従業員との「日常的なつながり」が健康支援の質を高める 産業保健師の95%が期待する、その理由と仕掛け

従業員との「日常的なつながり」が健康支援の質を高める 産業保健師の95%が期待する、その理由と仕掛け

健康経営を推進する人事・労務担当者にとっても、施策の浸透や産業保健職が動きやすい環境づくりは共通の課題です。特に、産業保健職と従業員との日常的な接点づくりは大きなテーマです。
面談や保健指導といった限られた場面だけでなく、普段の会話の中で健康を話題にできる関係をどう育てるか。サントリープラスを活用した企業の事例から、そのヒントを探ります。

第1章:アンケートデータから浮き彫りになる産業保健師が思うリアルな課題

効果的な施策を展開するためにも、まずは現場を支える産業保健師の視点に注目してみましょう。ウェブアンケート(※)の結果から、従業員とのコミュニケーションにおける現場のリアルな意識を探ります。

※保健指導リソースガイド「産業保健活動における「従業員との関係構築」および「健康施策推進」に関する実態調査」(2026年4月実施)

<コメント:亀ケ谷律子氏(保健師・HSプランニング代表)>

データから見る現状① 日常的なコミュニケーションについて

日常的なコミュニケーションについて

昨今では、労働者を取り巻く環境がAI活用の加速化などにより多忙となるに伴い、産業保健職の業務も増加傾向にあります。将来的な業務効率化を目的とした健康情報の一元化やシステム化に向けた作業の増大、健康経営などの外部認定に必要な根拠資料やデータ作成など、机上業務が増えていることが要因として挙げられます。
一方、健診事後フォローやメンタルヘルス対策、健康教育などの本来業務は減少することなく、高齢者雇用や労働時間管理に伴う新たな健康課題への対応も求められています。これらの要因が重なり、業務以外で従業員と日常的なコミュニケーションを図る時間の確保が困難である現状が、今回のアンケート結果から読み取れます。
この問題の解決には、医療職個々の努力に頼るだけでは限界があるため、組織的な仕組みや体制・環境づくりを改めて検討し、構築する必要があります。

データから見る現状② 日常的な接点による効果への期待

日常的な接点による効果への期待

従業員との接点を持つことで、個々の状況に即した専門知識や技術の提供が可能となるにとどまらず、得られた情報を集約・分析することにより、部署や労働形態に合わせたポピュレーションアプローチの展開も可能となります。これにより、より多くの従業員との直接的・間接的な関与が期待できます。

コミュニケーションのハードル① 生活導線の壁

生活導線の壁

従業員にとって会社は労働の場であり、健康活動を主目的とする場ではありません。しかし、「誰もが利用する場(生活導線)」での保健活動が可能となれば、従業員が無理なく保健サービスを享受する機会が増えると考えられます。
これは多くの企業が抱える課題であるため、関連学会や各種機関から好事例が示されています。どのような仕組みやツールを活用して壁を乗り越えるか、他社の良好事例を参考にしつつ、産業保健職の努力に任せるだけでなく、健康経営などの社内プロジェクトを活用しながら知恵を出し合い、自社に適合する戦略を構築する必要があります。

コミュニケーションのハードル② 会話の壁

会話の壁

従業員には与えられた業務遂行の義務があります。また、上司と部下、教師と生徒、医師と患者など、人々にはそれぞれの立場や役割があり、自らの努力では変えられない関係性が存在するため、そもそも「気軽」な話には限界があるものです。それを認識したうえで気軽に話せるテーマを考えるとなると、それぞれの業務や役割・関係性に関連したテーマを選ぶほうが、特に初対面に近い場合では違和感が軽減されます。
従って、従業員が産業保健職と気軽に話せるテーマは、健康や安全、食や休息などが自然であり、こうした会話の中から信頼が生まれてはじめてそれ以外の気軽な話題が可能となります。
しかし、この壁を乗り越えるには長い時間と努力が必要です。それを短縮できるのが、共通の話題となり得る環境やツール、仕組みです。社員食堂のメニューや休憩場所の自販機などはその一例であり、こうした場所でのコミュニケーションが良好事例として取り上げられやすい理由でもあります。

従業員との『日常的なつながり』による効果

従業員との『日常的なつながり』による効果

業務あるいはそれ以外のきっかけで相手と時間や空間を共にすることで、2回目以降は「他人」から「面識のある人」へと変化します。そこから会話が生まれ、互いを知り、積み重なれば職種だけでなく人柄も理解され、親しみや信頼が増していきます。
産業保健職は、こうした関係を持てる従業員が増えることで保健活動が強化され、従業員の健康度のさらなる向上が期待できると考えられます。

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総括コメント:産業保健職の力を引き出す「場」と「仕掛け」

今回のアンケート結果から、産業保健師をはじめとする産業保健職は、従業員との日常的なつながりが保健活動の質を左右する重要な基盤であると強く認識していることが明らかになりました。形式的な面談だけでは把握しきれない“生の情報”を得られることが、より的確で実効性の高い支援につながるためです。実際に、日常的な接点があることで業務が円滑に進んだ経験を持つ保健職は多く、自然なコミュニケーションの価値が広く共有されています。

一方で、こうした「日常的なつながり」を生み出すことは容易ではありません。アンケート結果からは、従業員の生活導線上に保健活動が入り込めていないこと、また業務以外で気軽に話せるテーマが少ないことが、自然なコミュニケーションを阻害する二大要因として浮き彫りとなりました。従業員にとって会社はあくまでも働く場であり、健康相談を主目的に立ち寄る場所ではありません。さらに、立場や役割の違いから、初対面に近い関係で「気軽な会話」を生み出すことには構造的な限界があります。こうした背景から、産業保健職が日常的な接点を持ちたくても、現実には接触機会が生まれにくい状況が続いていることが伺えます。
加えて、産業保健職自身の業務量も増加しています。AI活用やシステム化に伴う新たな事務作業、健康経営に関するデータ作成、法改正への対応など、机上業務は増え続けています。本来業務である健診フォローやメンタルヘルス対応は減らないため、個々の努力だけで日常的なコミュニケーションを確保することには限界があることが示唆されました。

こうした状況を踏まえると、産業保健職が従業員と自然に接点を持てる環境を整えることは、個人の工夫に委ねるのではなく、組織として取り組むべきテーマであると言えます。健康経営が企業の重要課題として位置づけられる今こそ、社員が気軽に立ち寄れる空間づくりや、共通の話題が生まれる仕掛け、産業保健職の存在を自然に認知できるイベントや対話の機会など、日常的な接触を生み出す環境整備を戦略的に進める好機です。
産業保健職の専門性は、従業員との接点があってこそ最大限に発揮されます。企業としてその力を引き出す環境を整えることは、従業員の健康度向上のみならず、労働生産性や組織の持続的成長にも寄与する重要な投資であると捉えられます。

亀ヶ谷様の紹介

亀ケ谷律子氏(HSプランニング代表、保健師)
東京医科歯科大学大学院修了(医療政策学修士)。養護教員経験後、(公財)神奈川県予防医学協会、(公財)結核予防会、(公社)日本看護協会のほか、行政や企業等に保健師として勤務。
2009年HSプランニング代表。東京都や神奈川県を中心とした企業・組織等に対する産業保健業務や健康支援事業に取り組むとともに、産業保健師のキャリア形成や現任教育に尽力。

第2章:サントリープラスで「生活導線の壁」を突破した実例

アンケートでは、実に95%の産業保健師が「従業員との日常的な接点があれば、専門職としての活動の質が向上する」と回答しています。このように日常的な接点がもたらすメリットを実感している一方で、現実には日々の関わりを増やすための「生活動線の壁」(76%)や「会話の壁」(56%)をどうクリアするか、という課題に直面しています。
このような「壁」をどう乗り越えるかは、健康経営を進める多くの企業が直面しているテーマです。

写真:従業員と産業保健師がアプリを通じて会話する様子

写真:従業員と産業保健師がアプリを通じて会話する様子

富山県射水市に拠点を置き、自動車部品などを手がけるアイシン軽金属株式会社では、2022年より健康推進グループによる従業員向けの「AKスマートプロジェクト」を始動し、健康経営を推進してきました。一方で、施策そのものは行っていたものの、「従業員の健康行動に結びつきにくい」という悩みもありました。

そこで2023年にサントリープラスを導入し、“歩こうフェス”などを展開した結果、2024年度には全社における特定保健指導実施率が89.5%に向上。行動変容率も「実行期+維持期」において前年比で3.6ポイントアップしました。
同社安全健康推進部 健康推進グループの健康推進主査で、保健師・心理相談員の今度悠樹さんは、サントリープラス導入後の変化について「会社全体としてメタボの人、予備群の人も減ってきました。また、直近の健康診断では、BMI25の人の割合が減った一方で、『運動習慣あり』と回答した方が大きく増えていました」と話します。
そのような結果をもたらしたのは、サントリープラスが従業員にとって、健康行動のハードルを大きく下げた点にも理由がありました。

「サントリープラスのアプリを毎日、開いて健康タスクのボタンを押す。それだけで、その人はもう“健康を意識して行動した人”なんです。この自己肯定感を積み重ねられる仕組みが、サントリープラスの最もユニークで、素晴らしい点だと思っています」(今度さん)

現在は多くの従業員がアプリをインストール済み。そのため保健師が直接声をかける場面以外でも、従業員がアプリを通じて健康を意識し、行動を変えるきっかけが生まれ続けているのです。
さらにサントリープラスは保健師と従業員とのコミュニケーションにも好影響をもたらしました。安全健康推進部 健康推進グループ 健康管理チームの保健師、樋口由里子さんによると「特定保健指導の実施率も向上しています。私たち保健師が、サントリープラスという共通の話題を持って従業員に接することで、『最近アプリやってる?』『ポイント貯まった?』といった会話からスムーズに本題に入れるようになりました」とのこと。
また樋口さんが「会社の状況をよく分かっている私たちだからこそ、アプリを介してより深いコミュニケーションが取れるようになったと感じています」と語るように、サントリープラスで従業員との日常的な接点を持てるようになったおかげで、専門職としての活動の質向上にもつながっているようです。

第3章:サントリープラスで「会話の壁」を突破した実例

また、アンケートの結果から多くの産業保健師が従業員との日常的なつながりの重要性を実感し、より身近な接点づくりを強く求めている現状が見えてきました。
そのような中、全国に拠点が分散しているにも関わらず、サントリープラスを保健師と従業員の日常的な接点づくりに活用している企業があります。

自動車部品の開発・製造を行う株式会社ヨロズ(本社:神奈川県横浜市)は2023年、全拠点の自販機をサントリープラス対応の製品に統一。全従業員が同じ条件で、手軽に健康アクションを起こせる環境を整えました。また2024年からはウォーキングイベント“歩こうフェス”を実施。アプリを使えば全拠点の従業員が参加できるのが、同社にとっては大きなメリットでした。
“歩こうフェス”開催前は平均6,310歩だった1日の歩数が、最終週には平均1万674歩まで伸びるなど運動不足解消には一定の成果が出ました。しかし、それ以上に思わぬ副産物となったのが「会話の活性化」です。どこの拠点・どのような役職の人であっても、歩こうフェスを話題に会話が弾むようになったことだったと、同社の保健師・畠山知華さん、木村優紀さんは振り返ります。

「実は私も参加して、下位争いをしていたのですが(笑)、朝負けていると昼に必死で歩いたりして、純粋に楽しかったです。開催期間中に出張で岐阜に行った際、拠点の経営層の方に会うなり“まず歩こうか”と誘われて一緒に歩いたのも良い思い出です」(畠山さん)

写真:ウォーキングイベント中に、従業員が自主的に集まってコミュニケーションを取る様子

写真:ウォーキングイベント中に、従業員が自主的に集まってコミュニケーションを取る様子

イベント後のアンケートでは「ウォーキング自体が楽しくなった」「拠点間の誇り、結束が生まれた」などの感想が寄せられ、実際に「痩せた」と運動の効果を実感した人も増加。「食事や運動に気を配っている」と答えた人は2024年調査では52.2%だったものの、“歩こうフェス”後の2025年には61.2%と約10ポイントも向上していました。これには畠山さんも「健康が自分事に変わった瞬間を目の当たりにしているようでした」と手応えを語ります。
これらの取り組みの結果、保健師と従業員との間で「健康の会話」は確実に増加。畠山さんが各拠点を訪問した際には声をかけられることが増え、自分から「血圧の薬を飲み始めたよ」など話してくる人もいるなど変化を感じたと言います。社内では若手社員と役職者など立場・年代の違いを超え、健康について会話する機会が確実に増えていると畠山さんは話します。

また同社では健康診断の前に、健康リスクのある対象者に特茶などの健康飲料クーポンをアプリに送付し、健康行動を促す「健康応援プログラム」(※現在は「健診前集中プログラム」)を実施しています。

「最初にお話を聞いたとき、すごくいい企画だと思ってすぐに上司に確認して実施することにしました」(畠山さん)

対象者は健診結果で血圧や中性脂肪、腹囲に課題がある約300名とし、「参加権があります」と通知を送付。当初は「何人集まるかな……」と不安だったそうですが、すぐに定員の50名が埋まり、3カ月のプログラムが始まりました。
ところが開始早々、プログラム対象飲料の「特茶」が自販機から売り切れてしまうという予想外の事態が発生。同社総務部主管(兼務 (株)ヨロズサービス 代表取締役社長)工藤玲子さんが「特茶が足りない!と連絡が来て、慌てて各拠点に特茶を補充しました」と驚くほどの盛り上がりでした。その結果、自然と保健師には「ちょっと痩せたよ」や「体重が減ったよ」など声がかかるようになり、ポジティブな関係性が育まれていったと言います。

2026年度の認定では全国6拠点のすべてが「ブライト500(中小規模法人部門)」に選ばれた同社。全社を通じて健康意識の改革が成功したのは、サントリープラスのアプリや自販機が保健師と従業員をつなぐ「共通の話題」となり、健康について気軽に話せる関係づくりを後押ししてきた、という背景もあったのです。

サントリープラスについてはこちら
https://www.suntory.co.jp/softdrink/jihanki/solution/suntoryplus/

「ゆるく楽しい」つながりが、健康経営推進の心強いインフラに

面談や保健指導の場だけで、従業員の健康意識を変えていくのは簡単ではありません。今回、紹介した2社の事例から見えてきたのは、産業保健師と従業員がサントリープラスによって「ゆるく楽しく」つながり、普段の職場で「最近歩いてる?」「アプリやってる?」といった会話のきっかけになっている様子でした。

サントリープラスは、単なる健康習慣化アプリにとどまらず、健康経営施策の推進に欠かせない産業保健職の活動を日常の中で支える、身近なインフラになりつつあることの表れでしょう。

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※1 サントリープラスアプリ利用データより抜粋(当社にて実施) 調査人数:13,786人 調査対象期間:2023年9月1日~2024年2月29日継続の定義:利用開始から1か月後の1か月間にアプリを1回以上起動

※2 サントリープラス利用者アンケート調査(当社にて実施) 調査対象者:サントリープラス導入A企業従業員様 調査対象人数:222人 調査対象期間:2020年8月~2020年11月