マツ枯れ対策。必要な対策を見きわめながら。

マツ枯れ対策

撮影地 京都府乙訓郡大山崎町他
撮影時期 2010年2月〜2013年5月

松が、集団的にどんどん枯れていく、
いわゆる「マツ枯れ」。その被害は、温暖化の影響か、
より北へ、より山の高い方高い方へと、
広がる傾向にあります。いま日本全国の森が共通して
抱えるこの問題に、サントリーは、どう向き合って
いるのか。活動の一例を、ご紹介します。

マツ枯れ対策

必要な対策を見きわめながら

「マツ枯れ」のメカニズム

今、日本では、松が大量に枯れています。
“マツノマダラカミキリ(松の斑カミキリ)”という昆虫を媒介して、
“マツノザイセンチュウ(松の材線虫)”と呼ばれる小さな線虫が、
マツに侵入・感染することで起こる、いわゆる「マツ枯れ」によるものです。

“マツノマダラカミキリ”は、
もともと日本にいたカミキリムシの仲間です。
既に枯れたり弱ったりした松に卵を産みつけながら。
どちらかといえば、細々と暮らしてきました。
羽化した成虫は、松の若い枝をかじることが知られていますが、
それで松が枯れることはありません。

一方、“マツノザイセンチュウ”は、
海外から輸入された松材と共に日本に上陸した、外来種です。
羽化した“マツノマダラカミキリ”の気管の中に潜んだ“マツノザイセンチュウ”は、
“マツノマダラカミキリ”が松の枝をかじる際、松に侵入して増殖。
外来種である“マツノザイセンチュウ”への抵抗性を持たない
日本の松は、感染されると、それこそ抵抗するすべもなく枯れてしまいます。

卵を産みつけることができる弱った松や枯れた松が増えると、
当然、“マツノマダラカミキリ”は増えます。
すると、“マツノマダラカミキリ”をに潜む“マツノザイセンチュウ”が、
松に侵入する機会も増えていき、さらに松が枯れていく。
これが、「マツ枯れ」がどんどん広がるサイクルの、大まかなしくみです。

では、ますます拡大傾向にある「マツ枯れ」に対して、
「サントリー天然水の森」では、どのような対策を行っているのでしょう。
活動の具体例をご紹介する前に、“松”という木の特性について
お話しておきたいと思います。松が、森に果たす役割を知ってはじめて、
より適切な対応策を計画できるからです。

松は、森の先駆者。

松は、いわゆる先駆樹種=パイオニアツリーです。
崩壊地や荒れ地など、他の木が生きていけないような痩せ地にも、
いちはやく根を下ろし、立派に育っていくことができます。

松が生長しながら、地面に松葉を積もらせていくと、
栄養素の乏しかった場所にも、徐々に豊かな表土ができてきます。
すると、松以外の木々も生きていけるようになり、
崩壊地や荒れ地だった場所は、やがて広葉樹の森になっていきます。
そして、その過程で、先駆者としての役割を終えた松は姿を消していきます。

パイオニアツリーとしての “利他的”ともいえる生き方を考えると、
松が他の木々に場所を譲って姿を消していくのも、自然の遷移です。
たとえ「マツ枯れ」が発生しても、既に他の木々が育っていれば、
森は、豊かな地下水を育むために必要な健康を保っていくことができます。

「天然水の森」の活動の「マツ枯れ対策」にとって、
もっとも大切なことは、松を守るべき森と自然な遷移にまかせていい森を
きちんと見きわめることです。

里山の多様性を未来に手渡すために、
「天王山マツ山再生プロジェクト」。

「サントリー山崎蒸溜所」の水源涵養エリアにあたる、天王山。
頂上付近の尾根筋には、今も、赤松の林が残っています。
薪炭林、あるいは田畑の肥料にする腐葉土をまかなう里山として、
長年にわたって人々が利用してきた名残です。

“天王山周辺森林整備推進協会”の一員として、
これまでも、さまざまな森林整備を行ってきた私たちは、
地元の方々のご要望に応え、地元の方々と共に、
この赤松林を守って行くことにしました。

赤松の保護に欠かせない“地掻き”によって得られた腐葉土を、
周辺の雑木林の再生・育成に利用できるなど、
尾根筋の赤松を守って行くことが、天王山一帯の里山再生、
里山としての生物多様性の保全、さらには、水と生命(いのち)の未来を
守ることにつながっていくからです。

  • ここ数十年、日本各地で活発化した「マツ枯れ」は、いっこうに収まる気配が
    ありません。それどころか、温暖化の影響か、北へ北へ、標高の高い方へ高い方へと、
    広がる傾向にあります。
  • 崩壊地や荒れ地に、好んで芽生える松。
  • 荒れ地でも生きていける松が、生長の過程で地面に松葉を積もらせることで土壌を豊かにしていきます。すると、痩せ地では生えない木々も育つようになります。
  • 松が生きていくことで、土壌が豊かになり、さまざまな木々が既に育っていれば、たとえ松が枯れても、森は健康を保つことができます。
  • 「サントリー山崎蒸溜所」の背景に、稜線を見せる天王山。山頂付近には、今も、赤松の林が残っています。
  • かつては、マツタケの産地として知られた赤松林を、地元の方とともに守っていこう。
    そんな思いから、“天王山マツ山再生プロジェクト“がスタート。
  • 地元の方々とまず行うのは、松が元気に生きていける環境を整える“地掻き”。
    この作業で得られた松葉などの腐葉土は、周辺の雑木林の再生・育成に利用します。
    天王山一帯を、より豊かな里山として未来に残す。
    「マツ枯れ対策」に止まらない、「サントリー天然水の森」の活動の一例です。

2013.10.10公開