主催公演

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」
2020年シーズン 公演レポート & 2021年シーズン 公演紹介

指揮:下野竜也(右) 
司会:坪井直樹(TV朝日アナウンサー)(左)

2021年シーズンに20周年を迎えるこども定期演奏会。昨年はコロナ禍に見舞われましたが、安心してご来場いただけるよう感染症対策を講じてお客様をお迎えしました。
そして、4月から始まるこども定期演奏会のテーマは、「オーケストラ・タイムマシーンⅡ(西洋音楽史)」。演奏を聴きながら西洋音楽史を楽しく学べます。20周年を記念した特別企画もご用意しています。

音楽評論家の山田治生さんが昨年4回のコンサートの様子をレポート、今年の各公演の聴きどころも紹介していただきました。
また、「こども定期」の魅力がわかるプロモーション動画をぜひご覧ください。昨年の演奏と、指揮者・原田慶太楼のお話をお届けしています。※ページ下部にてご覧いただけます。

指揮:下野竜也(右) 
司会:坪井直樹(TV朝日アナウンサー)(左)

「こども定期演奏会」 2020年シーズン 公演レポート

山田治生(音楽評論家)


2020年シーズンの東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」は、ほとんどのコンサートと同様に、新型コロナウイルス感染症の流行によって非常に大きな影響を受けた。感染予防のために様々な対策が取られ、プログラムは休憩なしで60分から70分での上演となり、プレトークや年間会員特典のイベント(ロビー・ツアー、レセプショニスト体験、楽器体験、指揮者・楽団員を囲む会)は中止された。
また、4月12日に予定されていた第73回は7月24日に延期され、第74回(7月5日開催)と第73回は、客席を前後左右1席ずつ空け、かつ1日2公演を実施することで、ホール内の密を徹底的に避けられるよう感染症対策が講じられたうえで開催された。
それでも、コロナ禍により数多くのコンサートが中止になるなか、こども定期演奏会が例年通り4回開催されたのはほとんど奇跡的といえるであろう。

2020年は感染症対策を講じたうえで、4公演すべてを開催。
「こども定期演奏会2020」のテーマ曲に選ばれた山下華音さん、指揮の川瀬賢太郎さん

「ヨーロッパⅡ」と題された第74回(7月5日)では、若手指揮者のなかで最も活躍の著しい一人、川瀬賢太郎が指揮台に立ち、イタリア、フランス、スペインとゆかりの深い作品が取り上げられた。
まず「こども定期演奏会2020」テーマ曲に選ばれた山下華音作曲(和田薫編曲)「ハムスターパーティー」が披露された。山下華音さんは長崎県の小学3年生。この曲は、2020年シーズンのそれぞれの演奏会のオープニングで演奏された。
ラテン系プログラムは、ボッケリーニ(ベリオ編曲)の「マドリードの夜警隊の行進」で賑やかに始まった。ビゼー(山中惇史編曲)の「カルメン・ファンタジー」では、アルト・サクソフォーンの上野耕平の艶のある音色に魅了される。ロッシーニのオペラ「セビリャの理髪師」序曲も演奏され、イタリアやフランスの作曲家の作品が並ぶが、スペインも隠れたテーマになっていることがわかる。
締め括りは、レスピーギの交響詩「ローマの松」から「ジャニコロの松」と「アッピア街道の松」。クラリネット(エマニュエル・ヌヴー)やイングリッシュホルン(最上峰行)が見事なソロを披露。最後に金管楽器のバンダ(別動隊)やパイプオルガンも加わり、その壮麗な音響に圧倒された。

指揮:川瀬賢太郎 アルト・サクソフォーン:上野耕平
レスピーギ:交響詩「ローマの松」より

第73回(7月24日)「ヨーロッパⅠ」。こども定期出演4回目となる下野竜也が指揮を執った。チェコ、オーストリア、ドイツ、ベルギー、ノルウェーの音楽。
服部百音がモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」の第3楽章を演奏。低音楽器の荒々しいコルレーニョ(弦を弓で叩く)の箇所で子どもたちが反応を示す。
ベルギーからは、1956年生まれのヤン・ヴァン=デル=ローストが1991年に書いた「カンタベリー・コラール」。オリジナルは金管楽器のための合奏曲だが、弦楽合奏用に中原達彦が編曲したものを演奏。下野らしい凝った選曲である。
そして最後は、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」から第3、第4楽章。「交響曲では初めて長い音を伸ばして終わった曲。それまでは宗教音楽だけが長い音を伸ばして終わっていました。だから教会の楽器であるトロンボーンだけ、『運命』の最後の音を伸ばしません」という下野の蘊蓄(うんちく)を交えたトークも楽しめた。

指揮:下野竜也 ヴァイオリン:服部百音

第75回(9月6日)「アメリカ」。アメリカのサヴァンナ・フィルハーモニックの音楽監督を務め、2021年4月に東京交響楽団の正指揮者に就任する原田慶太楼が登場し、アメリカン・プログラムを指揮した。ジョプリンの「エンターテイナー」などのラグタイムから始まる。
ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」では、18歳のジャズ・ピアニスト、奥田弦が登場し、長大なアドリブ(即興演奏)を披露。
アンダーソンの「タイプライター」、「サンドペーパー・バレエ」、ライヒの「クラッピング・ミュージック」では、原田が、東響の打楽器奏者たちと、視覚的にも魅せる。
最後は、バーンスタインの「ウエスト・サイド・ストーリー」より「マンボ」。「マンボ!」の掛け声が入ることで知られる曲だが、コロナ禍により声を上げるのは避けられ、代わりに全員で拍手を入れた。
アンコールは南米アルゼンチンのヒナステラの「エスタンシア」より「マランボ」。最後の足踏みのあと、団員全員で立ち上がって踊るように演奏した。

指揮:原田慶太楼 ピアノ:奥田弦
ヒナステラ:「エスタンシア」より「マランボ」

そしてシーズンを締めくくる第76回(12月13日)「ロシア」。今年も飯森範親 “こども奏者” たちと共演。飯森は、ロシアのオーケストラへの客演経験も豊富であり、この日はチャイコフスキー、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチの作品を取り上げたチャイコフスキーは三大バレエ音楽から名曲を抜粋。モスクワ生まれのコンサートマスターのグレブ・ニキティンがモスクワでのクリスマス期の話を披露した。
プロコフィエフのバレエ音楽「ロメオとジュリエット」の「モンタギュー家とキャピュレット家」で、“こども奏者”(ヴァイオリン4名、チェロ1名、クラリネット1名、トランペット2名)が登場。子どもたちがオーケストラの大音量と最弱音を、身をもって体験した。コンサートマスターの席で演奏したヴァイオリンの西村真由さん(小学5年生)は、「いろいろな音が聴こえて、楽しかった」と感想を述べ、トランペットの金井信之介さん(小学4年生)は、「オーケストラで吹くのは人生初めての体験でした」と話した。
ショスタコーヴィチの「祝典序曲」で、華々しく、希望をもって、シーズンを終了した。

指揮:飯森範親 8名の“こども奏者”

「こども定期演奏会」 2021年シーズン 公演紹介

今年4月からの2021年シーズンのテーマは「オーケストラ・タイムマシーンⅡ(西洋音楽史)」。演奏会ごとに、時代時代の音楽が紹介される。

第77回 【20周年ガラ】(4月18日)では、2001年に「こども定期演奏会」をスタートさせ、2013年まですべての演奏会で指揮を執っていた大友直人が帰ってくる。そして、かつてこども定期演奏会に出演し、今は若手を代表するソリストとして活躍する、ヴァイオリンの三浦文彰(2004年、06年に出演)、チェロの横坂源(2003年、11年に出演)が登場。ピアノの金子三勇士(2015年に出演)も20周年を祝して駆けつけ、それぞれの得意曲を披露する。

第78回は、「バロック・古典」(7月4日)。2019年ブザンソン国際指揮者コンクールに優勝し、現在はベルリン・フィルで芸術監督キリル・ペトレンコのアシスタントを務める沖澤のどかがこども定期演奏会に初登場する。ヘンデル、バッハというバロック音楽を代表する作曲家の作品から、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンらウィーン古典派の作品までをとりあげる。人気ソプラノの森麻季が、ヘンデル、バッハ、モーツァルトの名曲を歌うのも楽しみ。

第79回「ロマン派」(9月5日)。指揮は広島交響楽団総監督を務める下野竜也。ピアノの小山実稚恵と下野との「こども定期演奏会」でのコラボレーションは、2017年、2019年に続いて3度目となる。オーディションで選ばれた “こどもピアニスト” と小山との連弾でグリーグの「ペール・ギュント」から2曲が演奏される。小山の独奏は、ショパンのピアノ協奏曲第1番第1楽章でたっぷりと。最後にチャイコフスキーの交響曲第4番から第4楽章。

第80回(12月12日)「近現代」原田慶太楼が20世紀の名曲から今生まれたばかりの新作までを取り上げる。注目は、「新曲チャレンジ・プログラム」。若手作曲家が子どもの書いたメロディを使って創作した新しい管弦楽曲(6点のメロディが決定)がこの日世界初演される。今年の “こども奏者” は、ハチャトゥリアンの組曲「仮面舞踏会」より「ワルツ」に参加。マルケスの「ダンソン第2番」やホルストの「木星」ではオーケストラの醍醐味が味わえるであろう。

「こども定期演奏会」2021年シーズン 公演チラシ
※ページ下部にてPDF掲載
小山実稚恵と“こどもピアニスト”の連弾(2019年)
  • 「こども定期演奏会」 プロモーション動画(海外向け)
    【2020年12月の演奏会より】 指揮:飯森範親
     チャイコフスキー:バレエ音楽『眠れる森の美女』より「ワルツ」
     プロコフィエフ:バレエ音楽『ロメオとジュリエット』より「モンタギュー家とキャピュレット家」 ※こども奏者と共演
    【2020年9月の演奏会より】 指揮:原田慶太楼
     ヒナステラ:「エスタンシア」より「マランボ」
    【原田慶太楼(指揮)のおはなし】 ※日本語字幕付き

「こども定期演奏会」 チケット発売情報

4公演分の年間会員券、各公演の1回券とも発売中です。
年間会員券12,000円(4公演分) 1回券3,500円 (いずれも全席指定・税込)
※小学1年生から入場できます。チケットはお一人様1枚ご用意ください。

下記、リンク先のページにてご購入いただけます。