうとする漁師と天女の遣り取りのドラマが、春の三保の松原の美しい風景の中で繰り広げられる。そうした劇の設定は、バロック時代のオペラにあるような、天上の神々と地上の存在が交差する理想郷アルカディアを舞台として展開する人間のドラマに似ていなくもない。[続きを読む]

受賞の言葉 近藤譲

 サントリー音楽賞の受賞を大変光栄に思います。贈賞理由によれば、賞の直接の対象は、2023年の「コンポージアム」での一連の演奏会とのことですが、当の演奏会が、1970年代から今日までの作品を俯瞰する形のものでしたので、私のこれまでの活動全体をご評価いただいたものと理解し、有り難く感じました。
 私の作曲と音楽思考は、一貫して、二つの問いに根差しています。一つは、「音楽が音楽であるのはどうしてなのか?」――言い換えれば「単なる音と音楽はどこが違うのか?」。そしてもう一つは、「聴くという行為が音楽の成立に果たす役割は何か?」――言い換えれば「音楽を聴くことは単に受動的な行為なのか?」という問いです。
 これらの問いには、いくつもの異なった視点(表現論的、社会文化論的、存在論的、等々)からの探求が可能ですが、私のアプローチは、主として構造論的なものです。すなわち、第一の問いに関して言えば、音は他の音との相互関係において構造化されることによって音楽になる。そして第二の問いには、音の構造化は個々の聴き手自身の聴く行為を通じて成される。あまりにも抽象的な言い方ですが、思考過程の説明を省略して結論的に述べてしまえば、それが私の考えということになります。
 こうした考えに基づく私の作曲作品は、謂わば、個々の聴き手の聴く行為を通じての異なった構造化(即ち、構造論的解釈の多様性)に開かれた抽象的な音の「場」であり、それは、何らかの特定の感情や秩序の表現を目的とするものでもなければ、社会共同体における特定の文化的意義や価値を目指すものでもありません。また、表現内容の理解を強いるようなものでもなければ、響きの渦に巻き込んで心を陶酔の境に奪い去るようなものでもないのです。それは、恰あたかも満天に輝く星々の布置のように、何の表現をも押し付けることなく、個々の聴き手による多様な解釈に開かれたものとして、ただそこに在る。つまり、自然物のような抽象的な音の布置です。
 もし私の音楽が静かなものに感じられるのだとしたら、それは、人が自然物に対するときに感じる超然とした静けさに似たものかもしれないし、そうあって欲しいと期待してしまうのは、私の思い込みの所為かもしれません。いずれにせよ、自らの感情や思いを声高に叫ぶことが当然視されている今日の世の中にあって、このような性向の音楽が評価を得たことは、私にとってとても意外で大きな喜びです。

©Jörgen Axelvall
近藤 譲(作曲)
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ドキュメンタリー映画『A SHAPE OF TIME -the composer Jo Kondo』(2016年)

オペラ『羽衣』の日本初演にあわせて、ドキュメンタリー映画『A SHAPE OF TIME -the composer Jo Kondo』をブルーローズ(小ホール)で上映します。
ドイツの映画監督で作曲家でもあるヴィオラ・ルシェハウケ・ハーダーにより製作された本作は、近藤譲氏の〈曖昧さ〉と〈時間〉の哲学をテーマにし、リハーサル、録音、レッスン、書斎、食事などに同行し撮影。アムステルダムでのコンサート、東京の寿司屋、ケルンでのCD制作、近藤氏が暮らす鎌倉の瑞泉寺…と場所や視点の間を行き来しながら、彼がどのような世界で生き、音楽を生み出しているかを美しい映像で丁寧に描いていきます。
近藤氏と同じ鎌倉で暮らした映画監督 小津安二郎の美学を想起させるその明晰な映像と、現代作曲や芸術的創作のアプローチについての思索をもたらす内容は高く評価され、ドイツの映画祭「Filmfest Schleswig-Holstein 2016」で第1位を受賞しました。

■アフタートーク開催決定!(8/21更新)
映画の上映終了後、作曲家本人が登場しアフタートークを開催。批評家で詩人の小沼純一が映画について、当日上演のオペラ『羽衣』について、そして近藤氏の創作に迫ります。

■上映会詳細
【日時】2025年8月28日(木) 17:00開始(16:30開場)19:00終了予定
【会場】ブルーローズ(小ホール)
【料金(全席自由)】一般席1,000円、U25席500円
【アフタートーク】18:40~19:00頃 登壇者:近藤譲、小沼純一(批評家・詩人)

■映画概要
【監督】ヴィオラ・ルシェ(Viola Rusche)/ハウケ・ハーダー(Hauke Harder)
【公開】2016年
【上映時間】約100分
【言語】英語・日本語(日本語字幕付)
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>作品公式サイト(英語)

©Viola Rusche & Hauke Harder
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©Viola Rusche & Hauke Harder

メディア掲載情報

<公演紹介>
7月2日 Mikiki by TOWER RECORDS
近藤譲のオペラ? サントリーホールでついに日本初演される「羽衣」の音や語りについて
文:小沼純一(音楽・文藝批評家/早稲田大学教授)

<記者懇談会(7/4開催)レポート>
7月11日 WEB ONTOMO
近藤 譲の唯一のオペラ『羽衣』が サントリー音楽賞受賞記念コンサートで日本初演
文:ONTOMO編集部

7月30日 ぶらあぼONLINE
唯一のオペラ《羽衣》が31年の時を経て、待望の日本初演~作曲家・近藤譲が記者懇談会で語る
取材・文:八木宏之

近藤譲(作曲) プロフィール

 1947年10月28日東京生まれ。東京藝術大学音楽学部作曲科卒業。
1977~ 78年ロックフェラー3世財団フェローとしてニューヨークに滞在。1979年カナダ・カウンシルの招きでブリティッシュ・コロンビア州ヴィクトリア大学において客員講師を務める。1986年ブリティッシュ・カウンシル・シニア・フェローとしてロンドンに滞在。1987年米国ハートフォードのハート音楽大学コンポーザー・イン・レジデンス。同年および2000年英国ダーティントン国際サマースクールで講師を、2015年米国ロチェスター大学イーストマン音楽院において特別客員教授を務めた。これまでに、ハーヴァード大学、ニューイングランド音楽院、エディンバラ大学、ヨーク大学、ケルン大学、ハンブルク音楽大学、アムステルダム音楽院など、欧米の多くの大学で自作についての講演を行った。国内においては、エリザベト音楽大学教授、お茶の水女子大学・大学院教授として、また、東京藝術大学でも長年教鞭をとり、現在、昭和音楽大学教授、桐朋学園大学大学院特任教授、お茶の水女子大学名誉教授。
 1980年には現代音楽アンサンブル「ムジカ・プラクティカ」を結成し活動、1991年の解散まで音楽監督を務めた。
 国内外の優れた演奏家や演奏団体、音楽機関から委嘱を受け、独奏曲から室内楽、管弦楽、声楽曲、オペラ、そして電子音楽作品まで、広範なジャンルの作品約180曲を発表。そのほとんどが英国のヨーク大学出版(UYMP)から、そして一部がニューヨークのピータース社(Edition Peters)から出版されている。また、多くの作品の録音が、ALMRECORDS(コジマ録音)、フォンテック、ドイツ・グラモフォン、Hat Hut Records(スイス)、WERGO(ドイツ)、CP2(アメリカ)などのレーベルからリリースされている。
 ロンドン・シンフォニエッタ(英国)、バーミンガム・コンテンポラリー・ミュージック・グループ(英国)、アイヴズ・アンサンブル(オランダ)、ニュー・アンサンブル(オランダ)、アンサンブル・ルシェルシュ(ドイツ)、アンサンブル・ラール・プール・ラール(ドイツ)、ボッツィーニ弦楽四重奏団(カナダ)、アンサンブル・ノマド(日本)、オリヴァー・ナッセン、ポール・ズコフスキー、井上郷子など優れた演奏家たちが、近藤作品を好んで繰り返し演奏しているほか、「パリの秋(フランス)」「アルメイダ国際音楽祭(英国)」「フィレンツェ五月音楽祭(イタリア)」「ハダースフィールド国際音楽祭(英国)」「タングルウッド音楽祭(米国)」をはじめとして多くの国際音楽祭において特集が組まれている。2023年2月には、ロンドンの王立音楽大学(Royal College of Music)が近藤譲の75歳を祝うコンサートを開催した。
 国内でも、サントリー音楽財団(現・サントリー芸術財団)主催によるオーケストラ作品演奏会「作曲家の個展2004」、近藤の70歳を祝う有志による室内楽作品個展「近藤譲七十歳の径路」(2017年)、東京オペラシティ文化財団主催「コンポージアム」のオーケストラ作品個展「近藤譲の音楽」(2023年)、「コンポージアム」関連公演の室内楽作品による個展、合唱作品による個展などが開催されている。
 毎年、数日間連続で放送されているNHK・FMラジオ番組「ベスト オブ クラシック~コンテンポラリーを聴く」では、長年、選曲とパーソナリティーを担当し、ヨーロッパの最新の現代音楽の紹介を行っている。
 作曲と美学に関する執筆活動も活発に行っており、著書に『線の音楽』『音楽の種子』『耳の思考』『〈音楽〉という謎』『音を投げる-作曲思想の射程』『聴く人』などがある。『ものがたり西洋音楽史』では毎日出版文化賞特別賞(2020年)を受賞。翻訳においても、ジョン・ケージ著『音楽の零度-ジョン・ケージの世界』、デイヴィッド・G・ヒューズ著『ヨーロッパ音楽の歴史-西洋文化における芸術音楽の伝統』(共訳)、マーク・エヴァン・ボンズ著『「聴くこと」の革命-ベートーヴェン時代の耳は「交響曲」をどう聴いたか』(共訳)などがある。
 これまでに、日本音楽コンクール作曲部門、ガウデアムス国際作曲コンクール(オランダ)、国際現代音楽協会国際音楽祭(香港)、芥川作曲賞(現・芥川也寸志サントリー作曲賞)、ハダースフィールド国際作曲コンクール(英国)、ソウル国際作曲コンクール(韓国)、日本現代音楽協会作曲新人賞、武満徹作曲賞(2023年)などの作曲コンクールの審査員、柴田南雄音楽評論賞審査委員、京都賞音楽部門選考委員なども務めている。2018年日本現代音楽協会の会長に就任、2019年の特定非営利活動法人化にともない理事長に就任。2025年任期満了退任し、引き続き、理事を務める。
 1991年尾高賞(オーケストラ作品「林にて」)、2005年中島健蔵音楽賞、2018年3月平成29年度(第68回)芸術選奨文部科学大臣賞(音楽部門)、2024年第55回(2023年度)サントリー音楽賞を受賞。2012年アメリカ芸術・文学アカデミー(American Academy ofArts and Letters)外国人名誉会員(終身)に、2024年には文化功労者に選ばれた。

出版 UYMP (University of York Music Press) 
   Edition Peters
   音楽之友社
公式サイト

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