2025年9月10日(水)~11月3日(月・祝)
※作品保護のため、会期中展示替を行います。
※各作品の出品期間は、出品作品リスト(PDF) をご参照ください。
※本展は一部の作品に限り、展示室内の写真撮影が可能です。
※展示作品の中には一部凄惨な場面が描かれている作品があります。予めご了承ください。
※本展はあべのハルカス美術館(2023年)、鳥取県立博物館(2024年)にて開催された展覧会の巡回展です。
絵金は文化9年(1812)に高知城下・新市町(現・はりまや町)の髪結いの子として誕生したといわれる。「絵金」は「絵師の金蔵さん」の略称・愛称であり、本人が名乗ったことはない。幼少時より画才のあった金蔵は、同じ町内の南画家や土佐藩御用絵師に絵を学んだ。18歳のとき、土佐藩主の息女・徳姫の駕籠かきの名目で江戸にのぼり、駿河台狩野派の土佐藩御用絵師・前村洞和の下で3年間修業する。帰郷後、土佐藩家老の御用絵師となった金蔵は、藩医であった林姓を買い取り、林洞意を名乗った。町人からの大出世だったが、33歳の頃、林姓と御用絵師の身分をはく奪され、城下を追放されてしまう。贋作事件に巻き込まれたという伝えもあるが、定かではない。以降、町医者の弘瀬姓を買い取り、弘瀬柳栄となり、後には雀七と改める。金蔵と弟子筋の手による芝居絵屏風や絵馬提灯は多数残るが、中年以降、いつどこで制作していたのか、確かな史料はない。赤岡(現・香南市赤岡町)の叔母の家に一時滞在していたと伝えられ、赤岡の北に位置する須留田八幡宮の神祭に奉納された芝居絵屏風が代表作である。墓碑銘によると金蔵から絵の手ほどきを受けた者は数百人いたとされる。明治9年(1876)、数え65歳で亡くなった。
※展覧会会場では、章と作品の順番が前後する場合があります。また、展示内容は予告なく変更される場合があります。
2013年の報告書(絵金蔵運営委員会)によると、約200点の芝居絵屏風類が高知県に現存し、その多くが二曲一隻の形態です。一部が美術館・博物館に収蔵されている他は、神社や公民館、自治会などによって管理され、神社の夏祭りで使用されてきました。絵金の没後も絵金の芝居絵文化は継承され、昭和に入ってからも新たな屏風が作られていたと言われています。そのため、残された屏風の画風には、絵金風ながらも弟子や孫弟子たちの様々な個性が見られるものもあります。
本章では、絵金の基準作として名高い、香南市赤岡町の4つの地区が所蔵(絵金蔵所管)する芝居絵屏風を展示します。これらの屏風は、毎年7月に行われる須留田八幡宮神祭および土佐赤岡絵金祭りでは商店街の軒下に飾られるものです。
また、御用絵師であった絵金は、芝居絵屏風以外の作例も多く残しました。風俗・歴史人物・芝居の物語などを表した掛軸や絵巻、安政元年(1854)に土佐を襲った大震災を描く画帖などを通じて、その多様な画力を紹介します。



絵金の芝居絵屏風を神社の夏祭りに飾る風習がいつ始まったか判然としませんが、安政5年(1858)の年記がある保存箱が確認され、幕末頃から大いに流行していたようです。現在、約10か所の神社で、屏風を絵馬台(台提灯)に飾る昔ながらの夏祭りが行われていますが、氏子の高齢化や屏風の劣化などの理由により、その数は年々減少しています。
高知市朝倉の朝倉神社では、夏祭りの際に山門型の絵馬台が6台組み上げられ、拝殿に向かって整列する様子は非常に壮観です。香美市土佐山田町の八王子宮には、大型の「手長足長絵馬台」があり、近年では2019年の夏の大祭で披露されました。高知市春野町芳原の愛宕神社の夏祭りでは2024年に絵馬台が数年ぶりに組まれました。本章では、東京で高知の夏祭りの雰囲気を味わえるよう、これらの神社の絵馬台を展示室に再現するとともに、高知の夏祭りのもうひとつの風物である絵馬提灯を展示します。行燈絵とも呼ばれる絵馬提灯は、毎年新調されたため、現存作は非常に少なく、「釜淵双級巴」は、近年発見された作品です。



本章では、屏風や絵巻、軸物以外の絵金の作例と、絵金と深い関わりのあった絵師の作品を紹介します。
御用絵師、町絵師の各時期に、絵金に師事した弟子は数多く、絵金夫妻の墓(高知市薊野)の碑文には、「門人や業を受けた者、数百人が其の筆法を世に行う」(原文は漢文)とあります。その一人河田小龍は、幕末土佐きっての知識人で、アメリカから帰国したジョン万次郎から聞き書きした漂流記『漂巽紀畧』を土佐藩主に献上したことで知られ、坂本龍馬とも交流がありました。また、野口左巌は、現在の香南市野市町の紺屋で、本名が金蔵であったため「野市絵金」と呼ばれました。
土佐では男の子の初節句に、武者絵や芝居絵の描かれた横断幕のような幟を門前に飾る習慣がありました。その多くが紙製で、ほとんど現存していません。「近江源氏先陣館 盛綱陣屋」は、俳句とともに絵金の号「友竹」が書かれており、絵金の基準作となる貴重な作品です。

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