2025年7月2日(水)~8月24日(日)
※作品保護のため、会期中展示替を行います
※各作品の出品期間は、出品作品リスト(PDF) をご参照ください
※本展は一部の作品を除き、撮影可能です
※展覧会会場では、章と作品の順番が前後する場合があります。また、展示内容は予告なく変更される場合があります。
本章で注目するのは、日本で古くから親しまれてきた「尽くし文」や「ものづくし絵」です。
「尽くし文」とは、同じ意味や種類のモチーフを集めた文様のこと。その代表格である「宝尽くし文」を表した「色絵寿字宝尽文八角皿」の見込には、15種もの宝物がぎゅうぎゅうに詰まっています。あふれるほどの幸福への願いを込めた本作を見ていると、どんな気分になれるでしょうか? 一方、「志ん版車づくし」は明治時代に普及した鉄道馬車や自転車など、「車」と名の付く物を集めた「ものづくし絵」の作例です。愛らしいことに、本作の登場人物は皆、猫の姿で表されています。こうした遊び心のある表現には、物事に関する知識を楽しみながら学ぼうとする精神が感じられます。
本章では、「○○尽くし」デザインの世界観を拡張するべく、何が、どこに、どう表されているのかを、くどいほど説明し尽くした「キャプション尽くし」の展示を試みます。ぎゅうぎゅうに配置されたキャプションを読みながら、作品をその細部に至るまで見尽くすことで、知的好奇心も満たされるはずです。
表彰式や結婚披露宴などのお祝いの場で、金屛風がジグザグに折り曲げられている様子を見たことはないでしょうか?こうした屛風は、空間を華やかに彩り、おめでたい雰囲気を演出する役割を担っています。
そもそも屛風は、空間を区切るパーテーションとして、日常生活の中で使われてきました。例えば、「石山寺縁起絵巻(模本) 第五巻」では、夜のお堂で眠る女性を囲うように、屛風がぐるりと立て回されています。あるいは「鼠草子絵巻 第三巻」では、入浴する姫君の姿を屛風で隠しています。注目したいのは、これらの絵画に描かれた屛風が、ジグザグではなく不定形に折り曲げられていることです。
本章では、そうした歴史的背景を踏まえ、空間の大きさや用途に応じて自由自在に折り曲げられてきた屛風を再現展示します。ジグザグに、しかも整然と折り曲げられた屛風を見慣れた目には少し異様に映るかもしれませんが、いつもとは変わった折り曲げられ方のおかげで、モチーフの遠近感が強調されて見えるといった新鮮な発見もあることでしょう。
昔も今も恋する心はざわめくもの。当館の収蔵品の中にも、豊かな恋愛模様が繰り広げられています。
例えば、「鼠草子絵巻」には人間に恋する鼠が登場します。主人公の鼠の権頭は、清水寺の観音様のご加護によって人間の姫君と結婚したものの、正体がばれると姫君に逃げられてしまい、悲しみのあまり出家します。姫君の嫁入り道具をひとつひとつ並べて和歌を詠み、さめざめと泣き暮れる権頭の様子は哀愁を誘います。あるいは、西川祐信による「美人図」は一見、身繕いをする女性を主題とした作品に思われます。ここで注目すべきは、彼女が視線を落とした先にいる、衝立に描かれた古代中国の詩人・陶淵明です。実際に陶淵明が詠んだ漢詩に基づいて本作を読み解くと、衝立の中の陶淵明から女性に対する、燃えるような恋心が浮かび上がってきます。
本章では、人物相関図や場面解説を手掛かりに、作品の主題となったり密かに暗示されたりした様々な愛のかたちをご覧いただきます。時に謎解きの面白さを味わいながら、複雑怪奇な恋愛模様をじっくりご堪能ください。
立体的な美術品に表された図様を把握することは簡単ではありません。作品をぐるっと一回りした上で、目に映ったイメージを頭の中で再構成する必要があるからです。
本章で注目したいのは、まさしく立体作品の図様です。例えば、「紫陽花螺鈿蒔絵重箱」は蓋と身の全面に、太鼓橋の架かる濁流を背景として、紫陽花の咲き誇る川辺の風景が表されています。この風景を展開図に起こして本作と見比べると、川波の一番高い部分を重箱の角に据えることで、波の立体感を強調している様子がわかります。あるいは「兎蒔絵茶箱」は、デフォルメされた計4羽の兎の姿が微笑ましい作品です。本作を展開図にしてみると、まるでコマ撮りのアニメーションのように、兎がころころと飛び跳ねて見えます。
本章では、漆工、やきもの、ガラスなどの立体作品を360度から見られるように展示した上で、各作品とその展開図を比較できるような工夫を凝らします。両者を比較して見ることは、図様の繋がり方や装飾技法の細部を理解するだけでなく、作り手の工夫や意図を発見するヒントになるでしょう。
針と糸を使って手を動かすことで自分の心が整っていく。手芸好きな人であれば誰しもそんな経験があるでしょう。本章で取り上げるのは、現在では手芸の一分野としても知られる「津軽こぎん刺し」です。
津軽こぎん刺しは江戸時代後期以降、現在の青森県津軽地方の農村の女性が育んだ技法のこと。1mmにも満たない麻布の経糸を奇数目に拾いながら、緯糸にそって木綿糸を刺し綴るという作業を一段ずつ繰り返すことで、織物のように美しい幾何学模様を表しています。こうした模様を構成するのは、「モドコ」と呼ばれる基礎的な単位模様です。約40種あるとも言われるモドコには「てこな(蝶)」「べこ(牛)刺し」など、女性たちの身近にあった物の名前が付いています。
本章では、実際の作品に表されたモドコを観察したり、その模型に触れることで、モドコの名前や形に親しみます。面白いことに、モドコにはしばしばアレンジや刺し間違えが見出せます。小さなモドコの細部を見ていくと、刺すことの喜びやちょっとした苦しみなど、刺し手の気持ちに近づけるかもしれません。
好きな物を集めて、それらを並べた様子を見ているだけで心が満たされるという気持ちは、時代を問わず、コレクターと呼ばれる人々に共通する喜びと言えます。
例えば、18~19世紀の絵師の作品15図を貼り込んだ「棲鸞園画帖」は、とある人物が10数年かけて集めたコレクションから粋を選んだものと伝わります。大きな画帖を一枚一枚めくるたびに、収集への情熱や自負がうかがえるようです。
ところで当館の収蔵品には、散逸せずに残ったコレクターの作品群が多数含まれます。とりわけ、彫刻家・朝倉文夫氏が集めた日本・中国・ヨーロッパのガラス約300件は、質量ともに国内最高峰のレベルを誇ります。また、とある皮膚科医が集めた700件余りの「髪飾用具並びに文献類」は、種類や材質ごとに収納箱に整理されており、作品と真摯に向き合うコレクターの心が感じられます。
本章では、収集にまつわる逸話や収納箱などをも通して、コレクターたちの愛と執念に迫ります。鑑賞後には思わず何かを集めたくなるとともに、今ここに作品が在ることの尊さを実感する機会となれば幸いです。
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