<SPIRITS OF SUNTORY SPORTS>第5弾
『世界一を目指す』前半

栗原 圭介
(サントリーサンバーズ大阪 ゼネラルマネージャー)
×矢野 哲次
(サントリー株式会社 スピリッツ・ワイン開発生産本部 大阪工場 工場長)
2026.5.14

栗原GMと矢野工場長

サントリースポーツの活動に込められた「想い」とその未来図を、様々な視点からロングインタビュー形式で掘り下げる<SPIRITS OF SUNTORY SPORTS>シリーズ。

第5弾は、サントリーサンバーズ大阪・栗原圭介ゼネラルマネージャーと、サントリー株式会社スピリッツ・ワイン開発生産本部大阪工場・矢野哲次工場長の2人による、異業種クロストークです。

世界一を目指すバレーボールチームのGMと、世界最高峰のお酒づくりを目指す工場長が、サントリー大阪工場で語り合いました。工場長自ら案内された工房ツアーの後、初対面ながらスピリットが響き合ったお二人の対談をお届けします。

《栗原圭介》
1976年福岡県生まれ。サントリーサンバーズ大阪・ゼネラルマネージャー。法政大学バレーボール部でセッター(S)として活躍後、サントリーに入社。選手引退後はコーチやチームディレクターを歴任し、クラブの組織基盤づくりに取り組んだ。2023年にはアジアクラブ選手権大会で日本勢初の優勝でアジアNo.1となり、同年の世界クラブ選手権大会では世界第3位となる。また2025年にはイタリア・セリエAのシル・サフェーティ・ペルージャとパートナ―シップ契約締結を交わし世界レベルのクラブになるために奮闘中、2022年より現職。

《矢野哲次》
サントリー株式会社 スピリッツ・ワイン開発生産本部 大阪工場 工場長

1976年、北海道生まれ。2001年サントリー入社後、武蔵野ビール工場でエンジニアとして仕込棟の更新等に関わる。生産企画部を経て、梓の森工場で工務技師長としてカジュアルワインづくりや缶・瓶・PETの充填ラインを経験。2021年よりSGSでケンタッキーを拠点に世界の様々なスピリッツ製造現場のエンジニアリング・サステナビリティについて担当した。2024年より大阪工場35代工場長を務める。

◆ここから新しい商品を世界に

――昨日「サントリー大阪工場スピリッツ・リキュール工房ツアー」のオープニングセレモニーだったそうで、おめでとうございます。

矢野:嬉しかったですね。記者の方に来ていただき、試飲していただいて、素晴らしいツアーだと感想を言っていただきました。たくさんの方に来ていただき、この大阪工場の魅力を直接伝えられればと思っています。

――それは工場長がずっとやりたかったことですか?

矢野:もちろんそうです。私だけじゃなく、事業も広報も含めての念願です。大阪工場はサントリー創業の工場です。鳥井信治郎の若かりし頃の像があり、この工場をアピールしたいという思いを、皆さんが持っています。歴史の長い工場が、皆さんに見ていただけて、美味しいお酒を作っていることを伝えたいと思っていました。特にスピリッツ・リキュールは様々な種類の製品を出していますけれど、どのように作るのか一般の人にはなかなか知られていません。そこをお伝えできる、そんな場が今回できたことが、本当に嬉しいことです。

――工場をリニューアルして新しくなったタイミングなんですね

矢野:ROKUや翠を含めてジンのブームが来ており、蒸留器の能力が不足しました。蒸留器の能力向上が、最初の検討のきっかけです。ただ単に能力を向上するだけでなく、今回ここをPRもする工場にしていく。そして開発と生産の機能を持ち、新しい商品を世に出して、世界に広めていこうという気概のこもった増設になっています。

リニューアルした大阪工場にて
リニューアルした大阪工場にて
◆チーム全体でボールを落とさない

――このようなオープニングは、バレーボールで毎年迎える開幕戦にも共通するものでしょうか?

栗原:それで言うと、開幕ではMAXに持ってきていないですね。MAXは最後のファイナルなので、バレーは準備期間も短いですし、代表の活動が長いので、選手が戻ってきてチーム作りをするのが2~3週間しかありません。ですので我々の開幕としては、その時のベストではありますが、それがMAXかと言われると、ピークの持っていき方は最後なのです。スタートですから当然勝利にはこだわりますが、ピークは最後に持ってくるようなチーム作りをしています。ただ、選手たちはワクワクしながら開幕を迎えていると思います。

――ワクワクで言えば、GMにとってバレーボールの最大の魅力は何ですか?

栗原:ボールが地面についてはいけないのがバレーボールです。団体スポーツは他にもたくさんありますが、とにかくボールが落ちないようにコートの6人が何とか繋いでいく、というのが特徴です。そのボール落とさないようにすることが、いちばん面白いところだと思います。

――GMは元セッターで、スパイカーが相手の取れないところに打つようにトスを上げてきたわけですが、その時はまた違うんですか?

栗原:もちろん点数を取らないとバレーは勝てないですけれど、逆に言うとボールを落とさなければ負けないというところがあります。チームによって攻撃的なチームと守備的なチームがありますが、守備がしっかりしているチームは大崩れしないと思います。ボールをいかに落とさずに、コート内は6人ですけれど、ベンチやスタッフも含めて、チーム全体でそのボールをとにかく落とさないところが、バレーのいちばん面白いところだと思います。

――工場長から見たバレーの面白さは?

矢野:まず超人的な跳躍力と、運動能力。見ているだけでも最高に面白いですね。あと、流れがあるんです。点が入る時はトントンと入るのに、そのまま行くのかと思えば、相手も連続して取る。流れをどっちに持ってくるか、主導権をどっちが握るのかというところが面白い。その時に声掛けがあるのか、コミュニケーションなのか、私はよくわかりませんが、そういうところが見ていて面白いですね。

バレーボールの魅力を語る栗原GM
バレーボールの魅力を語る栗原GM
◆その決め方が派手であるほど、流れが変わりやすい

――流れを掴むコツはあるんですか?

栗原:なかなかそれは意図的にやろうとしてもできないんですよ。ただ拾ったりするよりも、バーンって決めたり、ブロックでドーンって止めたり、サーブもそうですけれど、決める方で流れが来る。そういう傾向にあると思います。ずっと拾っていても、最後には決めなければいけないので、その決め方が派手であれば派手であるほど、流れが変わりやすいと思います。

――工場長、観戦している時にはどうですか?

矢野:そうかなと思いますね。ピンチの時にピンチサーバーが出てきてバーンって決めると、一気に流れが来るように思います。

――かなり応援には行かれているんですか?

矢野:そうですね、昨年から5回くらい行っていると思います。

――応援に行かれた時は勝っていますか?

矢野:いや、昨シーズンのセミファイナルのウルフドッグ戦では、2セットを取って、これは勝っただろうと思ったら、そこから3セットを取られて負けました。あれこそ流れだなと思いましたね。それが悔しくて、次の日曜日も応援に行ったら勝ちました。それでファイナルまで進みましたが、ファイナルが東京だったので行けませんでした。

――選手以上に負けず嫌いなのでは?

矢野:そうですね。私もスポーツをやっていました。

――何のスポーツをやられていたんですか?

矢野:私はサッカーをやっていました。高校時代にサッカーをやっていて、高校3年生の時にはインターハイにも出ました。

スポーツ経験を語る矢野工場長
スポーツ経験を語る矢野工場長
◆ひとつの方向に向かわせることがリーダー

――バレーボールのマネジメントの面白さは何ですか?

栗原:面白さで言うと、うちのチームは個性的な選手が多いので、実際まとまっているかはわかりませんが、それをまとめることですね。ひとつの方向に向かわせることがリーダーだと思っているので。ただ、みんな大人だし、子どもではないので、やっぱりちゃんとした理由づけとか、会話やコミュニケーションを図ることが大切で、日々そういうことをやっているつもりでいます。

――その前はコーチもやられていて、マネジメント側に移ったきっかけは何ですか?

栗原:普通に社内の人事異動です(笑)。コーチをやって、その後に監督をやる気満々で、監督をやりたいとは伝えていたんですけれど、チームディレクターになって、強化の責任者になりました。GMのひとつ前の役職ですね。そこでチームの強化を任されました。

――工場もひとつのチームですが、工場長はチームの強化、チームのマネジメントが面白いですか?

矢野:面白いですよ。私もスポーツをやっていました。そこでいちばん大切にしたのはコミュニケーションと、何でも言えるような心理的安全性の高い関係性を大切にしていました。特に下級生が多いチームだったので、コミュニケーションをよく取っていました。守備の面では決めごとを作りながら、攻撃面は個性を活かすように話し合うことが大事です。

たぶん工場も一緒で、皆さんでしっかりとコミュニケーションを取って、誰でも何でも言いやすい雰囲気を作った上で、じゃあこういうルールにしようと決めていくことが、安心・安全な製品づくりにも繋がっていると思います。

――サッカーをやっていた時、みんなの声を聞いたり、雰囲気を作ったりというやり方は、当時としては比較的新しいやり方だったんじゃないですか?

矢野:そうですね。私なんかは先輩にガンガンやられたので(笑)、それを後輩にはやらないでおこうと。

栗原:おいくつですか?

矢野:私は49歳です。

栗原:あ、同級生?

矢野:1976年生まれです。

栗原:同級生でしたね(笑)。

同い年のトークが弾む
同い年のトークが弾む
◆大きな目標

――同い年のお二人が、かたやバレーボール、かたや工場でチームづくりを推進しているということですが、バレーボールでのその雰囲気の作り方は、前からあったんですか?

栗原:うちは昔から和気あいあいですよ。ただ、今のGMというポジションは強化だけじゃなく事業もあるので、事業を見ていることが多くなってきていて、そっち側の空気づくりは、まあまあ大変かなと(笑)。ここ数年は結果が出ていて、集客やチケットなどの売上も含めて結果が出ていますけれど、なかなか目に見えない部分も多くて、先ほど矢野さんがおっしゃった環境づくりですね。事務所の中での空気感を和ませるために、バカになってみたり、そういうことはしているつもりです。

競技の方は負けたとしても、我々は年間60試合くらいやっているので、ひとつの負けにずっと落ち込んでいても仕方ないんです。選手も次の日には切り替えていますし、そこは私がどうこう言わずとも、自立はしていると思います。

――GMがチームをつくる上で、いちばん大切にしていることは何ですか?

栗原:簡単なことでもいいんですが、目標をしっかりと共有することかなと思います。

――みんなが同じ目標を?

栗原:そうです。みんなが同じ目標をひとつ持つ。我々で言えば、世界ナンバーワンクラブになるというところです。砕いていけば、ラグビーのサンゴリアスもそうだと思いますが、強く愛されるチームということが、うちのサントリースポーツ内での合言葉です。まずは強く、そして多くの人に愛される、応援いただくチームをつくるということが、バレーとラグビーの目標でもありますね。そういうところをシンプルに、みんなが理解している状況を作れたらいいなと思います。

――工場長にも共通点はありますか?

矢野:共通点がありますね。目標は高く持ちたいと思いますし、大阪工場の製品で世界に出ている商品がたくさんあるので、この工場を世界でお手本になる工場にしたいと方針を掲げて、そのためにどうするかで動機づけをしています。実際に我々の商品の歴史的背景や、商品開発の人がどんな思いで作っているのかを、従業員に知ってもらって、作っているものに誇りを持つ。それにより仕事のやりがいを感じる。良いサイクルができるように、大きな目標から自分のやっている仕事の価値を理解してもらうことは、バレーボールと同じだと思います。

共通の「目標」を語り合う
共通の「目標」を語り合う
◆お酒に関われて幸せ

――バレーボールには若いお客さんが多いですが、それは歴史的なものですか?

栗原:やはり昔から若い女性のお客様、20歳代、30歳代のお客様が来られていて、私が現役の時から変わっていないと思います。ただ最近はファミリー層、男性も増えてきていると思います。また比率で言うと20歳代、30歳代の女性は多いですが、データによると、20歳代の次は50歳代が多いと出ているので、その世代にとっては選手が可愛いという感じなのかなと思います。

――お酒にとって若い世代は?

矢野:若年層のお酒離れが叫ばれています。私はビール工場やRTD (Ready To Drink=栓を開けてそのまま飲めるお酒) を作っている工場にもいました。サントリー・グローバル・スピリッツの海外の、ジム・ビームやラフロイグやボウモアなどの拠点にも訪問させてもらい、お酒の持つ歴史・文化や背景に価値があるのが面白いと思っています。テキーラのサウザのメキシコにある工場にも行ったことがありますが、テキーラ村は原材料のアガベの畑が広がっていて、サウザ工場の中に壁画があり、そこに歴史が書いてあるんです。そういうのを見て飲むと、テキーラは罰ゲームで飲むものじゃないと感じます(笑)。

そういう文化や様々な背景を伝えて、若い方にもお酒を好きになると良いなと思います。この工場でのROKUの作り方を知っていただき、若い方にも味わっていただき、盛り上がっていただければと思っています。昨日、取材に来られたメディアの方は若い方が多くて、みなさんポジティブな感想で帰られ、ポテンシャルはまだまだあるなと思っています。

――バレーボール会場でプロモーションしてみてはどうですか?

栗原:ぜんぜんやってもらって大丈夫です。

――工場長はお酒が好きで、お酒をつくりたくてこの仕事を選んだんですか?

矢野:そうですね。大学は理系で機械工学科だったので、周囲は機械系の会社に就職する人が多かったんです。就職する時にふと考えて、周りを見ると、自動車などメカが好きな人がいっぱいいました。そこで私は何が好きかな?と考えた時に、お酒づくりが面白そうだと思いました。もちろん飲むことも好きでした。

――なぜお酒づくりが面白そうと思ったんですか?

矢野:先輩で他社のお酒の会社に行っている人もいて、そういう道もあるなと思った中で、やはりビールを飲んでいて美味しいと思いましたし、ウイスキーも美味しいですし、こういうものに関わってみたいと思いました。それでサントリーに入社されてもらいました。それ以降はビールに関わったり、ウイスキーに関わったり、こうやってスピリッツやジンに関わって、いろいろなお酒に関われているので、とても幸せだと感じています。

(続く)『世界一を目指す』後半
(続く)『世界一を目指す』後半
  

(インタビュー&構成:針谷和昌)
[写真:サントリー]


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