アーティスト・インタビュー

日本フィル&サントリーホール
とっておき アフタヌーン Vol. 14

ハンサム四兄弟 インタビュー <前編>

ハンサム四兄弟

日本フィルとサントリーホールが贈る、エレガントな平日の午後『とっておきアフタヌーン』。気鋭の指揮者と注目のソリストによる「今こそ聴きたい」演奏をお届けする2020~21シーズンは、コロナ禍のため、6月公演はプログラムを変更してオンラインでスタートしました。そして次回10月公演は、聴衆の皆様にサントリーホール大ホールで一緒に楽しんでいただけるよう、万全の体制を整えています。登場するのは、華やかで麗しいバリトン歌手グループ、その名も「ハンサム四兄弟」です。国内外のオペラやコンサートなどでそれぞれ活躍されている(長男から順に)宮本益光さん、与那城 敬さん、近藤 圭さん、加耒 徹さんにお話を伺います。

ハンサム四兄弟

――まず、「ハンサム四兄弟」というグループ名が気になります。結成のきっかけを教えてください。

宮本: 長兄として私からお答えしますね。この3人は、いわば僕の仕事を邪魔する「ライバル」たちで(笑)、それはつまり「気になる」人たちということです。それぞれに繋がりもあり、何か一緒にできるのではと思っていたところ、所属する東京二期会マネジメント部門、二期会21の企画で、ホワイトデーコンサートを4人でやることになりまして。

宮本益光

――2018年3月、サントリーホール ブルーローズ(小ホール)で行われた「White Dayとびきり甘い夜」という公演ですね。とても好評だったそうですね。

宮本: はい、そのように聞いていますし、何より私たち自身が楽しめたんです。と、私は信じていますけれど……みんなはどうなの?
近藤: 本当に楽しかったし、それぞれ素晴らしくて。
与那城: 僕は中学時代はピアノのレッスンに明け暮れていた帰宅部だったので、部活をやっていたらこんな感じだったのかなと。楽屋裏も楽しいです、毎回。
加耒: 私にとっては、学生時代から憧れの先輩たちと一緒にやれるというだけで嬉しくて。しかも皆さん気さくに迎え入れてくださり、リラックスしてできました。
宮本: すぐそうやって若ぶる!(笑) これを機に、4人での活動を始めまして。今年3月のホワイトデーに予定されていた公演はコロナ禍で中止になってしまいましたが、「とっておきアフタヌーン」で3回目、1年ぶりぐらいのハンサム四兄弟になります。
近藤: もっと一緒にやっているような気がしますね。

2018年3月14日
NIKIKAI Days@Blue Rose2018 プレ企画
「宮本益光が贈るホワイトデーコンサート とびきり甘い夜」
ソプラノ:鵜木絵里(スペシャルゲスト)

――「ハンサム」という言葉を久しぶりに聞いた気がして、むしろ新鮮に感じました。名付け親は?

宮本: 絶対この言葉しかない!と思ったんです。挑戦的でもあり、自虐的でもあり。自分はさておき、彼らはその言葉に相応しい「イケメン」な人たちですけれど、でも自分でそんなこと言うのは恥ずかしいでしょ。あえて言うところに、おふざけ感もあり、それぞれのタレント性がでて、チャーミングでもあり、奥深い。お客様から「ハンサム!」と声をかけていただいて、うん、きっとそうなんだなと思ったり(笑)。事務所からは、本当にその名前でいいのかと言われましたけれど。

――ハンサムを名乗ると、男性のお客様を敵に回してしまうのでは?

宮本: いやいや、そんなことないですよ。
近藤: 男性客も結構いらっしゃいます。
加耒: 「イケメン」と名乗ると、もしかしたらそういう面もあるかもしれませんが、「ハンサム」という4文字が、絶妙に受け入れられやすいようです。
近藤: 最初は恥ずかしかったですよ、もちろん。メールで「ハンサムの皆さまへ」ときて……あ、俺?と。今は慣れて当たり前になってきた自分がいます(笑)。

――そもそも皆さん、ハンサム声ですものね。お話しされる声も豊かで品があります。「とっておきアフタヌーン」では、どんな曲を歌ってくださるのですか?

宮本: オペラの名曲はもちろん、ミュージカルの曲や、ドイツ歌曲まで幅広く。4人それぞれのレパートリーの中から、オーケストラとの共演に相応しい曲、そしてお客様に喜んでいただけるような曲ということを考え合わせ、選びました。
加耒: 歌のレパートリーがそれぞれ似ているので、誰がどんな歌を選ぶのかも、コンサートの聴きどころです。どれも名曲ばかり、特にオペラのアリアは派手な曲が多いので、4人それぞれの個性をお届けできればと思います。声の違いや表情、どうやって盛り上げていくか、歌い手による違いを感じていただければ。
与那城: 普段、自分のレパートリーの曲をこんなにたくさん聴くことは絶対にないので、僕ら自身にとっても贅沢な場です。あ、この人はこういう風に歌うんだと、間近で聴けるのでラッキー!
宮本: 私もリハーサルでは聞き耳を立てています(笑)。
与那城: オペラのバリトン役というと、大体は威厳ある父親とか悪魔とか重たいイメージなのですが、今回のコンサートでは、映画音楽やミュージカル、声楽のリサイタルでは聴けないようなジャンルの曲も歌いますし、軽やかな楽しい雰囲気になると思います。   
宮本: バリトン同士、オペラのダブルキャストで同じ役をやることはあっても、同じ現場に立つことはまずありませんし、仲間としてひとつの公演をやるというのは、なかなかないことなんです。伝統あるオペラの世界に立ちながら、いろいろな方面に興味のアンテナを張っている4人が組んで、普段はない選曲、「ハンサム」という遊び方をすることで、お客様たちとご一緒するような環境を作れたらと思っています。
近藤: 普段はソロで、ピアノ伴奏で歌うシューベルトの歌曲『魔王』を、オーケストラで、しかも4人全員で歌うという試みがありまして、これが楽しみです。どんなふうに歌い分けるかは、当日のお楽しみに!

――オペラファンにもミュージカルファンにもハンサムファンにも十分お楽しみいただける、「とっておき」のコンサートになりそうですね。共演する日本フィルハーモニー交響楽団との相性はいかがですか?

近藤: 僕は、実は初共演なので、すごく楽しみにしています。
宮本: 初めての人には厳しいオーケストラだよ……というのは冗談で(笑)、私は今まで何度も共演させていただき、顔見知りも多く、サウンド的にも安心感のある、任せられるオーケストラです。こちらが挑戦してみても許されるのではないかという余裕も感じます。勢いが良く、スパーンとくる感じなので、こちらも気合を入れてスパーンと。一緒に音楽をやり合うという感覚、共演することが楽しいオーケストラですね。
与那城: 僕は、日本フィルのコンサートマスター扇谷さんと大学で同級生だったんです。今までに何度も、夏休みコンサートなども共演もさせていただいて、親しみのあるオーケストラですね。オケのノリの良い雰囲気が、今回のノリの良いプログラムにぴったりだと思いますし、一緒に楽しめそうです。
加耒: 私は2018~19年シーズンの「とっておきアフタヌーン」でナビゲーターを務めさせていただいたので、オケの方々にはMCの人と思われているかもしれませんが(笑)。トークをしていても和やかな反応をしてくださり、リハーサルの雰囲気もすごくアットホームで居心地が良い。そして本番での演奏は非常にメリハリがあって。その緩急がしっかりしているオーケストラだなあという印象です。このシリーズは、マチネということもあり、お客様の方もリラックスしてシリーズを通して楽しみにいらっしゃる方や、ふらっと立ち寄ってみたという方など、いい意味で力が抜けた雰囲気なので、トークなどでさらに距離感を縮めて、でも演奏はしっかりメリハリをつけて、リラックスした午後を楽しんでいただければと思います。

堀田力丸
日本フィルハーモニー交響楽団
加耒 徹

――指揮の齋藤友香理さんとは、皆さん初共演ですか?

与那城: 僕は、もう10年前ぐらいになりますが、齋藤さんがまだアシスタントをされていた時代に、一度ご一緒したことがあります。指揮者として共演するのは初めてなので、とても楽しみです。
宮本: 素敵な女性指揮者との初共演、テンション上がります! 
近藤、加耒: 楽しみです。

【インタビュー後編に続く】
――後編では、今年、多くのコンサートが中止となり、お客様の前で歌うことができない時期が続いた「ハンサム四兄弟」の皆さんがあらためて自粛期間中に考えたことや、それぞれの「とっておき」について教えてくださいました。

指揮:齋藤友香理
  • ハンサム四兄弟 歌「見上げてごらん夜の星を」&メッセージ

  • 宮本益光(バリトン)メッセージ

  • 与那城 敬(バリトン)メッセージ