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サントリーグループのサステナビリティ

Our Focus Areas 気候変動

背景(Context)

サントリーグループにとって、気候変動への対応は、事業継続と持続的成長の観点から最重要課題の一つです。
水や農作物などの自然資源の恩恵に支えられるサントリーグループの事業は、気候変動に起因する水資源不足や農作物収量の低下といったリスクの影響を大きく受ける可能性があります。例えば、主要原料である水の供給不足は工場操業の一時停止による機会損失を招きうるほか、農作物の収量減少は原料調達コストの増加につながります。
一方で、気温上昇に伴い熱中症対策飲料や水飲料の需要が高まるなど、新たなビジネス機会も生まれています。
このようにリスクと機会の双方が存在することから、サントリーグループは2019年にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への支持を表明し、気候変動による事業影響の分析と対策を経営戦略に組み込んでいます。

ガバナンス

サントリーグループでは、取締役会の監督のもと、気候変動課題への対応を推進する明確なガバナンス体制を敷いています。取締役会は、グローバルサステナビリティ委員会(GSC)やグローバルリスクマネジメント委員会(GRMC)の報告を受け、気候変動に関する戦略や取り組み状況を定期的に監督しています。GSCは水資源や気候変動などサステナビリティに関する中長期戦略を審議し、GRMCは全社のリスクマネジメント体制の中核として気候変動リスクを含む重要リスクを議論・モニタリングします。また、主要な事業会社ごとにリスク管理委員会やサステナビリティ委員会を設置し、事業単位でも気候変動への具体的な戦略や施策の立案・実行を担っています。両委員会で検討された重要事項は取締役会に付議され、取締役会で最終的な審議・決定が行われます。
また、経営陣においても気候変動対応の責任と取り組みが経営戦略に統合されています。代表取締役社長が気候変動対応の最高責任者を務め、サステナビリティ担当役員が気候関連リスク・機会の評価と管理を所掌しています。役員報酬の評価指標にはサステナビリティ目標が組み込まれており、気候変動目標の達成状況が経営陣の評価・報酬にも反映される仕組みです。さらに、取締役会では四半期に一度、気候変動対策の進捗やリスク状況の報告を受けるとともに、外部有識者を招いた勉強会を定期開催し、最新の知見に基づく助言を経営に取り入れています。こうした体制により、気候変動への取り組みが企業の経営戦略や意思決定プロセスに深く組み込まれています。

戦略とリスク管理

サントリーグループは気候変動に関する戦略として、脱炭素の推進と事業レジリエンス(気候変動への適応力)強化の両面からアプローチしています。まず、気候変動がもたらすリスクと機会を網羅的に洗い出し、短期(0~3年)・中期(3~10年)・長期(10~30年)の時間軸で事業影響度と発生頻度を評価するシナリオ分析を実施しました。
温暖化が進行するケースとしてIPCCのRCP8.5シナリオ、脱炭素が進むケースとして国際エネルギー機関(IEA)のNZE2050シナリオなどを用い、将来の事業環境を想定しています。
その結果、炭素税の導入によるコスト増加、生産拠点への水供給不足、農作物収量減による原材料調達コスト増が特に事業に大きな影響を及ぼし得るリスクであると特定されました。

財務影響の詳細は「TNFD/TCFD提言に基づく開示」をご覧ください

特定した主要リスクに対して、サントリーグループは以下のような戦略的施策を講じています。

  • 移行リスク(炭素コスト増)への対応:
    2021年から社内に炭素価格(内部カーボンプライシング)制度を導入し、設備投資の意思決定に炭素価格を組み込んでいます。また、2030年までに脱炭素を促進する 1,000億円規模の投資 を計画し、再生可能エネルギーへの転換や省エネルギー設備の導入などを積極的に進めています。この投資により、2030年時点の年間温室効果ガス(GHG)排出量を約100万トン削減できる見込みです。
  • 物理的リスク(水資源)への対応:
    全ての自社生産拠点を対象に、所在地域の水資源状況のリスク評価(ウォーターリスクアセスメント)を実施し、水ストレスの高い地域を含む各工場で水使用リスクを把握しています。そして、工場での水使用効率向上や削減に取り組むとともに、水源涵養活動によって工場で使用する水量の100%以上を地域に還元することを目指す目標を掲げています。
  • 物理的リスク(原料調達)への対応:
    原料となる農作物の将来の収量変化を気候モデルに基づき予測・評価し、主要原料の安定調達戦略を策定しています。サプライヤーをはじめとしたビジネスパートナーと協働した持続可能な農業の試験導入などを進め、気候変動による原料調達への影響を緩和する対策を講じています。
  • その他のリスクへの対応:
    大型台風や集中豪雨による洪水などの急性リスクについても、全自社拠点でハザードリスク評価を行い、防災計画や事業継続計画の整備に反映させています。

一方、気候変動はサントリーグループに新たな機会ももたらします。平均気温の上昇や猛暑の増加により、熱中症対策飲料や水飲料へのニーズが高まることが予想されるため、サントリーグループでは需要拡大に応えるべく生産能力の増強や製品ラインナップの強化に投資しています。また、気候変動への積極的な取り組みは企業ブランド価値の向上につながり、環境意識の高い消費者からの支持拡大という機会にもなります。

サントリーグループは、森の水源涵養機能の向上と生物多様性の再生を目的とした活動である「サントリー 天然水の森」や次世代環境教育プログラム「水育(みずいく)」を長年継続し、こうした活動への社会的認知が当社ブランドへの信頼醸成と市場での優位性につながるよう努めています。さらに、資源循環の観点では、使用済みペットボトルの高度リサイクル技術開発などイノベーションを通じて、原材料コスト削減とGHG排出量削減の両立も追求しています。

サントリーグループの気候変動戦略およびリスク・機会への対応は、統合的なリスク管理体制の中で実行されています。GRMCを中心にグループ全体のリスクを網羅的に管理し、各事業会社にもリスク管理委員会・チームを設置し、気候変動リスクを含む重大リスクの特定・評価・モニタリングを年次サイクルで実施しています。GRMCおよびGSCで協議された重要事項は取締役会に上程され、経営陣による承認・監督のもとで対策の計画・実行・検証(PDCA)が継続的に行われています。このようなガバナンス体制により、気候変動リスクに機動的かつ計画的に対応し、同時に気候関連の機会を事業戦略へ確実に取り込むことを目指しています。

指標と目標

サントリーグループは、気候変動に対する取り組みの進捗を測るため明確な指標と数値目標を設定し、公表しています。長期ビジョン「サントリー環境ビジョン2050」においては、バリューチェーン全体で、GHG排出の実質ゼロを目指すことを掲げ、中期計画「環境目標2030」では2030年をターゲットとした具体的なGHG排出量の削減目標を定めています。
「環境目標2030」で掲げるGHG削減目標は、パリ協定の1.5℃目標達成に整合する水準として Science Based Targetsイニシアチブ(SBTi)による認定 を受けています。

主な目標値は以下のとおりです。

  • 環境目標2030:
    自社拠点でのGHG排出量を50%削減、バリューチェーン全体におけるGHG排出量を30%削減
  • 環境ビジョン2050:
    バリューチェーン全体で、GHG排出の実質ゼロを目指す
  • 2019年の排出量を基準とする

これらの目標達成に向け、サントリーグループは毎年GHG排出量の実績と進捗を開示し、KPIに基づくモニタリングを徹底しています。2019年を基準年としたGHG排出量(スコープ1・2・3)の算定を行い、削減対策の効果を数値で確認しています。実際の進捗として、2024年度時点でスコープ1・2排出量は2019年比 32%削減、バリューチェーン全体では 13%削減 を達成しており、2030年目標達成に向け順調に進んでいます。

また、事業所での再生可能エネルギー導入も加速しており、グローバルで63カ所の主要自社拠点において、2022年までに使用電力の100%再生可能エネルギー化を実現しました。
その他、エネルギー効率や再エネ比率、水使用量といった環境KPIを設定し、気候変動緩和・適応の取り組み状況を定量的に評価しています。今後もこうした指標に基づき進捗を管理しつつ、2050年ネットゼロ実現に向けたロードマップに沿って着実に施策を講じていきます。

取り組み

サントリーグループはバリューチェーン全体でGHG排出削減と気候変動への適応に取り組んでいます。2050年までにバリューチェーン全体のGHG排出の実質ゼロを目指し、2030年までに自社拠点(スコープ1・2)で排出量50%削減(2019年比)、バリューチェーン全体(スコープ3を含む)で30%削減(2019年比)する目標を掲げています。これらの目標達成に向け、原料調達から生産、物流、お客様への提供に至るまで、各段階で以下のような施策を実施しています。

  • 原料調達・サプライチェーン:
    原材料の生産や調達段階では、ビジネスパートナーとの連携によりGHG排出量削減を推進しています。毎年、主要なお取引先を対象とした方針説明会を開催して、サステナビリティへの取り組みを共有するとともに、アンケートや対話を通じてパートナーの排出削減目標設定を支援しています。また、再生農業などの手法を取り入れ、原料生産に伴うGHG排出の低減や気候レジリエンス向上にも取り組んでいます。例えば、麦芽原料の大麦では海外のパートナー企業・農家と協働し、土壌の再生や農法改良によって農業由来のGHG排出量削減と生物多様性保全を両立させる取り組みを進めています。容器包装材料においても、リサイクル素材の活用や軽量化を推進し、原料調達段階でのカーボンフットプリント低減に寄与しています。
  • 生産(自社拠点):
    自社の工場や事業所(スコープ1・2)からの排出量削減に向けて、省エネルギーの徹底と再生可能エネルギー(再エネ)の導入を加速しています。設備投資の判断には内部炭素価格(カーボンプライシング)を導入し、GHG排出量の削減効果の高いプロジェクトを優先的に実行しています。国内では太陽光発電設備の設置やバイオマスボイラーへの転換に加え、工場への大規模蓄電・水素システムの導入など、次世代インフラの活用にも挑戦しています。たとえば、「サントリー天然水 南アルプス白州工場」および「サントリー白州蒸溜所」では16メガワット級の再エネ由来の水素製造(P2G)システムを2025年稼働予定です。また、「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」では太陽光やバイオマス利用、再エネ電力調達とオフセットにより、当社国内初のCO2排出実質ゼロを実現しました。こうした先進的な取り組みに加え、全拠点でのエネルギー効率改善や設備の高効率化を推進し、2030年目標の達成を目指しています。
  • 物流:
    製品の輸送・配送に伴うGHG排出量削減にも、物流パートナー各社と協力して取り組んでいます。工場から配送先までの輸送距離を短縮するため、生産拠点と販売エリアの最適配置の推進や、共同配送・コンテナ共同利用など他社との協業による効率化を図っています。トラック輸送においては、大型車両への積載率向上や代替燃料車・鉄道輸送への切り替えなどで、従来よりGHG排出量の少ない輸送を実現します。物流拠点では、パートナー企業と連携して「グリーン経営」認証やISO14001の取得を進め、倉庫・車両ごとのエネルギー使用量やGHG排出量をモニタリングして改善につなげています。こうした施策により、物流分野での環境負荷低減と効率向上を両立させています。
  • 製品・お客様への貢献:
    気候変動への適応策として、製品やサービスを通じた社会への貢献にも取り組んでいます。例えば、気温上昇による熱中症リスクに対応するため、熱中症対策に適した機能性飲料の開発・提供を進めています。また、スーパーマーケット店頭や小学校での熱中症予防セミナーなど、消費者や地域社会に向けた啓発活動も継続しています。さらに、国際的なイニシアチブへの参画を通じて、世界全体の気候変動対策にも貢献しています。サントリーグループは「Science Based Targets(SBT)」で1.5℃目標の認定を取得し、「Business Ambition for 1.5℃」に署名するとともに、TCFD提言への賛同とそれに基づくシナリオ分析・情報開示を実施しています。