サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン 2026
BRASSの華 クリーヴランド管弦楽団金管五重奏
マイケル・サックス(トランペット)メッセージ
クリーヴランド管弦楽団は、日本の聴衆と長く素晴らしい関係を築いてきました。
1970年に音楽監督ジョージ・セルとともに初めて来日して以来、何度も日本での演奏機会を重ねてきました。私が在籍している期間だけでも、ピアニストの内田光子さんとのモーツァルト:ピアノ協奏曲の特別演奏会、そして1993年と2018年にサントリーホールで行ったベートーヴェン交響曲全曲演奏会など、数多くの来日公演を行ってきました。
今回、クリーヴランド金管五重奏団にとって初の日本ツアーです!日本でのコンサートをとても楽しみにしています。個人的にも、日本はとても特別な場所です。両親が仕事のため頻繁に来日し、二人とも日本語を習得していました。日本は二人にとってお気に入りの場所の一つでした。
五重奏団の若い二人のメンバーであるナサニエル・シルバーシュラグ(首席ホルン奏者)とブライアン・ウェンデル(首席トロンボーン奏者)は、今回が初めての来日となります。そして、日本出身の首席テューバ奏者・杉山康人にとっては、故郷への帰還となります。日本で彼と一緒に演奏できることは、私たち全員にとって大変意義深く、特別なことです。
アンサンブルのメンバーをご紹介ください
五重奏団のメンバーは以下の通りです。
ジャック・スッテ(トランペット)
ジャックは1999年よりクリーヴランド管弦楽団の第二トランペット奏者を務めています。楽団の活動以外では、「ファクトリー・セカンズ・トリオ」(第二トロンボーン奏者と第四ホルン奏者とのアンサンブル)で室内楽を演奏するほか、作曲・編曲や指導にも携わっています。
ナサニエル・シルバーシュラグ(ホルン)
ナサニエルは2019年、20歳でクリーヴランド管弦楽団の首席ホルン奏者に就任しました。彼の家族はプロの音楽家やニューヨークのジュリアード音楽院卒業生がいます。両親ともに音楽家であり、祖父はレナード・バーンスタイン時代のニューヨーク・フィルハーモニックで首席ヴィオラ奏者を務めました。
ブライアン・ウェンデル(トロンボーン)
ブライアンは2022年からクリーヴランド管弦楽団首席トロンボーン奏者を務めています。自宅では、4歳と5歳の二人の息子の子育てに大忙しです。
杉山康人(テューバ)
ヤスは2006年からクリーヴランド管弦楽団首席テューバ奏者を務めています。クリーヴランド・ブラウンズのフットボールチームの大ファンです。また、1歳の娘や愛犬と過ごすことも大好きです。
マイケル・サックス(トランペット)
私は1988年からクリーヴランド管弦楽団首席トランペット奏者を務めています。トランペット以外では、ゴルフのプレーや野球観戦など、あらゆるスポーツが好きです。また、ジャンルを問わず歴史の読書も楽しんでいます。さらに、50年来のアマチュア無線愛好家でもあります。大学では音楽の学位は持っておらず、UCLAで歴史学の学士号を取得しました。
ちょっとした余談ですが…ジャック、私、ナサニエル、ブライアンの4人は全員ニューヨークのジュリアード音楽院に通っていました。ジャック、ナサニエル、ブライアンの3人はジュリアードを卒業しましたが、私は卒業していません(3年目にヒューストン交響楽団の奏者の座を射止め、途中で退学しました)。
(下段)ブライアン・ウェンデル(トロンボーン)、杉山康人(テューバ)
クリーヴランド管弦楽団のメンバーで構成された金管五重奏団が、特別で魅力的な理由は何でしょうか?
クリーヴランド管弦楽団は独自のサウンドを持つ楽団です。その独自性の大半は、本拠地セヴェランス・ホールの音響特性と、ジョージ・セル、クリストフ・フォン・ドホナーニ、そしてフランツ・ウェルザー=メストといった長年にわたる音楽監督たちの芸術的なリーダーシップにより構築されたものです。繊細な表現から英雄的でパワフルな響きまで、自在に幅広く感情・性格・色彩感を表現できる、上品で温かみのあるサウンドで知られています。私たちの音楽作りへのアプローチは非常に協調的で、音楽と作曲家の意図に奉仕するための重要な要素として、ブレンド、バランス、アンサンブルとしてのチームワークを大切にしています。オーケストラで一緒に演奏するときも、今回のような金管五重奏においても、私たち5人の演奏スタイルにはこうした性格と室内楽の哲学が色濃く反映されています。
今回は、オーケストラのいつものレパートリーとは異なる曲目を演奏する良い機会と考え、プログラムを組みました。私たちは皆、親しい友人同士であり、一緒に仕事をすることをとても楽しんでいます。オーケストラとして演奏する際の相性が非常に良いため、五重奏団としての演奏でも、それを存分にお楽しみいただけると思います。日本で演奏することをとても光栄な機会と全員が感じています。
プログラムの各楽曲のハイライトと、プログラム全体のコンセプトや構成についてお聞かせください。
このようなプログラムを作成するときは、いつでも、グループのメンバーが最も得意とすることを引き出し、演奏を楽しめる音楽を探求する機会であると同時に、聴衆にとっても楽しいものにすることを心がけています。
今回は、金管五重奏のために書かれたオリジナル作品と、金管用にアレンジされた作品を両方取り上げることで、多彩な色彩と音楽スタイル、そして親しみ深い作品と新しい作品を幅広くご提供できると考えました。
ビゼーの「カルメン」組曲は、この有名なオペラの名場面を辿る5楽章の旅です。全5楽章が、劇的なものから内省的なもの、軽快なものまで、それぞれ異なるスタイルと雰囲気を持っています。ドビュッシーの「シャルル・ドルレアンの3つの歌」は、もともと無伴奏合唱のために書かれた3つの歌曲です。この美しい印象派の作品のアレンジは、金管楽器が人間の声に似た響きを持ち、親密さと繊細さをもって演奏できるという独自の特性を際立たせています。エンリケ・クレスポの「アメリカン組曲 第1番」は、北米・南米大陸の様々な音楽スタイルを反映した、金管五重奏のための素晴らしいオリジナル作品です。第1楽章「ラグタイム」は、ジョプリンのラグが流行した20世紀初頭のアメリカへと私たちを誘います。第2楽章「ボサノヴァ」は、20世紀中頃のブラジルのボサノヴァスタイルを表現しており、トロンボーンのなめらかなグリッサンドと他の楽器のアンサンブルが絡み合い、その時代の楽曲を思わせるジャジーなリズムが印象的です。第3楽章「バルス・ペルアーノ」は、1950年代から70年代にかけてペルーとアルゼンチンで広まったウィーン風ワルツのアダプテーションです。第4楽章「サンバ・ガウチャ」は、優雅で気品のある動きで知られるアルゼンチンの民俗舞踊「サンバ」のスタイルで書かれており、踊り手たちはハンカチを使って引き付けと敬意のダイアログを表現します。第5楽章「ソン・デ・メヒコ」は、メキシコの素晴らしい金管の伝統を反映しています。華やかな装飾音と勇壮なマリアッチスタイルで、喜びに満ちた疾走感とともに曲の幕を閉じます。
後半は、レナード・バーンスタインの芸術的天才性と遊び心溢れる性格を際立たせる「キャンディード」序曲からスタートします。マイケル・ケイメンは、優れたアメリカ人映画音楽作曲家・編曲家・ソングライターで、映画「ダイ・ハード」「ハイランダー」「X-MEN」、テレビドラマ「バンド・オブ・ブラザース」など数多くの作品を手がけました。金管五重奏のためのこの美しく内省的なオリジナル作品は、ケイメン氏の代名詞である叙情性と壮大な映画的フレアに満ちており、私たちグループの温かなサウンドと歌心あふれる表現力にぴったりの作品です。
そして、プログラムの最後を飾るのは、金管五重奏のレパートリー全体の中でも私が最も好きな作品のひとつ、ヴィクトル・エヴァルドの金管五重奏曲 第3番です。ロシア後期ロマン派の豊かな作品で、同じくサンクトペテルブルク出身のチャイコフスキーのスタイルに非常に近いものがあります。この五重奏曲は、室内楽という形式でありながら、金管楽器が生み出す交響楽的な音の広がりを存分に示しています。エヴァルドの書法は、金管楽器らしい大胆で英雄的な表現を求める一方で、弦楽四重奏のように穏やかで流れるような表現も求めます。プログラムを素晴らしい形で締めくくる、実に素晴らしい作品です!