開館50周年記念「美を結ぶ。美をひらく。」 II
不滅のシンボル 鳳凰と獅子

2011年6月8日(水)~7月24日(日)

※作品保護のため会期中、展示替をおこなう場合があります。
※各作品の展示期間については、美術館にお問い合わせください。

出展作品リスト(PDF)

A 鳳凰のイメージの展開

◆鳳凰誕生 古代における鳳凰の成立
鳳凰は、古代中国で生み出された空想の鳥として日本へ伝わり、以来、高貴なシンボルとして大切にされてきました。ここでは鳳凰が生み出された古代中国の銅鏡などの遺品から、飛鳥、白鳳時代に始まる日本の鳳凰の造形表現の成立と展開をたどります。


◆鳳凰降臨 平安時代から中世までの鳳凰の変遷
鳳凰という空想の鳥のイメージを日本文化に探るとき、古くから建築装飾や工芸、染織にいたるまで、様々な造形表現が試みられ、その姿が洗練されてきました。優れた天子がこの世に現れる時に出現すると伝えられてきた鳳凰がこの世に降臨した姿は、鳳凰に託してきた人々の想いを集約しています。


◆鳳凰飛翔 中国と日本における鳳凰イメージの展開
鳳凰は、中国においても高貴な霊鳥として美術の主要なテーマであり続けました。その影響を受けた日本においても、鳳凰は格式の高い文様として重視されたほか、漆工や染織、陶磁器の意匠にその翼を広げることになります。とくに「桐竹と鳳凰」の組み合わせは近世、近代に至るまで華麗な装飾として好まれ、空想の鳥ならではの独創的な表現が多数生み出されています。

B 獅子のイメージの変遷

◆獅子の登場 古今東西にわたる足跡
獅子の図像はもともとライオンに由来しますが、ライオンが生息しない中国へ流入した段階で空想をもとに装飾が施され、いわゆる「唐獅子」として強力な存在感をもつようになります。一方、それ以前に西アジアからインド、中国などを経て広く伝播したライオンの図像においても、立派なたてがみと力強い猛獣としての属性は決して失われることなく、その勇姿を見せています。


◆狛犬と獅子舞 魔除けの動物としての獅子
ライオンは全世界的に外敵から身を護ってくれる存在として、城砦の門や玄関にしばしば造形化されました。日本においても獅子は狛犬と組み合わされ、宮中や社前に置く風習が生まれています。一方、祭礼や行事に登場する獅子舞は邪気を払う魔除けの動物として民衆の暮らしの中に根付き、広く獅子が親しまれる契機となりました。


◆仏教における獅子 文殊菩薩と獅子
獅子は仏教の教えを護持する動物として、仏教図像においても重要な役割を担っています。中でも釈迦三尊像において、普賢菩薩が白象を、文殊菩薩は獅子を眷属(けんぞく)として台座にしている点は特筆されます。とくに文殊菩薩像における獅子は、時代によってその姿を変化させて来ました。これによって獅子は、何よりも仏教を護持するありがたい動物として崇拝の対象となったのです。


◆獅子の造形 「唐獅子に牡丹」のイメージの広がり
我が国における獅子は半ば空想の動物として、各時代の芸術家の創造欲をかきたててきました。狩野派が好んで制作した「唐獅子図屏風」や甲冑武具など、様々な工芸の意匠にも取り入れられています。これらは威風に富んだ猛獣としての表現から、犬や猫を思わせる愛玩動物的な獅子に至るまで、ジャンルを超えて豊かな広がりをみせています。


◆獅子の乱舞 芸能と獅子
室町時代に成立した能楽『石橋』は、紅白の牡丹の花咲くもと、御代を言祝ぎ獅子が舞います。江戸時代に能が式楽になるに及び、獅子の舞が歌舞伎舞踊に採り入れられ、いわゆる「獅子物」が生まれました。これにより江戸時代を通して、獅子は勇猛な動物としてよりは華麗な舞を舞う、めでたい動物としてのイメージが強調されるようになります。近代の歌舞伎においてたてがみを振り回しながら踊る『鏡獅子』や『連獅子』は、現代日本を生きる日本人にとっての獅子のりりしく晴れやかなイメージを決定づけています。


◆ライオンと獅子 蘭学の時代から近代へ
江戸時代も半ばとなり18世紀に入ると、蘭学の興隆とともに実物のライオンに関する情報も日本にもたらされました。ヨンストン『動物図譜』におけるライオンの図は、小田野直武(1749~1780)などによって洋風画の題材となり、幕末期に至るまで、唐獅子とライオンが人々の暮らしの中で共存する形が生まれたのです。


◆不滅のシンボル 鳳凰と獅子 イマジネーションの彼方へ
現代の暮らしの中においても、鳳凰と獅子は、キャラクターやシンボルマークなどとして、実に多様な姿を見せています。古代から現代に至るまでの壮大な文化史の流れの中で、強い存在感を発揮しながら、絶えず更新され、継承されて来た鳳凰と獅子の姿には、その時代を生きた人々の祈りや誇りが託されていたと言えます。まさしく不滅の生命をもつ鳳凰と獅子の物語は、世代を超えて、これからも受け継がれて行くことでしょう。

※本サイト内の記述、画像の無断転載・転用を禁止します。