全く背景のない白い器体の上に、二方から伸びる柘榴の枝がゆったりと余白をもって配されている。その描写は繊細で、枝は染付を用いて抑揚のある描線で表し、葉は染付と緑、黄色の上絵を用いて彩りを与えている。柘榴の実は点描を交えながら色彩の微妙な変化も表現されており、非常に写実的である。豊穣のシンボルである柘榴は鍋島で好まれたモチーフの一つで、さまざまなデザインで描かれたほか、本作とほぼ同じ図様で染付の作品もある。(『サントリー美術館プレミアム・セレクション 新たなる美を求めて』サントリー美術館、2018年)