胸と背にあたる部分に一つの模様を連続して刺した東こぎんの着物。麻布の袖、裾と、絣の衿掛けを伴う。木綿糸によるこぎん刺しは布の補強や保温のためであるが、装飾も兼ねる。麻布の縦糸を主に奇数目ですくい、次の段では一目ずつずらして刺していく。縦長の菱形を中心に、約四十種あるという基本模様から組み合わせて模様を構成する。模様は主に身近にある自然を題材としており、この作品も「ハナコ」と呼ばれる花を意匠化した模様を基本としている。(『サントリー美術館プレミアム・セレクション 新たなる美を求めて』サントリー美術館、2018年)