主催公演

第49回サントリー音楽賞受賞記念コンサート
読売日本交響楽団
~聴きどころ・出演者メッセージ~

日本の洋楽発展に功績のあった個人や団体に贈られるサントリー音楽賞。第49回(2017年度)は、メシアンのオペラの大作『アッシジの聖フランチェスコ』で抜きん出た成功を収め、演奏会やオペラなど多彩な活動で当年の音楽界を席巻した読売日本交響楽団が受賞しました。
今回の記念コンサートでは、同じくメシアン『峡谷から星たちへ』を取り上げ、ソリストには、メシアンを含む現代作品の演奏に定評のある児玉桃(ピアノ)を迎えます。指揮は、出演予定の読響桂冠指揮者シルヴァン・カンブルランの来日見通しが立たないため、読響指揮者/クリエイティヴ・パートナーを務める鈴木優人に変更となりました。

『峡谷から星たちへ』はメシアンの管弦楽作品中、最大の規模を誇る傑作。その日本初演は、メシアンが逝去した1992年にサントリー音楽財団サマーフェスティバルにて、指揮:若杉弘/ピアノ:木村かをり/東京都交響楽団が演奏。サントリーホールではそれ以来、何と28年ぶりにこの秘曲が披露されることになります。この稀少な機会に、オーケストラとピアノが大自然、鳥、宇宙を紡ぎだす壮麗な作品を通じて、読売日本交響楽団の現在をお聴きください。
現代フランス音楽研究の第一人者・藤田茂による曲目解説にて、"巨大な自然賛歌"とも言える同曲の魅力・聴きどころをご覧いただけます。※下記リンクにPDFを掲載

鈴木優人(指揮) メッセージ

読響指揮者/クリエイティヴ・パートナーの鈴木優人は、メシアン:「トゥランガリラ交響曲」(2015年、演奏:東京交響楽団)からモダン・オーケストラでの本格的な指揮活動を始め、昨年のNHK交響楽団デビューでも「忘れられたささげもの」を取り上げるなど、メシアンへの造詣が深いことで知られています。

<『峡谷から星たちへ』 公演に寄せて>
オルガニストでもあり、敬虔な信仰者であるオリヴィエ・メシアンは、私にとって大切な作曲家です。アメリカ各地の鳥の鳴き声を通して、文字通り「峡谷から星たちに至るまで」神が創造した世界の神秘と栄華、秩序をそのまま楽譜化することを試みたかのようなこの作品は、複雑さと単純さを合わせ持つ美しい音楽です。
マエストロ・カンブルランが来日できないことは残念でなりませんが、この曲を通した彼からの多くの学びに感謝しています。
「トゥランガリラ」でもご一緒した児玉桃さんとの再共演も楽しみですし、藤原浜雄さん(読響元ソロ・コンサートマスター)が46年前にニューヨークにて初演した『峡谷から星たちへ』を、いま読響が取り上げるという時空を超えた繋がりにも意義深いものを感じます。

©Marco Borggreve

児玉 桃(ピアノ) メッセージ

児玉桃は、「メシアン・プロジェクト」の取り組みなどで高い評価を得ており、読響との共演はメシアンなどを演奏して以来10年ぶりです。『峡谷から星たちへ』では作品を通じてピアノが重要な役割を担い、第4楽章「マミジロツグミヒタキ」や第9楽章「マネシツグミ」は、独奏となります。

<公演に寄せて>
オリヴィエ・メシアンの作品は14歳の時に初めて演奏してから、今日に到るまで絶えず演奏してきた私のレパートリーの中で大切な作曲家です。
パリ音楽院での学生時代に、ご本人をお見かけする機会がありましたが、残念ながら直接お会いすることはできませんでした。亡くなられてからは、メシアン夫人のイヴォンヌ・ロリオ先生に励まされ、『幼子イエスに注ぐ20のまなざし』全曲を演奏し、以降、メシアンのほぼ全てのソロ、室内楽、オーケストラとのレパートリーを演奏させていただきました。中でも、ロリオ先生の希望で『ヴァイオリンとピアノのための幻想曲』を初演させていただけたことは、私の音楽人生の中でとても感動的な出来事でした。彼の音楽は世界が小さく見えるくらい、色彩が空間に溢れるメシアン・ワールドが広がります。今回演奏させていただく、『峡谷から星たちへ…』では、アメリカ的なスケールの大きな自然や鳥たちの様子をピアノが表現し、オーケストラと楽しい会話をします。メシアンの音楽は、絶えず前向きでポジティブなエネルギーと希望に満ちていると、演奏するたびに感じます。
この度、多彩な才能溢れるマエストロ鈴木優人と素晴らしい読売日本交響楽団とともに、サントリーホールの美しい響きの中でこの名曲を皆様と分かち合える事を楽しみにしております。

©Marco Borggreve
  • 読売日本交響楽団 第606回名曲シリーズ
    指揮:シルヴァン・カンブルラン 
    メシアン『アッシジの聖フランチェスコ』の演奏風景
    (2017年11月26日/サントリーホール)
  • ©読響
  • 読売日本交響楽団 第621回名曲シリーズ
    指揮:鈴木優人
    (2019年4月4日/サントリーホール)